3人のインディーゲーム開発者が登壇した「UEインディーゲームクリエイター座談会 in UEFEST」 レポート

■「インディー」特有の壁にぶち当たった経験


ここからはUnreal Engineにとどまらず、インディー特有の壁にあたったときの経験とその解決方法について。まず善乃さんは、「体系だった知識を得る機会がない」ところを挙げました。独学でインディーゲームの開発を行っているため、ずっと何か見落としているのではないか……と思っていて不安に思っているそうです。nocrasさんも、Steam版でリリースする時に開発者の有志がまとめてくれた情報を参考にしたのですが、家庭用ゲーム機に移植する時はNDA(機密情報保持)の関係もあってウェブ上にまったく情報がなかったことが大変だったそうです。幸い、パブリッシャー側に開発技術のサポートスタッフがいるところと契約したため何とかできたそうなのですが、Steamに比べて桁違いに大変だったそうです。

Nakamichiさんは自分の反省点として「ドキュメントを読まず開発している悪い癖がある」と言っていましたが、少人数開発が難しいタイプのゲームは最初から実行に移せないことが悔しいとおっしゃっていました。対戦ゲームの場合はテストプレイヤーを集めるのも苦労し、初期からテストプレイにずっと付き合ってくれる人を探すのはもっと大変で難しかったそうです。

■UEを使ってゲームを作っていてキツかったこと

再びUnreal Engineの話に戻ります。このテーマについて善乃さんは、UEは頻繁にアップデートしている反面、開発中のゲームが動かなくなる時があって悲しいと思うこともあったそうです。アップデートをして改善してくれることはうれしいので、トレードオフの関係だと考えているそうです。

ここは司会の岡田氏のコメントとして、エンジンのアップデートする前はバージョン管理ツールを導入したり、X.1やX.2などの範囲で移っておくのが良いとお話ししました。4.26.0よりも4.26.2などで移ってもらうことで、リスク少なくバグが減ったバージョンに移行できるとのことでした。

家庭用ゲーム機に転化した時ならではのお話もありました。nocrasさんはコンソール移植をしているとき、サードパーティーのSDKバージョンが特定のUEのバージョンにしか対応していない状況や、使っているアセットなどのバージョンがそれと一致していないことなどが発生し、「どっちを取ればいいんだ…」と悩むことがあったそうです。ありがちなこととして、開発を古いエンジンのバージョンで進めていて、いざ家庭用機に移植をしようとしたら合わなかった、というケースがあるそうです。

また、このトークショーのタイミングで、Unreal Engine 5は正式版がちょうど公開されていました。トークショーに参加した中でUE5を使っているのは善乃さん。UE5では、まず描画がきれいになったこと、難しいことをせずに簡単に実現できることが嬉しい点としてあげました。LODをあまり頑張らなくてもよくなったことや、エミッシブの活用で画面がきれいになる点が魅力とのことです。これらは新機能であるNaniteやLumenの恩恵だと話していました。Naniteはポリゴン数の多い大規模なオープンワールド向けとして注目されていましたが、小規模開発にも恩恵があるようです。

■あの美しい画を実現する上で工夫したことは?

ここからは開発者個別の質問です。nocrasさんの作品においては、「何処を切り抜いても絵になること」を意識したそうです。本作はゲーム内にもフォトモードがあり好きなアングルで写真を撮ることができるので、レイアウトに関してはかなり見栄えが良くなるように意識して配置をしたそうです。それ以外にも、実際プレイヤーが歩いた時に引っかかりがなく、気持ちよく歩くことができることを意識したそうです。

アセットを買って配置しても、それが浮いてしまうので自分で作ることにしたという苦労もあったそうで、『ジラフとアンニカ』の制作パイプラインや作り方などをかなり参考にしたとのことでした。

HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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