サウンドミドルウェア『FMOD』をBOSEが買収

Boseは2026年10月1日、ゲーム向けサウンドミドルウェア「FMOD」を開発するオーストラリアのFirelight Technologiesを買収したと発表しました。買収後もFMODは開発サポートが継続され、既存の開発者の支援も維持されるとしています。取引の金額やその他の条件は非公開です。
インディーにも使われてきたFMOD
FMODはゲーム開発におけるサウンド機能を強化するミドルウェアで、CRI・ミドルウェアの「ADX」、ソニーのグループ会社であるAudiokineticの「Wwise」と同じカテゴリの製品です。サウンド演出制作用のツール「FMOD Studio」と、実行時に音を再生するライブラリ「FMOD Engine」で構成され、UnityやUnreal Engine、独自エンジンへの組み込みに対応しています。おもに海外においてサウンド演出を重視したインディーゲームで使用され、起動画面でFMODのロゴを見たことがある方も多いと思います。日本では利用数は多くないものの『有翼のフロイライン Wing of Darkness』や『ジラフとアンニカ』、『しまのアヒルちゃん』などで利用されています。
実はゲームエンジンUnityのサウンド機能の源流もFMODで作られており、古いバージョンである 「FMOD Ex (FMOD 4)」のローレベルAPIが今もバックエンドとして使われています。ただし、FMOD Studioの機能を使う場合は別途新しいFMOD Engineを導入する必要があります。
Boseは、買収によってゲーム分野での事業を広げるほか、VR/ARや車載システムなど、インタラクティブな音響制御を必要とする領域への応用も中長期で検討するとしています。Firelight Technologies創業者兼CEOのBrett Paterson氏は、Bose傘下でFMODのロードマップを進めつつ、コミュニティへの支援を続けると述べています。
今後のサポート体制やライセンスの変化に注目
3大サウンドミドルウェアのうち「Wwise」は、2019年にSony Interactive Entertainmentに買収されました。SIEが開発したPS5の音響システムTempest 3Dがいち早くWwiseで利用できるようになるなど、ハードウェアの戦略に沿った開発方針が見られ、今回のFMODの買収においても、事業の継続性やプラットフォーム中立性の維持が懸念として挙げられているようです。逆に「ADX」を提供する株式会社CRI・ミドルウェアは、セガグループから2001年に独立した経緯があり、2014年にはマザーズ市場に上場しています。
この懸念について、ゲームオーディオのコミュニティでは具体的な声も出ています。サウンドデザイナーや作曲家が参加するAirwigglesのスレッドでは、Boseが「オープンで広くサポートを継続する」と説明している点に触れつつ、FMODの開発に課題が生じる可能性を指摘する投稿がある一方、Boseは非公開企業で研究開発やオープンな協業を重視してきたため短期的な方針転換にはなりにくいという見方や、開発チームが維持される限り大きな問題にはならないという見方も寄せられています。海外のゲームフォーラムReseteraのスレッドでは、WwiseはFMODよりライセンス費用が高く、多数のプラットフォームで展開する場合に差が大きいという指摘もありました。日本語圏では、音楽制作と技術記事を手がける神山大輝氏が「FMODは国内では存在感が薄いが、Steamタイトルへの採用数では世界トップシェア」「開発・サポートの継続は公式に表明されているが、果たしてどうなるか」と投稿しています。
また、インディーによるFMODの利用モチベーションの1つであった「ライセンス費用の分かりやすさ」についても、今後変化が現れる可能性があります。FMODの現行のゲーム向けライセンスは、開発予算60万ドル未満が無償または2,000ドル、60万ドルから180万ドルが6,000ドル、180万ドル超が18,000ドルという「固定費用」になり、ライセンスフィー形式ではありません。また、年商20万ドル未満かつ開発予算60万ドル未満の場合は無償のIndieライセンスが適用されます。買収に伴うライセンス料の引き上げやライセンス条件や価格の変更は発表時点では示されていませんが、ゲーム以外の分野での展開も告知されている中、今後変化が起きる可能性は高いと思われます。





