Google PlayのPC版自動配信化に向けたディベロッパーの対応まとめ

まとめ
・Googleは年内にGoogle Playの配信ルールを変更し、PC版Google Play向けの配信がデフォルトになる(オフ可能)
・Google はapkビルドをPCで動かすためのエミュレーション層を用意している。x86ビルドの別途アップロードも可能
・PC版配信のためにx86ビルドを用意する必要はないが、ネイティブライブラリを使用しているゲームは動作確認を推奨
Google Playでゲームを配信すると、PC版Google Playでも配信が自動的に実施される
先日の記事でもお知らせしたように、現在はオプトイン(オプションとして選べる)PCへの配信ですが、開発者が特に操作しない限り自動でPCにも配信されることになります。
先日の記事公開時点では、x86ビルドを用意していないゲームをPCでどのように動作させるかの方法が不明瞭でしたが、その後の調査により「エミュレーター層が存在する」ことがわかりました。Android向けapkをPCでエミュレーションする技術は、現在「Intel Bridge Technology」を使用して実現されています。
https://www.intel.com/content/www/us/en/developer/topic-technology/bridge-technology.html
そのためベータ版段階におけるGoogle Play PC版では、Intel CPUでのみエミュレーション版が動作していた模様です。GoogleはGDC2025において、今後はこのエミュレーション環境がAMD CPUでも動作することを発表しています。AMD CPUでもIntel Bridge Technologyを動かしているのか、新たに同じような技術をAMD向けに開発したのかは不明です。
Google は Intel と提携し、Intel Bridge Technology を使用して Intel ベースの PC で ARM ベースのゲームを実現しています。つまり、モバイルゲームがプレイアビリティの要件を満たしたら、PC 版 Google Play Games で Intel ベースの PC 向けに配布できるようになります。
https://developer.android.com/games/playgames/start?hl=ja#playability-architecture-arm
まとめると、Google Play向けにゲームをリリースする際のPC版対応には二通りあります。Androidアプリ(apkファイル)をそのままPC上でエミュレーションさせる方法と、PC用ビルドを別途提出する方法です。一見、前者であれば手間が少なそうに思えますが、いくつかの制限があります。後述するUnity環境も含めて、ゲームに含まれるすべてのライブラリに x86-64 ABI 互換バージョンが必要とされている点に懸念があります。ゲームに組み込んでいるランタイムライブラリを含むアセットや、ミドルウェア、広告SDK、ネットワークサービス系に影響が考えられます。使用しているそれらの機能がx86でも動作するかどうかの確認が必要です。
PC 版 Google Play Games(ベータ)の利用条件を確認する
https://support.google.com/googleplay/answer/11358071
PC版Google Playの最低動作条件はIntel内臓グラフィックのUHD 630です。これは2017年のCoffee Lake-Sから採用されているため、その世代の環境で30FPSが出ることを求められます。
Google Play Games 向けゲームの Windows との互換性
https://support.google.com/googleplay/answer/15809091?hl=ja
PC 版 Google Play Games の互換性と最適化
PC版Google Playの動作に求められる内容はこのページにまとまっています。
https://developer.android.com/games/playgames/pc-compatibility?hl=ja
2025年3月21日現在では「x86-64 ABI アーキテクチャを含める」ことが必須となっていますが、これは今回の発表に伴って変更されるものと思われます。
また、PC版でサポートされていない Google API を無効にする必要があります。GoogleのログインやGoogle Play Gamesサービス、Google PayはPCでも動作しますが、Firebaseの認証やRemote Configは限定的サポート、Firebase Realtime DatabaseやロケーションAPIはサポートの対象外です。
加えて、マウスとキーボードでの操作の対応が必要です。ただし、「Input SDK」とよばれる、タッチ操作をマウスとキーボードにバインディングする層が用意されているため、PCへ自動的に配信されるケースではユーザーはこちらを使って遊ぶものと思われます。
https://developer.android.com/games/playgames/input?hl=ja#input-support

また任意ではありますが、Android端末とPCでのクロスセーブの機能の実装が推奨されています。https://developer.android.com/games/playgames/identity?hl=ja#cloud-save
ビルドができたら、PC 版 Google Play Games デベロッパー エミュレータを使って動作確認ができます。https://developer.android.com/games/playgames/pg-emulator?hl=ja
Unityを使用している場合の対象バージョンとプラグイン
Unity 2019 と 2020 の一部のバージョンでは、Android での x86-64 アーキテクチャをサポートしていません。Unity 2019.4.31f1、2020.3.19f1、またはそれ以降のバージョンを使用していることを確認してください。
また、専用のパッケージ「Google Play Games Unity Package」(Google Play Games for PC plugin)が用意されています。

その他のGoogle Play Gamesリリース手順リソース
Google Codelabsは、「Unity と PC 版 Google Play Games」のスタートガイドを公開しています。
https://codelabs.developers.google.com/android-google-play-games-unity-quickstart?hl=ja#0
株式会社ドリコムは、Google Play Gamesへのリリース手順について詳細を同社ブログにて公開しています。
・Google Play Gamesへのリリース手順
https://tech.drecom.co.jp/google-play-games
今後のディベロッパーにおけるPC版対応について
プラットフォームの配信先が増えることは良い面もありますが、Android向けに開発提供したゲームが、ディベロッパーの知らないうちにPCにも配信されるということは、予期せぬエラーや不具合、非対応SDKによる動作不良などが想定でき、ゲームプレイヤーからの意図しないフィードバックにつながる可能性があります。また、現在PC版へ「対応しない」ことも任意に選択できますが、遠い将来必須化することも考えられます。また、PCに対応していないことがGoogle Play上でのプロモーション等に影響することも想像がつきます。
PC版の自動配信の切り替えの正確な日付はまだ発表されていませんが、Google Playを主戦場としている開発者の皆様は、いちどエミュレーション環境でテストしてみることをお勧めします。IndieGamesJp.devでは本件について技術的情報がわかり次第、追って報告していきます。