[インタビュー]SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026は個人開発者も大歓迎。「44年前のコンテストにあった活気を再び」というシンプルな思いから始まり、10億円規模の実施に。
株式会社スクウェア・エニックスは、ゲーム開発者向けのコンテスト「SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026」を開催予定です。今回IndieGamesJp.devでは、コンテストの運営事務局の齊藤陽介氏・時田貴司氏両名に詳細なお話を聞く機会をいただきました。

本コンテストは賞金は最優秀賞1作品に3億円、傑作賞4作品に各1億円、優秀賞10作品に各3,000万円で、総額は10億円という大規模なものです。発表当初は金額の大きさと、公式サイトに記載された条件面などの情報から「個人や小規模のインディーゲーム開発者は応募が難しいのではないか」という不安がSNSなどで語られることもありました。しかし主催のおふたりにお話を聞く中で、本コンテストが個人開発者を歓迎しており規模感のあるスタジオばかりを求めているものではないこと、金額はシンプルにインパクトを念頭に決めていること、そして次世代のスタークリエイターを本気で発掘することを目指していることなどがわかりました。

右から齊藤陽介氏、時田貴司氏。
インタビューでは選考に関することや求めるゲーム開発者についてなど、幅広くお話を伺っています。応募を検討されている方、現在インディーゲームを開発していてパートナーを探されている方は必読の内容です。
大小様々な作品への関わりとコンテスト審査委員としての実績
——はじめに、お二人のこれまでの仕事と、今回のコンテストでの役割を教えてください。
齊藤陽介氏: 齊藤陽介です。『ドラゴンクエストX』のエグゼクティブプロデューサーや、『NieR』シリーズのプロデューサーを担当しました。大規模タイトルだけをやってきたわけではなく、以前には『アストロノーカ』のような変化球の作品も作ってきましたし、直近ではヨコオタロウさんと『Voice of Cards』という中規模タイトルにも関わりました。
プロデューサーとして活動する中で、小規模・中規模の作品も続けていかなければ新しいものは生まれにくいという気持ちは以前からあり、今回のコンテスト運営事務局を統括する立場となりました。
時田貴司氏: 私はファミコン時代にグラフィックデザイナー、いわゆるドッターとしてスクウェアに入り、ゲームデザイナー、ディレクター、プロデューサーへと仕事の幅を広げてきました。小さいものから大きいものまで一通り関わってきましたが、近年は中規模程度のタイトルにも多く携わっています。
ニンテンドーDS向け作品や、携帯電話向けのシナリオ配信型『ファイナルファンタジー』シリーズ、スマートフォン黎明期のアプリ、ソーシャルゲーム初期の仕事を経験し、現在はクリエイティブスタジオ5で『OCTOPATH TRAVELER』で確立したHD-2D作品を中心に担当しています。『ライブ・ア・ライブ』のリメイクや『ドラゴンクエストI&II』のリメイクにも関わってきました。
インディーや個人開発者との関わりとしては、教育機関との産学連携の取り組みや、CESAの日本ゲーム大賞の審査員、CEDECペラコンの審査委員長などを務めてきました。「ゲームメーカーズ スクランブル」といったインディーが多く集まる開発者イベントにも参加しています。

『アストロノーカ』画像はスクウェア・エニックス公式サイトより。
——まず、本コンテストの概要と、立ち上げた意図を教えてください。
齊藤氏:新しい作品と才能を発掘するために様々な取り組みをする中で、 1982年に旧エニックスとして行われた「ゲーム・ホビープログラムコンテスト」という形で行った取り組みを、現在の時代に合わせてみてもいいんじゃないか、ということになりました。当時と同じく、若いクリエイターや新たな才能を見つけることは目的の一つです。ただ、それだけではなく、ゲームを製品として世の中に出すことを主眼に置いたコンテストにしようと考え、現在のかたちとなりました。その姿勢を理解してもらうため、賞金総額を10億円としました。最優秀賞は3億円、次点にあたる傑作賞は4作品に各1億円、優秀賞は10作品に各3,000万円です。
本コンテストの重要な点としては「該当作なし」という状態にはせず、定めた賞を必ず応募者のどなたかに授与する方針です。表彰されるためだけではなく、受賞作品を商品として世に出すためのコンテストであるという覚悟の現れだと受け取ってもらいたいです。もちろん、本コンテストの審査は公募を行った上で公平・公正に実施するもので、何か先立つゲームプロジェクトがあって進行しているものではありません。
——賞金総額や最優秀賞3億円という設定は、どのように決めたのでしょうか。求めるタイトルの開発費から逆算したのでしょうか?
齊藤氏: 開発期間や人数から「この規模でなければならない」と逆算したわけではありません。まず「夢のある金額とはいくらだろう」というところがありました。3,000万円でも、一人で作っている方にとっては大きな金額でしょう。中小デベロッパーが、空いている開発ラインを使いながら時間をかけて作ってきた自社作品を仕上げる局面に、このコンテストがあれば、3億円という賞金には意味があると思います。
インディーゲーム開発者には、「自分のゲームは面白いのに、誰にも知られていない。知られていないから、プレイヤーに届かない」という悩みがある方は多いと思います。せっかく作ったものが届かないのはもったいない。私たちにとっても応募がなければコンテストになりませんから、まず開発者に知ってもらい、届くことが必要です。金額の規模は、その入口を作るためにも重視しました。
——賞金規模から、10人単位のチームや、世界観・ボリュームを作り込んだ作品が主な対象なのではないかと受け取った開発者もいると思います。個人でも応募できますか。
齊藤氏: もちろんです!個人でも全く問題ありません。たとえば、コタケクリエイトさんの『8番出口』や、レモリオン・はがねいろさんの『めっちゃカメレオン』のような、明快なアイデアを核にした個人・小規模作品を歓迎しています。決してチームや中規模作品ばかりを集めたいわけではありません。BitSummitに行ったとき、一人でここまで作れる時代になったのかと実感しました。個人制作で到達できる範囲が広がっています。個人で活動する方や、サークル単位の方も歓迎します。
同時に、将来は自分たちのIPを作り、パブリッシングまで含めて進めたいと考えている中小デベロッパーにも応募してほしいですね。受託開発のラインが埋まっていて、3年ほど自社作品を合間を縫って作ってきたチームが、「ここで一気に仕上げよう」と考える場になってもよい。個人と中小デベロッパーの両方が、作品を持ち寄って切磋琢磨する状況を見られれば嬉しいですね。
私がBitSummitで本コンテストの話をしたとき、『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』の事例を挙げました。社内にしては少人数・短期間で制作した作品として名前を挙げました。本作は定価1,980円で、比較的少ない人数で作られたゲームです。本コンテストが『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』のような大規模作品だけを求めているわけではないという意味で言ったのですが、個人や少人数チームのインディーゲーム開発者さんにとっては自分たちよりも大きな規模に思えるため、誤解が起きてしまったのだと思います。

『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』 画像はスクウェア・エニックス公式サイトより。
繰り返しになりますが、個人や数人チームで作ったゲームも大歓迎です。小学生でも応募できます(筆者注記:未成年も応募できるが、暫定規約では入賞した場合、親権者など法定代理人の同意書が必要です)。
時田氏: 今の時代には、映えるアイデアや、新しい技術を使ったことで斬新に感じられる発想もあります。今回の応募作についても、そうした方向を含めて見たいですね。ゲーム制作の経験や、ゲーム業界出身かどうかは問いません。たとえば、ゲームとは全く別の専門職の経験をゲームに転用するような作品もあり得るでしょう。弁護士が法廷を題材にしたゲームを作る、国文学を学んでいる人が漢字のアプリを作る、といったように、別の専門性がエンターテインメントの発想と結び付くことがあったら楽しいですよね。
——ゲーミフィケーション寄りの作品も対象ですか。
時田氏: もちろんです。ただし、ゲームとして面白いことが前提です。学べるだけではなく、エンターテインメントとしてしっかり面白くなくてはいけません。たとえば任天堂の『脳を鍛える大人のDSトレーニング』のように、遊びとして成立しているものは一つの参考になります。
応募要件の「新規性」「独創性」とは?提出物の準備はどこまで必要か
——公式サイトでは審査基準として「新規性」「独創性」「娯楽性」「完成度」を挙げています。特に新規性・独創性については、応募するゲーム開発者はどのように捉えればよいでしょうか。
齊藤氏: ここまで多くのゲームが作られてきた中で、「完全に新しいもの」はそう簡単にはありません。10年前にあったものを現在の時代に合わせてアレンジすることもありますよね。私たちは、それも新規性としてよいと思っています。
独創性についても、世の中に一度も存在しなかったものだけを指すわけではありません。すでに世にあるアイデアであっても、多くの人に知られていない切り口や、プレイヤーが「これは新しい」「オリジナルだ」と感じられる形にできることはある。単なる焼き直しや既存のゲームの組み合わせ、人気ゲームのコピーなどは避けてほしいですが、アレンジの土台にしつつ、しっかりと独自のアイディアを入れ込むということはあってよいと考えています。
例としては、4人チームで開発された『グノーシア』も、人狼ゲームという既存の遊びを土台にしながら、世界観、音楽、プレイ体験を組み合わせて独自のものにしています。既存のゲームの要素をどのように組み直すかも、独創性の一部です。

『グノーシア』画像はPLAYISM公式サイトより
時田氏: 我々ゲーム開発者にとっても、インディーゲーム開発者さんたちを含めた新しい人たちが新しい表現を切り開くと思っています。会社として大きなIPを継続・展開する仕事が増える中でも、新しい遊びを作ることは続けなければなりません。今回のコンテストでも、そうした作品と作り手を見せてもらいたいと思っています。
——「完成度」という指針はどのように捉えるとよいでしょうか。完成に近いほうが優先されるのでしょうか。
齊藤氏: いいえ、完成していなければならないということではありません。応募者が遊んでもらいたい、見てもらいたいものを、きちんと伝えられる完成度で提出してほしいということです。数値で言うのは難しいですが、10%程度では、作りたいゲームの面白さは伝わりにくいと思います。自分が表現したいこと、遊んでもらいたいことが理解できる状態になっていなければ、審査側も判断できません。感覚としては、50%程度までできていればよいのではないかと思いますが、重要なのは割合そのものではありません。応募者自身が「ここまであれば、自分が作りたかったものが届く」と判断できることです。作品の完成度が現時点で仮に不十分であっても、内容やアイデア次第で最優秀賞を受賞する可能性は大いにあります。
RPGのような大きな作品なら、ゲーム全体の魅力を伝えるバーティカルスライスに近い形が考えられます。一方、パズルゲームなら、ゲームの核だけでなく、レベルデザインや遊びの起伏まで含めて、より完成に近い状態で示した方が面白さを判断しやすい場合もあるでしょう。
——一次審査はゲームプレイ動画です。動画では何を見せるべきでしょうか。
齊藤氏:どのような見せ方をするかも、クリエイターの判断とクリエイティビティだと思います。最初に一番見せたいところを置く、といった定石はありますが、動画の構成を細かく規定するつもりはありません。見る側の気持ちになって作ってほしいですね。
申込要項では「最大20分」としていますが、現在の視聴環境では20分の動画を見させ続けることさえ簡単なことではありません。遊んで面白いことは当然として、見ていて面白いことも重要です。昔も、友人がテレビ画面の前で『ドラゴンクエスト』を遊んでいるのを隣で見ることに独特の面白さがありました。今はYouTubeやTwitchなどで、ゲーム配信を多くの人が同時に見られる環境があります。一次審査では特に、「見ていて面白いか」を意識してほしいと思います。
——企画書には、ゲームの内容だけでなく、販売・収益モデルや開発チーム体制などの「ビジネス・開発計画」も例示されています。この文書はどの程度重要なのでしょうか。
齊藤氏: 要項に示してある必須情報は記載してほしいですが、ビジネス・開発計画の項目は必須ではありません。ある程度イベントに出ているインディーゲーム開発者やゲーム会社の場合は、すでにピッチ資料を用意している場合も多いでしょう。ただ、その資料作成を考えることが負担になってゲーム開発が止まるようなことは避けたい。ですので、ビジネス計画はなくても応募して構いません。
(筆者注記:公式の企画書ガイドでは、10ページ以内という枠の中で、氏名・チーム名・法人名、タイトル、ジャンル、ターゲット、対応プラットフォーム、一言コンセプト、現在の完成度、SNSアカウント、プレイスタイルなどの基本情報を必須としています。そのうえで、ゲームサイクル、世界観、セールスポイント、オリジナル要素、画面写真、操作方法、使用エンジンやミドルウェア、生成AIを利用している場合の使用箇所の情報、販売・収益モデル、開発チーム体制、想定価格、レーティングなどを参考項目として挙げています。)
——対応プラットフォームについて、公式サイトには「モバイルおよびPC」とあります。審査用の実行ファイルはどのように提出すればよいでしょうか。
齊藤氏: Windows 11用のビルドをご用意いただければと思います。モバイルゲームについても、お手数ですがWindows 11用ビルドをご用意ください。これは審査の上での都合もありますが、大きな理由の一つはコンテストがPC市場を意識していることです。
時田氏: 補足をするとPCゲーム市場では、必ずしも高性能な環境だけを前提にしない作品も届くようになっています。ハイエンドな機材を持っていない人もいる中で、可能な限り広い対応スペックであると嬉しいですね。
齊藤氏: 今回、RobloxのようなUGCプラットフォームも検討しましたが、そうした環境における権利関係の現状や審査環境などを考え、まずはWindows 11上で動くアプリケーションを基本にしようと考えました。プラットフォームを広げすぎると、個々の応募作の審査のために必要な準備が増えて対応できなくなってしまうので。
SNSで作品情報を発信している場合も応募は可能。ただし「未発売・未受賞」が条件
——本コンテストは完全未発表の作品しか応募できないのでしょうか。
齊藤氏: すでに公開されているタイトルでも申し込みができます。最近はXなどで開発過程を公開し、見ている人からの反応を受けたり、「こうしたらよいのではないか」という提案を取り入れたりする人もいます。それもプロモーションや開発の一部ですよね。そこを止める必要はありません。ただし、営利目的の販売・配信がなされていない未発売作品である必要はあります。
しかしながら今回は「まだ評価されていない新しい作品を見たい」という考えから、「他のコンテストで受賞していないこと」が条件になります。ただし、別の作品で受賞した人が、その経験を生かして完全新作や発展作品、続編的な作品を応募することは問題ないと考えています。
——生成AIを含むAI技術の利用についてのルールについてはいかがでしょうか。
齊藤氏: まず、生成AIを取り巻く社会状況は1か月でも大きく変わるため、現在のガイドラインは暫定版です。応募開始直前まで状況を見て、確定版を出す予定です。
SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026 AI利用ガイドライン
https://gc2026.jp.square-enix.com/guideline/#ai
その上で、個人でゲームを作っている方にとって、実装などに生成AI技術を使うことで、ゲームの面白さやデザインに割ける時間が増えることはあると思いますし、UnityやUnreal Engineにも導入されています。現在においてはそのように考え、生成AIも開発支援ツールの一つとして、上手に使ってもらうことはあり得るものと捉えています。
ただし、第三者の著作権を侵害していないかなどの注意が必要なので、ルールを明文化しました。現行のガイドラインは、使用したAIツール名、モデル名・バージョン、使用工程と用途、使用時期を応募時に申告してもらうことにしています。購入した素材集の中にも問題のある素材が混じる可能性もありますので、使用したものを把握し、権利を確認することが重要です。申込みの要項には、生成AIを用いて特定の個人の声や、特定の作家・作品由来の固有の個性やスタイルを認識できる表現をしていると判断する場合は、法的利益の侵害のおそれがあるとして審査対象外とする可能性もあります、と詳しい書き方をしました。
ゲーム中にリアルタイムでAIを動作させる場合についても想定していまして、審査員などの入力情報をAI機能の提供以外の目的で使わず、ログの蓄積や追加学習を行わないこと、審査側にAPI利用料などを負担させないことを条件としています。
投資ではなく「賞金」のため一括払いで使途の指定なし。一方、IPは共同著作物に
——本コンテストの賞金は、受賞後に開発マイルストーンごとに分割して支払う形などになるのでしょうか。
齊藤氏: いいえ、本コンテストはお金を一括で渡します。これは開発資金の提供ではなく「賞金」なので、どのように使ってもらうかなどの指定をしません。ただし税金の問題もあるので、個人の受賞者には翌年の所得税などについて説明し、賞金をすべて使ってしまうことの注意点などを知っていただく必要があります。法人なら事情が異なりますが、個人や未成年の受賞者には、親権者の同意を含め、受賞者があとから困らないように、必要な説明をきちんと行います。
時田氏: お金を出して、開発の内容まで細かく指示する関係にはしたくありません。賞金は賞金として渡し、クリエイターが自分の作りたいものを作る。そのためのスタイルとして今回の形を考えています。
——一方で、受賞後は作品のIPを共同著作物とする方針です。この点は、開発者が事前に理解しておく必要があると感じています。
齊藤氏: その点も、当社がどうやって開発者と付き合うと一番効果的かを考えた結果です。『ドラゴンクエスト』は、開発者と、当時のエニックスというパブリッシャーが、作る人と売る人として共有し、ともに商品を育ててきた例です。今回も、著作権を共有して商品として出す形を考えています。お互いが自分の領分をきちんと担うための形です。
(筆者注記:現行の暫定規約では、応募時点の著作権は応募者に帰属しているが、入賞後、主催者による賞金の支払いが完了すると、応募作は入賞者とスクウェア・エニックスの共同著作物に移行し、著作権の持分は双方2分の1となります。作品の改変、翻案、二次的著作物の作成、第三者への再許諾、販売目的の広告活動などについて、入賞者はスクウェア・エニックスに包括的に同意する形です。なお、具体的な収益分配と利用条件は、入賞後に締結する商用化契約で定めるとしています。)
齊藤氏: このコンテストは、スタジオの買収や囲い込みを目的としたものではありません。個人でやれるなら個人でやった方がよいこともあります。個性や独自性を持ってもらうため、スタジオの運営形態を強制しないことが、このコンテスト運営の考え方です。また、これは大事なことですが、残念ながら入賞しなかった応募作の著作権については、引き続き応募者に帰属するということです。応募したからといってそのIPが共同化されるものではなく、あくまで受賞者向けのお話です。入賞しなかったタイトルを他社のコンテストなどへ応募したりももちろんできます。
齊藤氏: これはまだ準備段階ですが、応募作の独自仕様や表現についての情報が守られるように、選考プロセスに関わる者以外が応募作を閲覧・アクセスしない情報管理体制を構築するつもりです。一方で、弊社がコンテストとは無関係に独自に創出した仕様、表現、アイデア、コンセプトが偶然類似する可能性についても規約に定めを作り、トラブルが起きないように設計しています。
受賞後のサポートは「製品化」のサポートが中心に
——スクウェア・エニックスがパブリッシャーとして関わる場合、どのような支援を考えていますか。
齊藤氏: 昨今ゲームが大量に発売されている世の中では、作品を作ったものの、誰にも知られないままのタイトルは多いと聞きます。スクウェア・エニックスというパブリッシャーと組むことで、開発者が作ったものを商品として世に出すことをバックアップできるのは、期待してもらいたい点です。単独で進めるよりも、届く可能性の幅は広がると思います。
提供できるパブリッシングの機能としては、QAやローカライズは当社側で負担することを考えています。ただし、開発に対して「お金を出して口を出す」ことはするつもりはなく、作品を仕上げるところまではクリエイター自身に担ってもらいたい。たとえば使用エンジンに必要な費用をパブリッシャーとして負担することや、技術面の相談に応じることはあり得ます。
スクウェア・エニックスならではの強みとして、『ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて』や『FINAL FANTASY VII』シリーズなど、Unreal Engineを使った開発の経験を持つ人材が社内に多いということです。各種ゲーム機や様々なスペックのPCに向けた最適化で困っていれば、エンジニアに相談できる体制は作れると思います。オーディオやサウンドについても、必要に応じて相談できる形を作っていきたいです。
時田氏: 我々は責任を持ってゲームをパブリッシングする立場にあるので、最後の仕上げの段階で「この3点を変えたら商品としてより良くなる」といったアドバイスはすると思います。ただし、それはアドバイスです。意見を採用するかどうかはクリエイター側が判断すればよいと思っています。提供するお金も「賞金」ですので、その額に影響することもありません。最後は、クリエイターが望む100%を出してもらえればと考えています。
——マーケティングやグローバル展開の体制はいかがでしょうか。
齊藤氏: 詳しい体制はまだ決まっていません。私自身がその立場を務めてもよいと思っていますし、Square Enix Collectiveというチームもあります。『PowerWash Simulator』(現在はFuturLabから発売中)の実績もありますから、グローバル展開の際には、いろんなチームが協力して関わる体制が考えられます。

『PowerWash Simulator』画像はスクウェア・エニックス公式サイトより
アーリーアクセスでプレイヤーの意見を受け、改善して商品化していく進め方についても、Collectiveには経験があります。今後スクウェア・エニックスからパブリッシングする際に、参考にすることはあるでしょう。ローカライズやQAはもちろん、社内外のコネクションを通じて必要な専門家を紹介することも考えられます。たとえば、作品に合うなら、仕上げの段階で特定のコンポーザーにメインテーマを依頼する、といった選択肢もあり得ます。ただし、それもクリエイターが望み、作品に合う場合の話です。
(筆者注記:Square Enix Collectiveは先日、スクウェア・エニックス・ホールディングスの投資部門「SQUARE ENIX VENTURES」の関連としてWebサイトの日本語化が行われ、本コンテストとは別の動きであることが明らかになりました)。
——最後に、応募を検討しているインディーゲーム開発者へメッセージをお願いします。
齊藤氏: これまでいただいた問い合わせを見ていると、「この状態で応募してよいのだろうか」という不安を持っている開発者さんも見られます。迷ったら応募してください。まだ時間はありますし、締切まで粘っても構いません。
ゲーム開発をしていると、私たちの規模でも、途中で「これは本当に面白いのだろうか」と迷うことがあります。ずっと同じ作品を見ていると、迷いは生まれます。一人で開発しているなら、なおさらそういう場面があるはずです。これまでご説明したように個人や小規模チームも歓迎ですし、残念ながらご縁がなかった場合でも、他のコンテストにまたトライすることができます。
一度入賞しなかったからといって、次の可能性がなくなるわけではありません。落選した作品でも、審査に関わるプロデューサーが個人的に話をしたいと思うことはあるかもしれません。機会を広げるためにも、自分らしい、尖ったものを応募してほしいですね。
時田氏: 産業が成熟する中でも、新しいものを作る担い手は必要です。作品と、それを作った人の組み合わせを見せてもらいたいと思っています。個人や小規模チーム、学生、別の分野から来た人を含め、作り手が「これが面白い」と考えるものを出してほしいです。
——ありがとうございました。
「SQUARE ENIX GAME CONTEST 2026」の応募受付は2026年12月15日から2027年3月15日まで、結果発表は2027年6月30日を予定しています。気になる方は公式サイトを確認していただき、応募を検討してみてはいかがでしょうか。





