VRタイトルの全世界配信におけるレーティング・ストア審査・自社マーケティングのコツ。『ラストラビリンス』振り返り[CEDEC2020]
海外同時配信までの道のり
続いて、本作の海外配信までの道のりについて解説がありました。まず、リリース半年前から３か月前までにやった事として、「ローカライズ」「プラットフォームへの登録書類準備と登録」「レーティング審査」。２か月前あたりからは、「マスターの準備とその提出」「ストア側のQA」を経てリリースとなる。
ローカライズについては、本作にはインゲームの翻訳は発生していないそうで、これはキャラクターの話す言葉を「謎の言語」としてしまうことでアウトゲームのテキストとゲームの説明文のみで済ませたそうです。ローカライズに関する重要なこととして紹介されたのが、「配信ストア上のゲーム説明文」が各言語にローカライズしていないと配信できないプラットフォームがある、ということです。これが配信直前になって発覚し、苦労したのだそうです。
続いてストア登録については、主な書類は３つ。法人が必要なストアについては「登記簿謄本」。これは法務局から取り寄せる必要があるので、時間がかかります。また、「米国納税者番号（EIN）」の取得もあります。書類は取得に１～２週間かかるものもあり、EINは申請してからこのくらいかったそうです。また、PSVRとOculus Questへの配信は企画書が必要になるため、これも日本語・英語を用意しておいたそうです。
https://nicecommons.com/taxfree-ein
あとは、ディベロッパーサイトに必要事項を登録していきます。PSVR向けのPS Storeについては、SIEJapan, SEIJAsia, SIEA, SIEEそれぞれに登録が必要で注意が必要とのこと。日本からははSIE Japanに登録して、担当者に直接問い合わせ、そこからさらに各ストアの担当を紹介してもらう必要があるそうです。
逆に、Oculus、Steam、MS Storeは書類のみで完結するそうです。ただし、Steamは代表者の個人情報の生年月日や住所が必要になることと、担当者とのコミュニケーションは英語となることが注意点として挙げられました。
複雑なレーティングへの対応
次に必要な準備は「レーティングの取得」です。日本ではCERO、欧米やアジアの一部では無料のIARC、韓国ではGARC（ゲーム物管理委員会）が必要です。韓国については、直前に判明したため同時配信を断念せざるを得なかったとのこと。
「日本国内」で「PS VR向け」に配信するためには、CEROの取得が必要です。Oculus、Microsoft Storeでは国内配信においてもCEROは必要なく、IARCのみで対応できます。Steamに関してはレーティングの取得は特に必要なし、とのことです。
CEROは動画審査であり、つい最近まではDVDを焼いて郵送する必要がありましたが、ついに今夏からアップローダーでの対応となったそうです。CEROの審査は有償であり、費用は非公開のため言及されませんでしたが、「金額が大きく、ハードルが高い」というコメントにとどまりました。また、希望のレーティングになるとは限らず、本作は「C」希望で提出したが「D」結果で帰ってきたとのこと。また、審査期間はが約７営業日かかるとのことです。
筆者注：現在は新型コロナウイルスの影響下にあるため、もう少し審査に時間がかかる可能性もあります。またCERO審査費用は高額とはいえ、個人クリエイターの場合はインディーゲームパブリッシャーとの契約によって初期にかかる金額を抑える道があります。
変わって海外のレーティングは、一見PEGI・ESRBなどたくさんありますが、これらのレーティング処理を一挙に行うことができる「IARC」という国際レーティング組織があります。これはデジタル配信のゲーム作品に限り、自己審査制で即時、無料でレーティング可能な仕組みです。ただし、ストア側がIARCに対応している必要があります。
https://www.globalratings.com/
IARCで取得できるものは各レーティング機構「相当」の表示であるため、そのレーティングそのものが取得できたわけではなく、IARCを認めているストアに限って利用できるものです。Steamのレーティングは任意ですが、表示もできます。しかしながらIARCには加盟していないため、SteamにIARCの結果を使うことはできません。また、パッケージ版を出す場合は従来通り各機関にレーティングを申請しなくてはならない、ということが注意点です。
