VRタイトルの全世界配信におけるレーティング・ストア審査・自社マーケティングのコツ。『ラストラビリンス』振り返り[CEDEC2020]

2020年9月2日から4日にかけて、ゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2020」が開催されています。今年は新型コロナウイルスの影響によりオンライン開催に変更となっています。その講演にてVRタイトル「ラストラビリンス」のストア審査とマーケティングに関する講演を取材しました。

ゲームデベロッパーが自社VRゲームでマルチプラットフォーム&世界同時パブリッシングにチャレンジしてみた話
https://cedec.cesa.or.jp/2020/session/detail/s5e82a64f38cd4

名だたるベテランクリエイターが制作している作品ですが、セッションでは「初めて自社でパブリッシングをするには」という観点から様々なノウハウが共有されており、小規模ゲームクリエイターにも有効な情報が非常に多かったため、記事化を行いました。

※本記事は、CEDEC運営委員会の「CEDEC取材規定」に従い、メディア事前登録・執筆・公開を行っています。

VRタイトル『ラストラビリンス』について

講演は、あまた株式会社のプロモーション企画部所属の鶴田あかり氏、制作管理部の三鴨ユキ氏、ビジネス開発部のディミトリ ジャプ氏の3名にて行われました。

『ラストラビリンス』は、仮想キャラクターとのコミュニケーションを体感できる「VR脱出アドベンチャーゲーム」です。プレイヤーは謎の少女カティアと共に行動するのですが、この「カティア」の悲惨な死に姿がSNS上でも大変好評なタイトルでした。「プレイヤーのミスでキャラクターが悲惨な目にあってしまう」というフェチズムが特徴のひとつです。

感情をゆさぶられる体験(ギロチン)

本作を開発した「あまた株式会社」は、主にUnityを使ったゲーム開発の受託を行っている企業です。今作で始めてパブリッシングにチャレンジした理由には収益面と共に、「家庭用ゲーム機向けの受託案件を伸ばしたいので、会社としての実績を積む」「人材育成」「採用ブランディング」などの理由があったそうです。また、VRにチャレンジした理由としては、同社の代表である髙橋宏典氏がVRが好きということで鶴の一声で決まったとのこと。同作はPSVR、SteamVR、Oculus Quest、Microsoft Store (Windows MR向け)で販売されています。

国内外での自社プロモーション

本作は2016年に東京ゲームショウに初出展。その後Kickstarterでのクラウドファンディングを経て、2回の発売日延期を乗り越え、2019年11月に世界同時配信されました。

もともと海外のプロモーションは別の会社に外注したいと考えていたそうですが、紆余曲折があり、海外は完全に自社で行ったのだそうです(国内は株式会社バップによる出資のもと制作委員会を立ち上げ)。

本作のプロモーションのプランは「熱烈なファンを作り出す」方針と決め、「地道にプレスリリースをメディアに送る」「ライターさんにゲームを遊んでもらい、ライターさん自身にファンになってもらう」「取材依頼もこまめに行う」という作戦で進めていったそうです。

また、各イベントでのアワードの獲得を目指すことも積極的に行ったとのこと。出展すると自動的にアワードへの提出扱いとなるため、ノミネートしたことを後から知らされることもあったそうです。

筆者注:こうしたアワードの獲得は認知度を上げる目的のほか、公式サイトやチラシにアワードの文言やロゴを配置して「〇〇受賞作」とすることで、ゲームのクオリティーをプレイヤーに大きく訴求できる効果もあります。『ラストラビリンス』でも効果的に活用されています。

公式サイト https://lastlabyrinth.jp/ より

そしてプレイヤーへのアピールとして、大小のイベントにとにかく数を出して「体験者を増やす」事に注力したそうです。自社の体験会も実施・PCメーカーのツクモとの連携なども行い、タッチポイントの増加に力を入れてきたようです。ゲーム展示会への参加についても、少数のイベントに大きく展示するのではなく、多数のイベントに最小コストで出展する方針で露出回数を増加。VR関連の交流会・勉強会などにも体験台を設置していた様子です。結果、本作を体験した人数は1500人以上となったそうです。

また、ゲーム実況者に対して「アンバサダープログラム」を設置(現在は募集終了)。バーチャルユーチューバーのプレイ動画を中心に、情報拡散に努めたとのこと。

クラウドファンディングは「海外向けプロモーション」と割り切って展開

本作ではKickstarterによるクラウドファンディングが実施されましたが、これは開発費用をあつめるのではなく、海外方面での認知を広げるために行われたのだそうです。英語メインでページ作りをし、日本語ページは別に用意。キャンペーンのバッカーは4割が海外だったそうです。

そのほかの海外マーケティングは「オンラインでできること」を中心に実行。プロモーション動画や各種リリースは英語版と日本語版をすべて制作していたとのこと。また、すべてのプレスキットを集約したページを設置して対応したそうです。準備に手間はかかったそうですが、結果個別対応をしなくてよくなり、効率化が図られました。

海外向けのプレスリリースは個別に送付することもあったそうですが、リリース配信用のサイトに登録をして、各メディアのピックアップを待つスタイルが基本なのだそうです。スライド資料で紹介されている「Gamasutra Resource Center」がこれにあたります。

Gamasutra Resource Center
https://www.gamasutra.com/resourcecenter

また、海外の動画配信者(ストリーマー)向けには、Keymailerというツールを利用したそうです。ベータキーを事前配布し、発売後もストリーマー向けキーを配布したとのこと。

https://www.keymailer.co/

筆者注:「Keymailer」はゲーム開発者がゲーム実況者をさまざまな条件で検索でき、彼らに対してレビューキーを送れるサービス。過去に他のインディーゲームクリエイターも言及していたので、無料もしくは安価に利用できるサービスのようです。

直球の標語がスゴイ

次ページ:ローカライズとレーティングにはどう対応したのか?

Takaaki Ichijo

株式会社ヘッドハイ代表。サークルThrow the warped code outとして『Back in 1995』『デモリッション ロボッツ K.K.』を開発

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