ベテランサウンドクリエイターによる、UE4サウンド実装のコツ。「ゲームエンジンが変えた ゲームサウンドのアウトソーシングとその課題」[CEDEC2020]

サウンドクリエイターもゲームエンジンを知っておくことでコミュニケーションが円滑に

サウンドクリエイターもゲームエンジンの仕組みを理解し、それに合わせた作り方を提案できる時代となり、実装者とのコミュニケーションも円滑になります。

ポイントは、汎用ゲームエンジンによりアウトソーシングのハードルが下がった、ということです。「ドアの音を作ってほしい」という要望があった時、サウンドクリエイターが知りたい情報は山ほどあります。そんな状況で、waveファイルの作成だけではなく、ツールやエンジンを使って実際にゲーム中で使える設定までを組み込んでしまう、というのが新しいサウンドクリエイターの形です。

サウンド演出の実装とデバッグ

UE4の場合では、ブループリントをサウンドクリエイターが触ることがあります。(もちろん、アーティストが触ることもあります)。サウンドにおいては、論理式を使って音を鳴らしたい場合は便利です。ポイントは、ブループリントによる設定を行うことについて必ずエンジニアに相談すること。ある程度できたら、エンジニアに処理部分を渡してしまうことです。

大久保氏の事例としては、「スポーツゲームにおける実況システム」を管理するコンポーネントや、パラメータを入れるとそれっぽい魔法エフェクト音を発生するコンポーネントなどを制作したそうです。

その他、サウンドクリエイターに知っておいて欲しいUE4機能として、デバッグ対応における「コンソールコマンド」「リファレンスビューワー」「リソースコントロール」の紹介がありました。コンソールコマンドはサウンドの発音情報やメモリ使用情報を画面に出し、チェックできる機能です。「リファレンスビューワー」は、サウンドデータがどんなコンポネント依存して、どう紐づいいているのかということが図でわかるものです。


リソースコントロールはバージョン管理ツールとの連携機能です。バグ報告があった時は、この3つの機能を駆使して特定・修正を行っていきます。この方法は、ゲーム開発の現場に大量の関係会社が関わっているケースなどで活躍したそうです。

サウンドクリエイターに求められるスキルセット

サウンドクリエイターがゲームエンジンを直接触るメリットとしては、スピードとクオリティは絶対に上がる、ということです。サウンド実装の受注側が見積もりもしやすくなりますし、なによりクリエイターとしてのやりがいも上がります。うまくやればエンジニア側の実装工数が減ります。

デメリットとしては、明確に作業が増えるということです。これについて大久保氏は「確かにやることは増えるが、それはニーズがあるということだと考えられる」と述べました。もう一つのメリットとしては、ゲームエンジンを直接触れるということは、サウンドクリエイターとエンジニア側触る部分がおおきく重なるということです。これはワークフローが柔軟すぎるので責務がごっちゃになり、コミュニケーションエラーの原因になりがちなのだそうです。また、汎用エンジンでも魔改造されていたりすると、この手法が使えません。

大久保氏は、メリットの方が大きいと考えているそうです。汎用ゲームエンジンが普及することで、サウンドクリエイターがゲーム実装も含めて可能になりました。これに合わせて、アウトソースのサウンドクリエイターの働き方や、役割の見直しがいるのではないか、と述べました。

この制作スタイルに必要なスキルセットとして、音素材づくりはもちろんのこと、ゲームエンジンの理解、サウンドミドルウェアを使う場合はそのツールの理解と、ミドルウェアのエンジンプラグイン側の理解もあるとよりスムーズです。

講演の最後に大久保氏は、こうしたワークフローには「育成」に課題があることから、インタラクティブオーディオ協会の構想を提案しました。こうした組織によって、ゲームサウンドに関わる者の育成・調査・情報の見える化を目指したい、という言葉で講演を締めました。

igjd

IndieGamesJp.dev Moderator

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