「集英社ゲームクリエイターズCAMP」が始動。クリエイターが新しいプロジェクトを始める際の仲間が集まる場となるか
集英社がゲームクリエイターを中心とした支援プロジェクト「集英社ゲームクリエイターズCAMP」を開始しました。
本プロジェクトは「ゲーム開発に関連する様々なジャンルのクリエイター」も含まれるため、漫画家、小説家、映像作家、イラストレーター、サウンドクリエイターにも参加を募っています。「インディーゲー厶」とは書いておらず「ゲームクリエイター」としており、集英社のIP活用を視野に入れたプロジェクトのようです。
クリエイターズCAMPがサポートするものとは何か?
本プロジェクトは、基本的にチームでゲーム開発をしたいクリエイターへの機会提供を基軸としています。最も大きな施策と思えるのは、登録したクリエイターによる「チームアップ」です。こちらはゲームプロジェクトに対して、ゲームデザインやアート面、サウンド面といったクリエイターが集まり、チームを結成できるようにしていくとのことです。
プロジェクトは登録制となっており、ポートフォリオサイトようなスタイルとなっています。登録したクリエイターは、専門のクリエイティブ分野の記載や、制作した作品のポートフォリオをまとめることにより、他のクリエイターに何ができる作り手かを説明。SNSと同じように、興味を持ったクリエイターをフォローしあうことで、チームアップしやすい環境を作ろうとしている模様です。スキルのうちどれかをメインに選ばなくてはならないため、オールラウンダーで個人開発を行うクリエイターとしては少々使いにくいところもあります。また、現在のところフォローしてもアカウント同士でのメッセージ機能などはないため、おそらく「ゲームジャム」的に集英社側からマッチするクリエイターをチームアップに誘う形式ではないか、と予想できます。
登録者は「フォーラム」を利用でき、情報交換や運営への要望などを書き込むことができます。
https://game-creators.camp/forum
続いて、ゲーム開発を支援するパートナー企業・スポンサー企業によるゲーム開発に役立つノウハウの共有「セミナー・ワークショップ」や、集英社が選出したゲームプロジェクト「CAMP支援タイトル」に対して開発・宣伝サポートなどを行っていくことを挙げています。
漫画出版社によるIP活用を通じたクリエイター支援
昨年、大きな話題となった講談社の「ゲームクリエイターズラボ」は、採用したクリエイターに最大1000万円の支援を行う企画でした。今回の集英社のゲームクリエイターズCAMPも低め、著名な漫画出版社が本格的なクリエイター支援に乗り出しています。漫画出版社は「漫画家」という個人(または少人数チーム)の才能を発掘・育成してきた長い経験があり、そのノウハウをゲームにも広げる試みであると思われます。
集英社がゲームへの取り組みは今回が初めてではありません。これまでにもGoogle Play のIndie Game Festivalにて「少年ジャンプ+賞」を設立し、受賞クリエイターに最大1,000万円の開発費のサポートをした実績があります。
実際に少年ジャンプ+賞を獲得したクリエイター「わけん」氏は、「ドラゴンボール」や「ONE PIECE」などのIPを活用したアプリ「ネコの大喜利寿司」の開発を担当しました(サービスは2020年1月に終了)。引き続きゲームクリエイターズCAMPでも「CAMP支援タイトル」として参加しています。
集英社ゲームクリエイターズCAMPでは、「企画の持ち込みについては、2021年秋頃を目途に受付を開始する予定」と公式サイトで説明しています。登録したクリエイターには、まず企画持ち込みの前段階として「仲間を見つける・探す」ことや、ワークショップなどで「学習する・品質を上げる」ことを挙げており、チームの体制や技術力をつけていくプロセスを重視してほしい、という意図が伝わるでしょう。
本プロジェクトが挙げているコンテストでは、現在『ONE PIECE』をモチーフとしたカジュアルゲームコンテスト「ONE PIECE GAME賞」がエントリーを開始しており、7月31日までが締め切りとなっています。
また、IP活用タイトルだけではなく、「オリジナルゲームコンテスト GAME BBQ vol.01」を7月から9月にかけて開始を予定。大賞には100万円に加え、開発資金を出資するとのことです。
実績のあるパブリッシャー・プロデューサーが参加
個人・小規模のゲーム開発は漫画や音楽と異なり、1作品に3年・5年かけるのが当たり前の世界です。また、技術的な難易度や、プラットフォーマーとの付き合い方、海外展開などにも独特の苦労があります。そこで本プログラムでは、ゲーム開発の現場に長けた人員も参加しています。
公式Twitterによると”ゲーム作りのメンタリング”として、アドバイザーに元SIEで『勇者のくせになまいきだ。』シリーズプロデューサーを務めた山本正美氏が参加。同作はアクワイアが開発・SCE(現SIE)が発売したタイトルであり、プラットフォーマーとして社外開発チームを率いた経験を本プログラムで生かす試みのようです。かつてSCEが実施していたクリエイター発掘プログラム「PlayStation C.A.M.P!」「ゲームやろうぜ」にも、同氏は主宰として関わっています。
パブリッシャーパートナーとしては『有翼のフロイライン』『メルヘンフォーレスト』をリリースするクラウディッドレパードエンタテインメント(雲豹娛樂股份有限公司)が参加。同社から元SIE / 元UNTIESの伊東章成氏が参加し、伊東氏もクリエイターへのアドバイスを担当するものと思われます。
今回のプロジェクトに関しては、金銭的な支援をはじめから行うのではなく、まずはコミュニティベースでゲームを生み出していく環境づくりを提示しています。しっかりと開発者同士のベースを作ってからプロジェクトとしてスタートしよう、とする意図があるのではないでしょうか。
「クリエイター目線」での運営を掲げた本プロジェクト。チームでのゲーム開発に興味があるクリエイターは、まずはポートフォリオを登録してみてはいかがでしょうか。