Unity公式ブログにて、インディーのSwitch向け移植に関するインタビュー記事(日本語訳)が掲載
現在はビデオゲームをリリースするとき、マルチプラットフォームで展開することが当たり前のようになっています。しかし簡単なように見えますが、各プラットフォームで展開する大変さや、良さとは何でしょうか。
Unity公式ブログにて、「ゲームのマルチプラットフォーム展開にまつわる、良いこと、つらいこと、すばらしいこと ― Nintendo Switch の事例も紹介」が公開されています。こちらはタイトルの通り、実際にマルチ展開することの良し悪しについて、実際の開発者を取材することで具体的に説明しています。
映画音楽家が休みの時にUnityでゲームを作り始めたのがきっかけ
インタビューを受けたのは、ホラーアクションADV『DARQ』を開発したWlad Marhulets氏。自作をPC、Xbox One、Xbox Series X、PlayStation 4、PlayStation 5、そしてNintendo Switchに展開した経験についてうかがっています。
Marhulets氏はもともと映画音楽の仕事についていたところ、長期の休みを取っているときに趣味でUnityに触れたことが『DARQ』開発のきっかけでした。
しかしMarhulets氏はその時点では、ゲーム開発だけではなく、リリースのときのプラットフォームについてまったく知識がなかったといいます。『DARQ』の開発には3年が費やされ、その間にパブリッシャーからも声がかかるのですが、Marhulets氏は断り、自分でリリースする道を進みました。
自社リリースはPCのみを考えたものでしたが、その後2020年、マルチ展開を行ってくれるパブリッシャー・Feardemicと出会い、先述のプラットフォームでのリリースに成功します。
個人クリエイターとしてマルチ展開をするということ
Marhulets氏はマルチ向けの開発で苦労したこととして、まずすべてのプラットフォームで見た目を統一することを挙げています。プラットフォームごとにレンダリングの処理が少しずつ異なる問題があり、細やかな所では明るさや彩度の処理から、ライティングまで手作業で調整する必要があったそうです。
さらに、新型コロナウィルスの世界的な流行に加え、時差が異なるさまざまな国に在住するチームメンバーとやりとりをしていく大変さもあったといいます。こちらは最終的にSlackを利用して進捗を共有するかたちに収まったとのことです。
特にNintendo Switch(以下、Switch)での展開については念入りに聞かれています。PCや他のコンソールと比べ、スペックが異なるSwitchでは、PCの基準で移植しようとするとパフォーマンスに問題が生まれるためです。ここではボリュメトリックライティングといった、描画コストの高い処理を押さえ、いかに最適化を進めるかを説明。またSwitchの小さな画面でもテキストを読みやすくするため、フォントサイズの調整なども行ったそうです。
Marhulets氏はSwitchでの移植を、マルチ展開のなかでも特に優れた最適化ができたとまとめていました。Switchへの移植のポイントも指摘されており、「コードを理にかなった方法で構成すること。プロジェクト全体で命名規則の一貫性を保つこと」と、コーディングの一貫性がないと移植が難しくなる問題を挙げています。また、Switchの携帯用の画面に合わせたUI設計なども重要とのことです。
マルチプラットフォーム展開では、やはり各プラットフォームに対応した最適化が必要ですが、とりわけSwitchへの移植は多くの開発者の頭を悩ませている模様です。同様の問題に取り組んだケースとして、Unityブログでは「『Cuphead』開発者が明かす、Nintendo Switch向けに最適化するためのヒント」も公開。こちらは開発の早い段階でSwitchへのリリースを想定していたこともあり、パフォーマンスを検証していたためスムーズな展開ができたと説明しています。
とはいえ、やはり多くのクリエイターにとっては『DARQ』のMarhulets氏のように、まずはマルチ展開よりも目の前のゲームを作り切ることを考えてしまうものでしょう。ですがゲームの広い展開を考えた時、これらの知識を得ていくことに損はありません。