2人で効率的にゲームを作るには?インディーゲーム「くちなしアンプル」「マヨナカ・ガラン」制作事例 | UNREAL FEST EXTREME 2022 SUMMER

人を殴ってはいけません。
人工物感を表現。

過去作『わすれなオルガン』との共通点

本作の主人公は、過去作の『わすれなオルガン』にも登場していたのでグラフィックに共通点を持たせようとしたとのことです。

1つ目の共通点はスタート画面で、『わすれなオルガン』のスタート画面はメニュー選択によって色が変化します。この変化は善乃さんもお気に入りで、この要素を取り入れています。

new gameは緑色、configは青色に変化します。

2つ目の共通点は輪郭線です。

『わすれなオルガン』は輪郭線をくっきりとさせていたので、本作の輪郭線も同じような印象にすることを意図していたと善乃さんは言います。具体的な手法は以下のように行ったとのことです。

  • 『くちなしアンプル』では、くっきりとした輪郭線を実現するために4種類の輪郭を合成しています。
  • 一つ目が、カスタムステンシルによる輪郭線です。異なるメッシュ間に安定してくっきりとした線をいれることができました。
  • 2つ目がラフネスの異なる部分に入る輪郭線です。グラフィックがリアルでないことを逆手に取って、輪郭線を入れる目的でラフネスを設定しています。
  • メッシュの角度や距離で消えることのある輪郭、例えば人物の鼻などには3つ目の深度による輪郭線を補助的に用いています。3つの輪郭線を合成したものは下の画像のようになります。

  • 最後の輪郭線は線による塗りつぶしです。
  • 鉛筆で絵を描くときのような、黒っぽいところを塗りつぶして、白黒のバランスを取ったような表現をしています。人物の眉やまつげなど線で塗りつぶした方が自然なところや髪の毛の房などにアクセントを入れたいときに使っています。
  • この塗りつぶしのマテリアルは結構多用していて、背景や敵、UIにも使っており、マテリアルとして実装していますので、パーティクルにも適用可能です。

ゲームバランスについて

繰り返しダンジョンに潜る本作は、飽きが来ないように、1周したら、必ず何かが成長するようにしたと言います。

スキルの習得などができるようにしており、繰り返しが楽しめるようになっています。さらに、成長がわかりやすくするように、成長度合いを大きく設定。

ダンジョンのファームのレベルを上げると、収穫量が倍増したり、パラメータの上昇も高くしており、さっきまで戦っていた強敵にも楽勝で勝てるように設定をしたと言います。これらは、成長を感じられる反面、やり過ぎるとゲームが簡単になりすぎて、まったく面白くなくなってしまったと反省する点もあったようです。

これらの経験から、「難しすぎるよりも簡単すぎるほうがつまらないという貴重な気づきを得られた」と善乃さんは振り返ります。

ゲームバランスの調整でもう一点気をつけたことは、成長のパターンが読めると繰り返しを想像させてしまいつまらなくなるのではないかと善乃さんは言います。

そして、これを避けるために、ゲームプレイが変化するスキルを入れることで、飽きないように努めたとのことです。一例として、アイテムをより多く持ち帰るスキルを得ると、ダンジョン帰還のタイミングも変わるなどプレイに変化を持たせています。その他にも画像のようなスキルを実装し、プレイを変化させるように努めています。

これらは繰り返しテストプレイを行ったことが活きているのではないでしょうか。

調整方法

レベルごとのステータスとレベルアップに必要な経験値を固定し、他の要素で調整ができるようにしてうまく対応できたとのことです。

パッケージイラストにUE4を活用

パッケージイラストにもUE4を活用しており、背景や一部のキャラクターの線画にゲームの輪郭をそのまま活用しています。魚眼のようにゲーム画面を曲げて、勢いのある構図ができたと言います。

ゲームに輪郭線を描画する機能をあらかじめ載せていたので、輪郭線を抜き出して加工しています。

その上にキャラクターを乗せ、背景は彩色とゲーム内で使用したテクスチャを用いてイラストを完成させています。

このパッケージはゲーム背景を使っています

CAVYHOUSE新作情報!

これまでの作品はファミ通クロスレビューでのシルバー殿堂入りやEPICのメガグランツに選ばれるなど、確かな手ごたえを感じてきたCAVYHOUSE。最後には新作の情報を発表しています。

新作は、UE5を使った『こふんは生きている』で、3Dアドベンチャー+放置ゲーム+物語の3要素を活かした作風に取り組み、グラフィックモデルにメガスキャンを使っていくとしています。

開発進捗は、Twitterで発表予定です。


様々なジャンルのゲームを作っていくCAVYHOUSEの開発手法を見ていきましたが、最初に計画を立てる大切さや、細部まで自分たちの作りたいものを作っていくこだわりなどを感じたのではないでしょうか。また、途切れることなく次回作を作り続ける姿勢も素晴らしいと感じました。

次回作『こふんは生きている』にも期待が寄せられます。

CAVYHOUSE公式サイト

HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です