インディーゲーム開発者のための「コミュニティー向けDiscord」の作り方
[本記事の一部は、Akupara Gamesのブログ記事の日本語翻訳です。著者のBuddy Solaの許諾を得て翻訳・掲載しています。]
15年前はインディーゲームを宣伝するために、Facebookページが必要でした。10年前はTwitterアカウントで、5年前はInstagramのアカウントを作るべきでした。現在、ゲーム業界のマーケティング専門家は誰もがDiscordサーバーを作るべきというでしょう。しかし、なぜ他のプラットフォームではなくDiscordでしょうか。今回の記事ではAkupara GamesのDiscordを例として、Discordの役割とその作り方を紹介します。
なぜDiscordなのか?:「注目」 vs. 「価値」の考え方
どのSNS戦略でも「注目」と「価値」は肝心な部分です。ゲームを宣伝するとき、目標は注目を集めることですね。例えば、ティザー動画やプレスリリースを出したり、開発者の配信をしたりしてユーザーを引き付けます。
しかし、人間の集中力は途切れてしまうため、注目を集めてもまだ足りません。注目をキープするための何かが必要です。それが「価値」です。価値をユーザーに提供したら、ゲームに定期的に注目してもらえるようになります。
その「価値」を提供できる場所はDiscordです。DiscordサーバーはFacebookページ、TwitterアカウントおよびInstagramアカウントのようなまとまりをキープしつつ、コミュニティーとの会話を促せるプラットフォームだと言えます。Discordで提供できる「価値」の例として、以下の点が挙げられます。
- 情報:インディーゲームのDiscordサーバーに参加するユーザーは、あなたのゲームに興味を持っています。他のプラットフォームでの投稿だと文字の制限や見栄えを気にする必要がありますが、Discordサーバー内では文字制限を気にせず、ゲームの魅力、システム、キャラクターのストーリーなど情報を詳しく共有できます。
- エンタメ:ゲーム関連のミームや冗談、面白い情報を参加者同士で共有し、誰かが笑ったら、それはエンタメとしての価値があります。
- 人とのコミュニケーション:友達やコミュニティーへの所属感が欲しいユーザーだったら、好きなゲームのDiscordに入れば共通の趣味を持つ友達が見つかりやすくなります。
要するに、Discordは「注目」の延長線として、「価値」を届けることができるため、コミュニティーを築くための大事なプラットフォームになっています。
Discordの基本構造:チャンネル
Discordサーバーにはテーマに沿ったスレッドのような「チャンネル」を構築します。インディーゲームのサーバーの基本的な構造を以下にまとめました。
Announcements and Rules(発表とルール関連)
- Announcements(発表)
- Rules(ルール)
- Updates(ゲーム関連のアップデート)
- FAQ(よくある質問)
Game <タイトル>関連
- Discussion(ゲームについて)
- Dev-Log (開発ログ)
- Work in progress(進捗)
- Bug report(バグ報告)
- Feedback(フィードバック)
- Introduction(自己紹介)
Off-topic (ゲーム以外)
- General(一般)
- Creative (イラスト、音楽)
- Food(食べ物)
- Mecha(メカ)やAnimals(動物)など
(ゲーム・サーバーによって特別なチャンネルがあります。)
Extras(おまけ)
- Spoilers(ネタバレ)
Discordサーバーを0から作るには手間がかかるので、テンプレートを使うと良いかもしれません。例として、Akupara Gamesがサーバーテンプレートをこちらで公開しています。
※亀のチャンネルがあるのはAkupara Gamesの「Akupara」が世界を背負う亀の名前に基づいているからです。
チャンネルの役割と権限
チャンネルには「フロントエンド」的なものとと「バックエンド」的の役割のものがあります。チャンネルのフロントエンドとは、すべてのユーザーが見えるものをさします。例えば、チャンネル名とトピックとそのカテゴリーがこれにあたります。そして、バックエンドはユーザーの見えないもので、例えば、ユーザーの閲覧・投稿範囲の設定などです。
フロントエンドが大事な理由は、マナーとルールがあるというメッセージを醸し出し、ユーザーに適切な会話をするためのチャンネルへ導く機能があるからです。
例えば、あなたのゲームがストーリー重視のゲームだとしましょう。ゲームをクリアした後ストーリーの感想戦をしたいプレイヤー用対して、「#ネタバレ」チャンネルを作りました。トピックに「ストーリー全体の感想戦用。ネタバレ注意!」など一言を入れ、「おまけ」としてカテゴリー化しました。こうすると、「#ネタバレ」チャンネルがあるため、他のチャンネルでは投稿するべきではないと暗示できます。そのため、もし他のチャンネルでネタバレの議論をした人がいたら、他のユーザーがネタバレをした人に指摘してくれるようになるでしょう。
一方、チャンネルのバックエンド性はユーザーをより強制的に管理する方法です。例えば、管理者(モデレーター)と内部の話ができるように、チャンネルの権限で「#管理者チャット」を一般ユーザーの見えないプライベートチャンネルに設定しましょう。
また、初心者がうっかり全員をメンションすることが心配だったら、「@everyone」、「@here」の権限を外せば良いです。もしくは特定のチャンネルで権限を無効にすると良いです。
そして、「#公式アナウンス」用チャンネルが会話で埋もれないように、ユーザーの閲覧権限をデフォルトのままにし、投稿の権限を無効にしましょう。
サーバーの基本ルール
チャンネルとその権限を設定し終わったら、次はサーバーのルールを掲載しましょう。インディーゲームのサーバーでよくあるルールは以下の通りです。
- マナーを守り、他のユーザーへの思いやりを大切に
- ハラスメントは禁止(個人情報を聞き出したり、他人を罵倒したりしないでください)
- チャンネルの話題に沿って投稿(分からないときは「#一般」に投稿)
- 18禁の内容は禁止(ゲームによります)
- 政治・野球・好きなコードエディタの話題など、必ず荒れる内容は禁止(ゲームのテーマによります)
- 荒らし・スパム禁止
- ネタバレはネタバレタグを使いましょう
- 違法の行為(海賊版のリンク共有、ハッキング、個人情報の晒しなどは禁止)
また、サーバーによりますが、最初にルールに承諾しないと、チャンネルに投稿できないサーバーもあります。
トラブルの例とその対応
ルールを設定しても、必ずルール違反をする人もいます。
Discordサーバー内でよくあるトラブルとその対策方法をまとめました。
- 18禁内容・グロ内容の投稿
→モデレーターがその投稿を削除、ボットでスパム対応 - 不適切な質問・フィードバックが投稿された
→ルールを言及し、はっきり断りましょう - 詐欺のリンク(フィッシング詐欺、Discord Nitro無料配布リンク、新規の仮想通貨やNFTなど)
→モデレーターがその投稿を削除、注意喚起投稿・リマインダーを設定
→例として、以下のツイートを参照してください。
そして、トラブル対策にオススメのボットはMEE6とDynoです。両方ともユーザーをミュートしたり、キック(追放)したり、BAN(2度と参加できなくする)したりできますが、日本語訳があるのはMEE6です。
MEE6にはモデレーション以外の機能(音楽を流すことができ、ユーザー同士の会話を促すためのレベルシステムがある)がありますが、ログを残す場合、チャンネルを指定する必要があります。
その一方、Dynoは全体のトラブルログを残し、本来削除されるBANしたユーザーのメッセージを保存できます。どちらにするかまだ迷っていたら、両方を入れてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回の記事では、インディーゲーム用のDiscordサーバーについてざっくり説明しました。
- まず、テンプレートを使い、自分のゲームに沿ったテーマのチャンネルを作成
- 次に、チャンネルの権限・ルールを設定
- そして、トラブルの対策として、モデレーション用のボットを導入
これで基本的なインディーゲーム用のDiscordサーバーを作れます。しかし、サーバーを作成した後、どうすれば運用していくのでしょうか。別の記事でDiscordサーバーの宣伝方法やコミュニティーとしての運用方法について紹介しますので、ぜひお楽しみください!