インディーデベロッパーの告発が続くパブリッシャPQubeの問題——資金が開発者に届かないことは、日本でも対岸の火事ではない
最近、インディーゲームパブリッシャーであるPQubeが、契約したデベロッパーに告発されるニュースが相次いでいます。先日『A Space For The Unbound』を開発中のインドネシアのスタジオ、Mojiken StudioとToge Productionsがゲーム公式twitterにて、パブリッシャーであるPQubeを告発。契約を解除するに至っています。
両社の告発の内容は、簡単にまとめればPQubeが開発の助成金を得ていた事実をデベロッパーに隠したまま、初期投資額や収益配分をパブリッシャー側に有意な契約を進めていたことに対するものです。
世界的にこのスキャンダルが報じられる中、PQube側は資金面でのやりとりについて不備がなかったことを主張しています。ところがPQubeはこれだけではなく、タイのデベロッパーであるCORECELL OFFICIALにも告発されました。こちらで語られているのは、開発初期投資の支払いに関する問題です。
もともとCORECELL OFFICIALはPQubeから開発のマイルストーンごとに報酬を支払ってもらう契約でした。しかし、開発が進んでも依然として報酬の一部しか支払われないことから、今回の告発に至っています。PQube側は「すでに権利を返還した」と主張していますが、Xboxのストアでは彼らのゲームが未だにPQubeの名で販売されており、矛盾があります。
本問題は対岸の火事ではない
この問題は日本においても無縁ではありません。現在日本のインディーにもパブリッシャーとの交渉が多くなり、たくさんのコンテストが開かっれています。それ自体は喜ばしいことですが、悪意を持った事業者が今後現れてしまう可能性があります。本誌でも紹介したUkiyo Studiosの高橋氏は、「日本のクリエイターの場合でもマイノリティー支援助成金の対象になりえる」と語っています。そして、海外においては助成金に勝手に応募しておきながら、開発者にいっさいお金が渡らないケースがあるとのことでした。
そこでまず留意しておきたいのは、パブリッシャーとの契約条件です。開発者が何も知らないのをいいことに、業界の平均から離れた不利な条件を突きつける事業者が現れるかもしれません。シンプルにはレベニューシェアの条件で、たとえば開発費の前払いがあったとしても、開発者に10%しか渡さないなどの海外業者の事例がありました。また。インディーゲームの開発は長くなると3年や5年は当たり前ですが、「早期に契約をして縛り、ゲームをリリースする期日をオーバーしたらIP含めてリソースを没収してしまう」というケースもあったそうです。
ではどうやってそうした問題から身を守るかを考えると、やはり身の回りの開発者に評判を聞くことが最も良い手段と言えます。パブリッシャーのサービスの質や連絡の頻度などについて、情報を共有することには大きな意味があります。もちろんですが、内容に何かひっかかりを感じている状況でも、機密保持として交わしたの契約内容を勝手に話してはいけません。
無論、前提として開発者もゲーム開発に向き合い、パブリッシャーに価値を提供する義務があります。契約は双方の義務を定義するものだからです。決められたマイルストーンには応じるべきですし、契約に定められた期間でパブリッシャーからの連絡に応じる必要があります。そして、たとえばSNSで勝手に機密情報を流したり、業務上必要なライセンスの表記を怠るなどは言語道断です。
弊誌では引き続き、小規模ゲーム開発者が自衛する手段について調査し、情報発信を行っていきます。