“開発者フレンドリー”な新興ゲームマーケティング企業「Ukiyo Studios」はどのように生まれたのか? 代表者インタビュー

「いったいどうやって自分のゲームを広めていけばいいの?」多くのインディーゲーム開発者が頭を悩ませるのは、自作のマーケティングやプロモーションでしょう。

これらの悩みを解決する手段のひとつに、パブリッシャーとの契約があるかもしれません。しかしその場合、開発に関するステークホルダーが増え、リリースタイミングなどが望ましい形にならないかもしれません。また、海外のパブリッシャーだった場合はコミュニケーションコストや、自作の権利関係などに絡んだ問題なども少なくないです。

開発者が取れる道は自分で販売するか、パブリッシャーと組むかの2択だけなのでしょうか?そんな状況において、新興企業・Ukiyo Studiosは開発者たちにユニークな解決法を提案しています。

Ukiyo Studiosはゲームの販売ではなくマーケティング活動とローカライズに特化する方針によって、ゲームの権利に触れずサービスを提供。具体的には、ゲーム開発に集中できるよう、さまざまなイベント出展などのマーケティング代行を事業に挙げています。

そんなUkiyo Studiosのスタンスは、いったいどのように生まれたのでしょうか? 今回、同社の高橋温氏と、デヴィッド・カディナス氏からお話をうかがいました。

高橋 温 氏
デヴィッド・カディナス氏

インディーゲーム開発者に寄り添うマーケティング企業

——まずは、自己紹介をお願いします。

高橋:Ukiyo Studiosの高橋温と申します。もともとはゲームローカライズを行っているWARLOCSというインディーゲームローカライズチームのマネージャーをやっておりました。最近も100作目となるインディーゲームのローカライズをやっており、有名な所では『Axiom Verge』の翻訳はうちのチームが担当しております。

デヴィッド:Ukiyo Studiosを立ち上げた、デヴィッドです。現在はインディーゲームのマーケティングに関わっています。私は日本のゲームが大好きで、日本のゲームで育ってきました。日本のインディーゲームコミュニティを世界に届けたり、海外で開発されたゲームを日本に持っていったりしています。

——Ukiyo Studiosの簡単な経緯を教えていただけますか。

高橋:私のローカライズ以外でのゲームビジネスの関わりはゲームマーケティングで、最初は『Dead by Daylight』が日本に上陸したとき、ゲーム配信などの企画に携わりました。DBDでマーケティング・イベント出展を体験したことがきっかけとなり、「ローカライズ以外でも開発者を支援したい」と思いはじめました。せっかく日本翻訳をしても、その先(マーケティング)のフォローが無いと「知られないまま」でもったいないと感じたんです。

しばらくは、主に海外インディーゲームのローカライズ事業をしていましたが、2019年に私が翻訳した『Stone Story RPG』が東京ゲームショウ(以下、TGS)のセンスオブワンダーナイトの大賞を受賞したことをきっかけに、ローカライズ以外に「ゲームをもっと売り込む方法はないのかな」と考えはじめました。そのころはゲームイベントスポンサーだった飲料の企業の仕事や、Tokyo Sandboxなどにも関わって、日本のインディーゲームシーンを盛り上げようとしました。

その後デイヴィットに紹介されいろいろ話し合って、ゲームマーケティングに特化した事業をやろうと考えたんです。

——それがUkiyo Studiosになったと。

高橋:はい。Ukiyo Studiosの事業を簡単にまとめますと、ゲームマーケティング会社ですね。パブリッシャーと組むのは難しいけど、パブリッシャーの一部の機能を必要とする開発者向けのサービスを提供する会社です。

たとえばマーケティングだとか、コミュニティマネジメント、ローカライゼーション、イベントへの代理出展など、個人開発者にとってなかなか手が回らないような、ゲーム開発以外の作業のサポートするサービスを行っております。

サービスは「売り上げの何%をいただきます」という契約を結ばずに、費用ベースで行います。1回いくらの明朗会計で代理出展などを行いますので、なるべく作品の成功における報酬は開発者さんがもらえるようにしています。

——かなり開発者フレンドリーなスタンスですね。

高橋:私は日本の同人誌を海外出版する会社もやっているんですよ。実はUkiyo Studiosのコンセプトはそこから来たんですね。扱っているのはアダルト同人誌で、直接の創作物を作ったクリエイターさんとの間に人がいない状態でものを売ることをずっとやってきました。そんななか、「これって個人のゲーム開発とまったく被るんじゃないか」と思って、インディーゲームにも広めていこうと考えた形です。

TokyoSandbox2022の出展の様子

——日本側から見るとUkiyo Studiosは非常にユニークな事業ですよね。本事業を立ち上げようと考えたバックグラウンドはなんでしょうか

デイヴィット:私の興味深い思い出は2017年コミケのことです。そこで多くの日本の小規模ゲーム開発者をみていました。私は彼らのポテンシャルを見出し、そして彼らの作品がもっと多くの人の手に届くためにどうしたらいいか考え、それを手助けしたいと強く思いました。

高橋:デイビッドがコミケを回っていてゲームをプレイしていて、そこで出会った『有翼のフロイライン』などの海外マーケティングに後で自分も関わることになりました。また、私たちがパブリッシャー契約を結ばないという方針は、ここ数年のインディーゲームパブリッシャーと開発者の間で起きたスキャンダルが背景にあります。すべて秘密主義のNDAゆえに話せないみたいな。

——高橋さんはそうしたスキャンダルに関してTwitterでも意見を出されていました

高橋:そうですね。そうしたスキャンダルに対する私の発言をきっかけに「私の問題についても取り上げてもらえませんか?」といろんなところから連絡が来ました。

あまりにもそうした開発者が多すぎて。要するにゲームを作っていない人が契約書の力で実質的にゲームをコントロールできることは個人的にまったく理解できないんですよ。

私の同人誌出版の会社は日本語をローカライズして海外展開するところですが、権利は作家に帰属するものなんです。何かがあったら必ず作家が権利をキープしたまま契約を終了することができるので、仮に契約を止めた時点で、私たちはその同人誌の販売を取り下げるだけで、作家から権利を奪うことはありません。

この同人誌出版の形態のように、契約に縛られず、ストレスフリーに海外展開することができたらすばらしいなと思い、デイヴィットと「こんな感じでやろう」みたいに話しています。

igjd

IndieGamesJp.dev Moderator

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