1週間で100万本売れた『V Rising』、大ヒットの理由を分析
[本記事は、GameDiscoverCoニュースレターの日本語翻訳です。GameDiscoverCoの許諾を得て翻訳・掲載しています。]
最近、『V Rising』という吸血鬼サバイバルゲームが話題になりました。2022年5月17日にSteamで早期アクセスが公開されたこのゲームは、スウェーデンのインディーゲームスタジオStunlock Studiosによって制作され、1週間で100万ユーザーに到達しました。一体どのような経緯でヒットしたのか、Carless氏の仮説とStunlock Studiosからのコメントを紹介します。
『V Rising』の早期リリース時のデータ
『V Rising』のタイトルを聞いたことがなくても、データを見たらこのゲームは売れそうだなと推測できます。リリース時の週にはGameDiscoverCoの人気ランキングで1位にランクインし、Steamのリリースされていないゲームのウィッシュリストランキングでは8000件以上のゲームの中で33位にランクインしました。『V Rising』に対する期待はもともと高かった様子ですが、その高い期待さえ超えました。
参考として、GameDiscoverCo Plus(有料版)限定の2022年5月にSteamでリリースされたゲームランキングの詳細データを一部公開します。このデータは人気度のコンバージョン率順に並べてあります。注目されたゲームの持つ人気度のコンバージョン率の中央値は約0.15ですが、『V Rising』はその6倍です。
「人気ゲームは大人気」は何の説明にならないので、どのように注目を集めたのか、なぜコンバージョン率が中央値よりはるかに高いのか、Stunlock StudiosのコミュニティーマネジャーJeremy Bearson氏と一緒に以下の仮説を立てました。
- 『V Rising』のコアとなるジャンルの組み合わせが深く、良いものになった
- リリース前のDiscordサーバーとコミュニティー構築に注力した
- クローズドベータでフィードバックと人気を集めた
- その他の要因:ファンベース、透明性、通常のマーケティング活動の努力
1.『V Rising』のコアとなるジャンルの組み合わせが深く、良いものになった
『V Rising』のサムネイルを一見すると、ただのアクションRPGという印象が残るかもしれません。しかし、GameRantでも説明されたように、『V Rising』はアクションRPGの枠組みを超えており、大ヒットした北欧神話サバイバルゲームの『Valheim』によく比較されます。
「『Valheim』と同じように、『V Rising』はサバイバルゲームで(…)戦いの一日が終わったら、どちらのゲームでもプレイヤーは貴重な拠点に戻る必要があります。(…)PvPモードでは、『V Rising』で 『Valheim』と同じく(…)拠点が敵によって破壊されたとき(…)ゲームの進行が全て消えます。」
Brendan Paul Dick, GameRant
そして、Carless氏がStunlock StudiosのBearson氏にゲームのメインフックについて「ヴァンパイアだけじゃないよね?」と聞くと、Bearson氏は以下のように答えました。
「ヴァンパイアだけかもしれません(笑)!その上、サバイバルのジャンルと、サバイバルゲーム好きにアピールできるように構築されている部分だと思います。すべてのメインシステムをお互いに意識した形で作られているので、別々のシステムが混ざっているだけの体験ではなく、一体となった経験になります。プレイヤーにとって興味のない部分に圧倒されず、このゲームの好きな部分を発見しやすくなっています。」
Jeremy Bearson, Stunlock Studios
ポイントは『V Rising』のメインゲームです。(早期アクセスの段階でも)優れた拠点構築系のゲームプレイだけでなく、マルチプレイヤー要素(協力モードとPvPモード)があります。その2つの要素で、口コミとゲーム実況を促しました。また、自分のサーバーを設営でき、コンテンツも深く掘り下げられます。 当然なことですが、ゲーム内容は大切ですね。
2. リリース前のDiscordサーバーとコミュニティー構築に注力した
早い段階で大きなコミュニティーを獲得することが肝心です。Bearson氏によると、「『V Rising』のような新しいIPでは、すでにあなたのアイデアを知っているファンベースがいないため、我々のゲームに興味を持ってくれる人が集まる場所を作りたいと思いました。『V Rising』をリリースする前、我々のDiscordサーバーのメンバーは1万4千人ぐらいでしたが、今は6万2千人ぐらいです。」
「様々なベータ機能(訳注:フォーラム機能(掲示板+タグ))を使ったり、複数の発表チャンネルを使ったりしてDiscordに情報が投稿されつづけるようにしています。サーバーホスティング、サーバー種類、ゲームモード周りの文化が発展しており、その発展を期待しましたが、こんなに大きくなるとは思いませんでした。」
通常のDiscordチャンネルでは投稿が埋もれやすいですが、フォーラム機能を使えば、掲示板の形で投稿ごとにコメントがまとまります。『V Rising』で使われているフォーラムはチュートリアルやフィードバックの投稿用だけでなく、プレイヤーによるマルチの募集やクラン(パーティーのような仕組み)募集などに使われています。『V Rising』のDiscordサーバーメンバーは6万人以上いるため、プレイヤーがTwitterで募集するより、『V Rising』のサーバーで募集したほうが人が集まるでしょう。『V Rising』のサーバーがまさに仲間を作る場所とエンタメの場所を提供しているので、各フォーラムに毎日投稿があり、コミュニティーが活発になっています。
3. クローズドベータでフィードバックと人気を集めた
リリースに近づいたとき、Stunlock Studiosがより大規模(3,000人まで)のクローズドベータテストを行いました。Bearson氏によると、「クローズドベータはかなり重要でした。皆さんにゲームをお届けする前に、プレイヤーからのフィードバックでゲームの方針を固め、バグを解消できました。早期アクセスのリリースの数秒前まで、ブラッシュアップし続けました。その調整がなかったら、『V Rising』の質はかなり落ちていたでしょう。ベータテスターに本当に感謝しています。」
皆さんはすでにご存知だと思いますが、公開もしくは非公開の管理された大規模テストを通して、プレイヤーのフィードバックが分かります。つまり、プレイヤーにとっての良い点と問題点が明確になり、Steamでリリースする前、レビューされる前に問題を解決できます。ぜひデモを通してのプレイテストをご検討ください。
4. その他の要因:その他の要因:ファンベース、透明性、通常のマーケティング活動の努力
上記の要素の他に、『V Rising』のヒットに貢献した要因を以下にまとめました。
- Stunlock Studiosには専門家やファンから見て成功したマルチプレイヤーゲームの実績が複数あります。これらの実績を見逃すべきではありません。
「確かに過去のゲーム「Battlerite」や「Bloodline Champions」のファンに、今何を開発しているか発信するようにしました。(「Dead Island Epidemic」のファンも認識しています。)もちろん、過去作と『V Rising』は結構違うゲームなので、ファンに『V Rising』の異なる方針を理解してもらえるように、最初から(ブログで)明確にしました。」 - 基本的に、Stunlock Studiosが『V Rising』の計画について正直に公開しているようです。例えば、ゲーム発表後の質疑応答ブログ記事が投稿されました。Bearson氏によると、「透明性を持つというのは公開できるものを伝えて、できるだけ正直に話すことです。その一方、時々情報を非公開にすることも必要です」とのことです。
- もちろん、やるべき通常のことはちゃんとやる。
「『V Rising』の宣伝は努力しました。ティザー動画を出したり、インフルエンサーに連絡したり、SNSを更新したり、ブログやニュースレターでプレイヤーに進捗を伝えたりしました。これらは(競争が激しい)ゲーム産業のなかで地位を獲得するには重要だったと思います。」
まとめ
繰り返しですが、『V Rising』の成功要因は以下の通りでした。
- 『V Rising』のコアとなるジャンルの組み合わせが深く、良いものになった
- リリース前のDiscordサーバーとコミュニティー構築に注力した
- クローズドベータでフィードバックと人気を集めた
- その他の要因:ファンベース、透明性、通常のマーケティング活動の努力
もちろん、すべての要因は誰にでも当てはまるわけではありませんが、この記事を通して各要因について理解が深まったら幸いです。ぜひ、自分のゲーム開発に試してみてください。
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