【TGS2025】新パブリッシャーPARCO GAMESインタビュー。同社の強みと、どんなゲームを求めているかをヒアリング
2025年9月25日から4日間、幕張メッセにて「東京ゲームショウ2025」が開催されました。インディーゲームに関連した出展は拡大の一途をたどり、各パブリッシャーのブースやパビリオン、Selected 80などの企画が会場に広がっていました。その中でひときわテイストの違うブースを構えていたのが、新規にパブリッシャーとして参入したPARCO GAMESです。

空港をテーマにしたクリーンで目を引くブースのなかでは、パブリッシングを発表した3つのタイトルを展示。なかでも日本のインディーゲーム開発チームRexLaboの作品『南極計画』は、来場者から大きな注目を集めていました。
今回はTGS期間中にて、PARCO GAMES ゲーム事業開発部部長 西澤優一氏にインタビューを実施。インディーゲーム開発者に向けて、パブリッシング機能としてどんな強みがあるのか、PARCO GAMESがどんな作品を求めているかをヒアリングしました。

IGJd:本日はどうぞよろしくお願いします。まずは、PARCO GAMESならではの魅力についてお教えください。
西澤氏:よろしくお願いいたします。PARCO GAMESとしてひとつ我々の強みだなと思っているのは、私たちがゲームのパブリッシングはもちろん、出資も含めて積極的に開発支援をやっていくパブリッシャーになろうとしている点です。マーケティング、QAといった基本機能ももちろん提供しますが、加えてイベントや展覧会など、オフラインでのゲームファンとのタッチポイントを自社で作れるパブリッシャーになっていきたいと思っています。
グッズのマーチャンダイズも元々私たちの会社で実績があるので、その強みを生かして積極的に提案を行い開発から販売までをワンストップで支援できるパブリッシャーでありたいと考えています。
IGJd:QAやマーケティングも内部のチームで実施されているのでしょうか。
西澤氏:はい、QAやマーケティングは内部でやっています。PARCO GAMESのチームにはゲーム業界出身のメンバーもおります。ローカライズなどは一部外注も行っていますが、私たちメンバーの目線でも見てダブルチェックをして、品質を上げる形でやっています。
IGJd:Steamや家庭用プラットフォームにゲームを出すということは、自社プラットフォームではない場所に作品を出すということです。パルコ様の業態で例えるなら、他社のデパートの店舗に出店して、販促やマーケティングをこれまでと違って自由にできないようなイメージです。これについてはいかがでしょうか。
西澤氏:おっしゃる通りで、まずは自分たちで勉強しないといけないことが多いと思っています。事業をやりながら気づくことや、新しく学ぶべきことが次々に生まれ、経験と知見の蓄積が必要だと感じています。現時点ではSteamでのリリースがメインですが、パブリッシャーとしての準備は着実に進めています。今後は、必要に応じて外部企業の経験豊富な方々のご意見も柔軟に取り入れ、その知恵を自分たちなりに咀嚼しながら体制を整えていく考えです。
家庭用ゲーム機での展開についても、同じように準備をしっかりやっていきます。先ほどゲーム業界の人間が入ったとお伝えしましたが、専門性のあるところもクオリティを上げて仕上げていきたいという途中です。実は、『The Berlin Apartment』については家庭用ゲーム機の準備はすでにしてあります。そのほかのタイトルについても、順次発表できるよう準備を進めています。
IGJd:PARCO GAMESのプレスリリースには、他のパブリッシャー様が「応援の声」を寄せていたのが印象的でした。PARCO GAMESはグッズやショップについては他のパブリッシャー様とのコラボ開催の実績をお持ちですよね。
西澤氏:リリースでコメントをいただいた皆様は、すでにイベントやECショップでご一緒した方々です。私たちもパブリッシャーとして参入しましたが、今後も一緒にビジネスをさせていただく仲間としてフラットに付き合っていきたいと考えています。競合ではなく、ゲーム産業を盛り上げていくという目線で一緒に走っていけるようになりたい、と思っています。「ヨカゼ」レーベルについては公式ECショップを立ち上げましたが、今後はこうした活動もPARCO GAMESとしてやっていきます。

2024年8月に開催された「ヨカゼの公園」
IGJd:パブリッシングするゲームについては、日本のインディーゲームスタジオRexLaboの作品『南極計画』と契約し、東京ゲームショウ2025でも展示を行いました。開発チームに対して技術的な支援や最適化などは外部企業と協力して実施していく形でしょうか。
西澤氏:まさにそのあたりをチームで話しているところで、家庭用ゲーム機向けのリリースにおける調整については、まずはチームメンバーの目線で提案します。テクニカルなところを実際にやっていくためには外部のパートナーが必要なので、そこまでセットで、開発チームの意見を聞きながらどこまでやるべきか、意義はあるのかということを確認しながら実施しています。技術面の支援についても、今後私たちが強みとして磨いていくべき重要なスキルだと思っています。
IGJd:今回発表の3タイトル以外にも、契約交渉中や発表前のスタジオもあるかと思いますが、今後はどのくらいの新規のタイトルを展開していきたいか、見通しはありますか?
西澤氏:私たちはPARCO GAMESを始めるにあたって、具体的な契約数の目標を定めていません。私たちがパブリッシングしていきたいタイトルは、今回の3作品が示しているように、物語やストーリー性、ゲームそれぞれの特徴ある世界観による価値や魅力を持つゲームです。私たちの目線からも、ゲームと開発者との思いがすごくリンクしているものについてひとつひとつ向き合いたいと思っています。それには、まず開発者さんたちとの出会いをしっかりやっていきたい。そこから最終的にパブリッシャーとしての契約になればとは思っていますが、「今期は何タイトル出そう」というような数値的な目標は定めていません。


RexLabo『南極計画』。本作はiGi indie Game incubatorの第一期卒業作品でもあります。
IGJd:これから多くのゲーム開発者からパブリッシングの相談があるかと思います。開発者から問い合わせをするときは、どんな情報があると良いでしょうか?
西澤氏:私たちとコミュニケーションを取りたいと思ってくださるインディーゲーム開発者の皆様からは、そのゲーム作品を作るに至った想いや背景、バックボーンをぜひ聞きたいです。なぜそこに至ったのか、アイディアの源泉って何だろうか、という点に興味があります。たとえば、もともと映画が好きで…とか、こういう考え方の癖があってこのゲームに行きついています…ですとか。そういうところをまず知りたいです。そして、ゲームのどこに想いの「濃さ」が詰まっているのか。ゲームシステムに反映されているなど、ぜひそういったところを知りたいです。情報をいただきながら意見交換がしたいですね。
加えて、私たちのチームはまずゲームを触ってみたいので、デモがプレイできるような形で送ってほしいです。提案に向かうためには必要なステップです。その2点がもらえると嬉しいと思っています。
IGJd:今後について、アワード・コンテストの実施、開発拠点の提供などなど、「こんなことがしたい」という展望はありますか。
西澤氏:まず現状は「パブリッシングをやるんだ」ということが発信できた段階だと思っています。冒頭申し上げたように私たちはワンストップで総合的にゲーム事業を提供したいと思っています。パブリッシングを起点に、マーチャンダイジングやイベント、さらにはPARCO店舗での展開を含めた全体像を、toCにもtoBにもプレゼンテーションしていきたいです。それの具体的なやり方がアワードなのか、イベントがいいのかなどは検討中です。たとえば、私たちはGAME CULTURE FESというイベントもやりましたが、その中にはゲームをテーマにアパレルや飲食の要素も盛り込みました。ゲームに関することを総合的に展開していきたい。この姿勢に共感するクリエイターさんとの接点を作っていきたいと思っています。
IGJd:IndieGamesJp.devをご覧いただいているインディーゲーム開発者向けにアピールがあればお願いします。
私たちはゲームレーベル「PARCO GAMES」を発表させていただいたばかりで、まだまだ新参者です。そのため、私たちがどのように何を目指しているかというのは積極的に発信していかなければと思っています。私たちは「ゲームのために何ができるか」というコンセプトを掲げています。これをもう少しかみ砕くと、ゲームが持っている魅力や、未来への可能性を一緒に広げていきたいということです。今回インタビューでお話した内容に興味や共感を持っていただけるゲーム開発者の方がいらっしゃれば、ぜひお話できると嬉しいと思っています。
IGJd:ありがとうございました。
PARCO GAMESは公式サイトのフォームからゲーム作品のパブリッシング相談を受け付けています。自分の作品を紹介したい方は、ぜひ連絡をしてみてはいかがでしょうか。