「ヨカゼ」が提案する新たなインディーゲームのブランディングとは。担当者に聞く、設立の意図と展望
ヨカゼは「世界に浸れるゲーム」をあつめたレーベル
——「世界に浸れるような体験を持つゲーム」とは、どんなものをイメージしていますか。
hako : “世界に浸れるような体験”というのは、ゲーム内の世界が、まさにそこに存在していて、ゲームを起動するたびに、その世界に入り浸れるような体験をイメージしています。ゲーム内の世界の存在感は、グラフック・音楽・エフェクト・お話・テキストの端々・世界設定など、全ての要素が織り合わさって生まれます。ヨカゼのゲームの共通点はそういった「世界体験そのものの楽しさ」にあります。
ゲームの面白さというと第一に”ゲーム性”が求められることがおおいですが、”ゲーム性”に関しては各々の開発者が信じるべきところに任せています。
例えば、アンリアルライフは謎解きアドベンチャーで、果てのマキナはなかなかの骨太アクションです。一方、ghostpiaは「デンシ・グラフィックノベル」と名乗る通り、ゲーム性の一切を取り除いて、グラフィックノベルとして一本道の体験を提供します。From_.も現バージョンではシンプルな一本道のシナリオです。ですが、この後者二つのタイトルは、「世界を体験する楽しさ」に特化しているので、きちんと「面白い」のです。もちろん、アンリアルライフと果てのマキナも「世界を体験する楽しさ」をたくさん持っています。
と、言語化しつつも…、ヨカゼはさらに「世界の美しさ」や「世界体験が近そうなもの」を直感で集めている部分が多いのです。そのほうが、ユーザーさんも直感的にヨカゼのタイトルを辿ってくれるんじゃないかなあと思ってます。
——ヨカゼに参加したいと考えているクリエイターは、どのように連絡するとよいですか?
hako : 基本的にはこちらから声をかけると思いますが、ヨカゼに参加してもいい!と名言している開発者は見つけやすくなるので、たすかります。(どこからか見ていますので。。)
ちなみに、すでにリリースしているタイトルでもお誘いしたいなあと考えています。
——他の団体がレーベルを立ち上げたらどう思いますか?たとえば「ポストアポカリプスゲームレーベル」「シューティングゲームレーベル」などが出てきたら楽しいですね。
hako : とても良いと思います!というか、是非やってほしいですねえ。例えば、「ローポリのゲームに限定したレーベル」とか「おバカゲーが集まったレーベル」とか「実況向けのパーティーゲームのゲームレーベル」とか何のくくりでも良いと思います。僕自身、次回作以降が「ヨカゼ」に所属するとは限らないですし、そうなったらまたその雰囲気に合ったレーベルを作ったり誘ったりすると思います。
——「ローポリレーベル」は個人的に興奮します。いいですね。
hako :レーベルの主な機能は「集まって、同じ団体名を名乗ること」だけです。それって極端な話、ウェブサイトを1枚つくってリンク集にするだけでも成り立つんです。むしろ大風呂敷を広げる必要はないと思ってます。インディーゲーム開発は長い年月を必要とするものも多いですから、なるべくパワーを使わないモデルであるべきじゃないかなあと。だから気軽に集まってみて欲しいですね。
もし、今後レーベルがある程度増えてきたなら、レーベルを検索できるサイトを設立して、タイトルからレーベルおよび関連性の強い作品を逆引きする仕組みがあるとなおよいですね。
——最後に、このサイトを見ている日本のインディクリエイターに向けて、ひとことお願いします。
hako : 僕自身も個人ゲーム開発者として自分の作品を作っています。ですが、いざ作品を出すとなるとどんなに宣伝しても、そこには個人の限界があります。
でも、そういった個人が集まれば個人以上のパワーを発揮することができるはずです。大きな広告企業にハンドリングされることもありません。レーベルという試みは非常にシンプルですので、ぜひ検討してみてください。
木村:「レーベル」という仕組みは非常に理にかなってますし、シンプルで持続可能な仕組みだと思っています。是非お気軽にお声がけしてくださいね。
——今後の意気込み、または告知等があればお願いします。
hako : ヨカゼは今後もユーザーさんに向けて素敵なタイトルを取り揃えて飾っていけたらなあと思います。あくまで現実的に、できる範囲で気長にやっていく予定です。僕自身はあくまでいちゲーム開発者ですからね。まずはアンリアルライフをよろしくお願いします…!
木村:ヨカゼのタイトルは現在は4つを告知させて頂いてますが、少しずつ増やしていきたいですね。オンラインイベントなどもこれから開催されていくと思いますが、room6としては積極的に参加してヨカゼのことをお話したりしていきたいです。まずは「ヨカゼ」第一弾の「アンリアルライフ」。こちらは本当に「ヨカゼ」の雰囲気や空気感を体現したゲームだと思っていますので、ぜひ遊んでみてくださいね。
——ありがとうございました。
日本のインディーに新たな風を吹き込む「ヨカゼ」
まずは、タイトル発売前の忙しい時期に、6000字のロングインタビューに答えていただいたhako生活氏と木村氏に感謝します。発表直後、気鋭のクリエイターが集うこのレーベルの話をいち早く聞きたいという気持ちで打診したところ、快く受けてくださりました。インタビューをご覧の皆様は、「ヨカゼ」の展望がクリアになったかと思います。
さて、国産のインディーゲームが台頭し、家庭用ゲーム機に展開する事例は珍しくなくなりました。そうした中でパブリッシャーによるマーケティングにおいて、複数のタイトルを並列に打ち出したブランディングが、インディーゲームの特性上うまく機能してこなかったように感じています。「豊富なラインナップ」もまた、営利企業としてやらなくてはならないからです。
ゲームの「雰囲気」はなかなか言語化できないものですが、作家性というものはどうやらあると考えています。ヨカゼは一度パブリッシングの実務とブランディング部分を分離することで、パブリッシャーが抱えるジレンマから解き放たれ、濃いファンコミュニティーの生成が期待できます。
ヨカゼに所属する作家陣がどんな作品を世に送り出すのか。非常に楽しみです。
ヨカゼ 公式サイト:
「アンリアルライフ」Nintendo Switch販売サイト