国土交通省が公式に公開した東京23区の3Ⅾモデルプロジェクト「PLATEAU VIEW」。商用利用も可能なモデルは、果たしてゲームにどう使えるのか?
国土交通省が東京23区の3Ⅾモデルを無償で提供するプロジェクト「PLATEAU VIEW」が公開されました。都市のモデルはこちらから配布されています。
このプロジェクトは3D都市モデルを一般に提供することで、まちづくりの実現を目指す目的で行われた、とのことです。
主にARやVRでの空間コンテンツへの利用などが期待されているほか、「ゲーミフィケーションを通じた地域の魅力発信」という利用例も公開されているため、本モデルはビデオゲームでの活用も考えられていると見ていいでしょう。
では、本モデルは実際にはどのように使用できるのでしょうか? 今回記事は、現在までにわかっている情報をまとめたものになります。
ゲームへの実装はどれだけ有効だろうか?
本モデルの発表以降、少なくないクリエイターが試験的にゲームエンジンへの搭載を試みている反応が見受けられます。Unityを利用した実装の事例や、アンリアルエンジンを利用し、Twinmotionでテスト的に映像を制作している例などが見受けられます。
主に遠景としての魅力は確かでしょう。簡単に実装したクリエイターの事例を見ても、都市の景観をリアルに感じさせる演出が多々、見受けられます。
いまのところ、どれだけビデオゲームに利用可能なのでしょうか? 3Ⅾモデルに関して、モデリングはシンプルであり、テクスチャーの質は荒く、またテクスチャーが実装されているのも都市の一部に限られており、多くの地域はメッシュデータとして提供されています。そのため、リアルな空間にいち市民として没入して……というのに若干の難点があります。
これは本プロジェクトが、現実の都市と対応した統計やシミュレーション利用を考えたデジタルデータと作られていることが大きく、ビデオゲームでリアルな3Ⅾ空間そのものをゲームプレイする目的とはいささか違っているのもあるでしょう。
また本モデルを利用してビデオゲームを作りこんだとして、提供したいゲームプレイを生かす形に合わせて空間作りを行う、いわゆるレベルデザインの必要が出てくるでしょう。そのときリアルな街の縮尺そのままの場合をりようしてしまうと、ゲームプレイが冗長になる可能性もあるでしょう。たとえば「龍が如く」シリーズなどはリアルな都市モデルが印象深いタイトルですが、最終的にゲームプレイしやすいよう、建物や道の長さなどかなりの調整がかけられているそうです。
現実の都市モデルを利用できるアセットの先行事例に、たとえばUnity で利用できる「ZENRIN City Asset Series」があります。こちらは最初からビデオゲームへの活用が想定されたモデルとなっており、「都市の住人としてアクションやレースをする」といったゲーム制作へとすぐに生かしやすい作りであるの比べると、PLATEAU VIEWは作りたいゲームのジャンルによっては、3Ⅾモデルのアレンジがもう少し必要になるのではないでしょうか。
現在のモデルの仕様や、実装したクリエイターの反応を見る限り、現在のPLATEAU VIEWは都市の遠景を表現することに優れており、都市の住人としてアクションしたりするようなタイプのゲーム利用は、他の都市アセットや建造物アセットと比べてアドバンテージは大きくないと思われます。
モデル自体は商用利用が可能。しかし、実際の建物の権利問題への注意も
一方、本モデル自体が商用利用が可能だと明言していても、モデルに掲載されている建造物の権利関係に関して注意が必要との指摘もあります。
西田宗千佳氏はImpress Watchの連載にて、「外観などについて、地権者が権利を主張する建物の扱い」について指摘。例としてスカイツリーを挙げ、「建築物が自然な風景の中にあるなら、写真で遠景に写るのと同じだろうが、「主役」になるような映像を作る場合には権利上の問題が発生するかもしれない」と考察しています。
こうした指摘に関してはPLATEAU VIEWも自覚しており、「建物のテクスチャや許諾に関する整理といった課題についても今後対応」とも説明しています。今後のアップデートによってクリエイターが作りたいゲームに合わせた3Ⅾモデルのスタイルにも繋がっていくかもしれません。
PLATEAU VIEWでは今後、全国各地の都市モデルが追加されていくことが発表されています。いずれにせよ、まだ本プロジェクトはスタートしたばかり。ビデオゲームでの活用事例を公式にフィードバックできれば、もしかしたらモデルの質にも影響があるかもしれません。今後も注目すべきプロジェクトだと言えるでしょう。