インディーゲーム展示会「TOKYO SANDBOX 2022」レポート。賞金つきコンテストや、新たなマーケティングサポート企業が登場

2022年4月23日(土)24日(日)にベルサール秋葉原2Fにて「TOKYO SANDBOX2022」が開催されました。

Tokyo Sandboxは、2015年に「東京インディーゲームフェス」としてスタートしたインディゲーム展示イベントです。後に名称を「TOKYO SANDBOX」にリニューアルし、ここ2年はコロナ影響で中止していましたが、久々の再開となりました。

小規模ながらも熱気のある会場

他のインディーイベントと比較して、海外発の作品の展示や海外から日本にやってきた開発者の参加が多い印象です。ただし、感染症の影響下で、今回のイベントに合わせて来日した方はおそらく少なく、日本在住の方が圧倒的に多かったと感じています。

イベント会場は、ベルサール(秋葉原電気街口の金色のビル)の1室を使用したもので、出展者数は50組程度。その多くはスポンサーやパブリッシャーとして複数タイトルを展示するもので、チーム個別として出展している数は少ないように思いました。

スポンサーブースはGoogle Playがディスプレイとチラシを置いた無人タイプで展開。近くでは架け橋ゲームズと、Ukiyo Studiosが複数の海外タイトルを展示していました。

近年日本のインディーシーンで発展めざましい、インディー向けのコミュニティインキュベーションプログラムに関わりのあるタイトルも多数展示されていました。

インディーゲームタイトルへの資金とパブリッシングを提供する講談社ゲームクリエイターズラボが支援しているタイトルとして「FAMILY BATTLE タッグアリーナ」、「十三月のふたり姫」、ところにょり氏による「違う冬のぼくら」の3タイトルが並んで出展。

インディーゲーム開発者向けインキュベーションプログラムiGi indie Game incubatorからは、1期生の「Ninja Or Die」、4月に始まったばかりの2期生として「SONOKUNI」の2タイトル。

インディーゲーム開発者コミュニティasobuは、asobuが主体となってブースを設置し、コミュニティから「さかだちの街」「TEST RE (Quiet Mansion1 スペシャルティザー)」「1f y0u’re a gh0st ca11 me here!」「Grappin」の4タイトルを展示していました。

また、残念ながらあまり目立ってはいませんでしたが、ゲームの決済サービスを提供しているXsollaによる、最優秀賞金90万円のコンテストが実施されました。この賞金は、ゲームの売上から返すタイプの支援と異なり文字通り提供される賞金です。日本では珍しいタイプのコンテストであり、こうした自由に使えるお金が得られる機会はもっと必要だと感じました。

ひとつイベントとして気になったのは、会場内の順路がはっきり決められていなかったことでした。設置されたテーブルのどちら側を向いて試遊スペースを組むかが出展者の自由だったようで、順路だと思っていたのに、突然背中を向けたブースがあったりしました。このせいで移動がしづらい場面もあり、主催側で統一して欲しい部分だと考えます。

会場と出展者それぞれの感染症対策

新型コロナウイルス感染症対策については、新規感染者の減少傾向とはいえしっかり行われていました。

会場内は食事禁止となっており、チケットはPeatixで購入・照会することで非接触化と来場者の氏名が管理されていました。また、出展者に対してはフェイスプレートの配布もあったようです。

各ブースでの対応としては、除菌シート、アルコールスプレー、ハンドジェルなどを用意していました。これは、事前に参加要項として会場から通知されているものです。透明シートやアクリル板での仕切りのような、大掛かりなものを用意しているブースは今回はありませんでした。

限られたスペースを活用する各ブースの見せ方

本イベントではイスを用意しているブースが多かったため、高い位置に画面を設置しているのは少なめの印象でした。個人的には立ったまま試遊してもらう場合は棚やモニターアームは可能な限り準備したほうがよいと考えます。テーブル直置きでは目線が下になりプレイしにくいですし、移動中の人にも目に止まりにくいです。

ある出展者さんの例では、開発に使っているデスクトップPCをそのまま持ってきて展示していました。いつもの開発環境であればデモのバグといったトラブルに強くなりそうです。もちろん、マシンの破損や盗難といったトラブルや、提供電源による制限などには注意が必要です。

こちらは株式会社ダイダロスのブース。同社の作品はホラーゲームということで、大きめの板でグルッと囲み、黒い布で覆うことで物々しさを演出。作品の雰囲気にマッチしていました。

こちらのブースは法人としての出展ですが、メインの開発業務とは別に社内の小規模プロジェクトといった形で新たに挑戦したタイトルとのこと。ゲーム業界では、こうしたチャレンジが広まりつつあります。

こちらはゲーム開発者コミュニティのasobuのブース。4作品を1ブースで展示するために作られたもので、A4のクリアブックに説明書を挟むスタイルで展示していました。順番待ちをしている人にファイルを渡して見てもらうことができます。また、解説の英語翻訳版を入れたり、デモゲームには入れにくいストーリーなどの詳細情報をいれるなど、色々と応用ができそうなやり方です。

ちなみに、asobu運営のアンさんによると、イベントに展示するデモについては、「ゲーム起動時に説明もロゴも挟まず、ボタンを押したら即遊べる状態にしておくのがベスト」と教えてくれました。

ゲームのマーケティングに特化したサービスを提供する「Ukiyo Studios」

今回はじめて展示を行った会社として、「Ukiyo Studios」が複数のタイトルを並べていました。話を聞くと、同社はインディーゲーム開発者に対して、パブリッシングサービスを提供せず、それ以外の展示サポートやローカライズを提供する会社とのことです。

既存のパブリッシャーのサービスのように包括的なものではなく、ローカライズ、コミュニティマネジメント(ユーザーコミュニティSNSなどの管理)、イベント代理出展などのサービスを個別に提供。Steamなどストアへのパブリッシングは開発者本人か、別パブリッシャーが担当するスタイルです。リソースが不足しがちなマーケティング分野に特化してサービスを受けられ、開発者としては選択肢が広がる非常にユニークなサービスです。

このサービスは日本の開発者向けにも展開していくとのことで、Ukiyo Studiosについては後日詳しいインタビュー記事を掲載する予定です。

現地開催の強みをあらためて実感した2日間

久しぶりに表舞台にでた開発者もいました。「JumpGun」の開発者が新たに「SUNDAY CREATE」を結成し、新作「ギタバタ! (仮)」を展示。また、前述のようにところにょり氏も「違う冬のぼくら」で久々の作品展示となりました。

イベント会場では、開発者同士の情報交換も盛んに行われていたようで、私は某作者さんの未公開作品の映像を見せてもらう場面がありました。こういった裏話のような出来事は、対面である展示会ならではの楽しさです。

反面、どうしてもコロナ禍の影響下では海外からの来場者は限定的であり、海外向けアピールの場としての意義は大きくはありませんでした。

会場全体の雰囲気として、一般の来場者も多く盛況であり、関係者の期待値やイベントの重要性は、コロナ禍以前に戻りつつあるといえるでしょう。

今年は例年通りのBitSummit、TGSなどに加え「Indie Games Connect 2022」「東京ゲームダンジョン」など新しいイベントも開催されます。それぞれ特色がありますので、自身の作品や目的に合ったイベントがあれば、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

Tokyo Sandbox公式サイトはこちら

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