2人で効率的にゲームを作るには?インディーゲーム「くちなしアンプル」「マヨナカ・ガラン」制作事例 | UNREAL FEST EXTREME 2022 SUMMER

3Dノベルゲーム『マヨナカ・ガラン』の開発と課題

ノベルゲームの開発と言うと、一般的にUE4を使うイメージはあまり無いのではないでしょうか。どちらかと言えば、Unityやティラノスクリプト、昔からある吉里吉里などのエンジンを使うディベロッパーが多いかと思います。

では、なぜCAVYHOUSEではUE4を使って開発を行ったのでしょうか?これについて善乃さんは次のように語ります。

  • 『マヨナカ・ガラン』はノベルゲームにも挑戦したいと考えて作った作品です
  • ノベルゲームを構成する要素の中で、遊んでいて特に嬉しいのは一枚絵だと思います。情報量も多くテキストを補完してくれる要素として重要です。
  • しかし、ゲームの報酬として機能するようなクオリティの一枚絵を大量に描くのはとても大変です。
  • 一枚絵を描かない方法を考えて、たどり着いた結論は全編3Dのフルアニメーションでした。
  • 3Dで作ればVRにも対応できるし一石二鳥。という経緯でUEを使うことにしました。

このクオリティの一枚絵を量産するのは大変!
この決断が後に課題にもなります。

ノベルゲーム開発において、一枚絵の量産は時間と人手が必要になるため、CAVYHOUSEでは全編3Dのフルアニメーションでノベルゲームを開発するという手法を選択。UE4での開発が始まります。シナリオはy0sさんが担当し、善乃さんはシステムと演出に注力。労力の大半を演出に注ぎこみました。

『マヨナカ・ガラン』は隠れキリシタンが村起こしをする物語です。そんな本作のデザインについて、童話のようなグラフィックがマッチするだろうと考えた善乃さんは、非リアルな、情報量を落としたマテリアルを採用。シャドウを描画せずのっぺりとした質感を演出しています。ただ、単色ではシンプルすぎるため、低い部分を暗くし擬似的な影をつけるなど工夫を凝らしています。

それらに加えて、テクスチャを画面に固定した特殊なマテリアルを使用しています。このテクスチャは描きこみの多いものになっており、村人の動きに合わせてテクスチャが表示されて画面に変化をもたらしています。また、非現実感が出ているのではないかと善乃さんは言います。

一方で、情報量を落としたマテリアルでは、細部がつぶれてしまう問題もありました。そのため、狙った効果を出せるようにモデルは全て自作しているとのことでした。

村人が崇める観音像。白とベージュで描き、不気味で神々しくなっています。

その他、モブキャラの表現についても工夫が凝らされています。

  • モブの村人たちはモデルもモーションも全て共通のものを使って、額のてぬぐいのテクスチャだけが異なるようにしています
  • 『マヨナカ・ガラン』の村人たちは、お人好しで協力的で排他的なところがまったくない人たちです。
  • 外からやってきた主人公に郷土料理を振舞ったり、情報を提供してくれたり、一緒に遊んだりするシーンもあります。
  • しかし、村人たちの心の根底にある特殊な信仰は主人公たちと分かり合うことができない。という読み手からするとちょっと寂しさを感じるような設定になっています。
残酷でいいじゃない…?

このような村人の表現を以下のように行っています。

  • そんな村人たちの設定を活かすため、村人の顔を完全に影にすることで彼らの抱えるギャップを表現しています。
  • この表現のおかげで作業時間の短縮にもなりました。

マテリアルエディアの様子

HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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