【CEDEC 2023】初見殺しは全体責任。350万本を達成した個人開発ゲーム『PICO PARK』で、プレイヤーの”声”を生み出すために実践した19のこと

日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス、「CEDEC2023」8月23日から開催されました。昨年までオンライン開催を継続していた同イベントですが、今年からハイブリッド開催に変更。現地参加も可能なスタイルに移行しました。

今年はインディーゲームに関連した講演が3件ありました。『メグとばけもの』開発者によるポストモーテム、『QUICAL』開発者による技術講演、そしてこの『PICO PARK』による講演です。

『PICO PARK』開発者の三宅氏は、「協力ゲーム『PICO PARK』でプレイヤーの”声”を生み出すために実践したこと」と題した講演にて、本作のゲームデザインに関する知見の共有を行いました。

三宅氏は、大手ゲーム会社でプログラマとして活躍後独立し、TECOPARK株式会社を創設。ゲームの個人開発を行っています。今回、講演でとりあげる『PICO PARK』は、2023年8月時点でSteamとNintendo Switchの合計販売累計350万本を突破した作品で、サウンドを除く全てを三宅氏一人が開発しました。

『PICO PARK』はプレイヤー同士が協力し合いながら、全員がゴールに到達することでクリアとなる横スクロールアクションパズルゲームです。本作は、シンプルなデザインで直感的プレイができる印象を受けます。

ゲーム内容は、全48ステージが用意された「ワールドモード」、協力スコアアタックモードの「エンドレスモード」、三本先取のミニバトルゲームが楽しめる「バトルモード」が用意されています。「オフライン・オンラインでの協力必須のゲーム」で「大人数でわちゃわちゃ盛り上がる」ことをコンセプトにしています。

本作のコンセプトは「大人数でわちゃわちゃ盛り上がること」でも、「盛り上がる」って何?

しかし、盛り上がるとはどういうことか。盛り上がると作るとは?と三宅氏は問いかけます。これは多くのクリエイターが自問自答する問いかけではないでしょうか。

三宅氏は自身の経験から盛り上がっているゲームは「声が良く出ているゲーム」であると定義し、「プレイヤーが自然と”声”を発しプレイヤー間で会話が生まれるゲーム」と定め、”声”によって盛り上がることにこだわってゲーム開発を進めたとのことです。そして、このこだわりこそが、350万本のヒットの要因だと考えていると述べました。

『PICO PARK』は会話が盛り上がるゲームなので、ゲーム実況者の配信時にも会話が盛り上がり、視聴者が友達と遊んだ時にも会話がもりあがるという連鎖が生まれ、ある意味それが本タイトルでは上手く行きすぎたと三宅氏は分析しているようです。

そして、三宅氏は自身の経験を19個に分類しました。なお、『PICO PARK』はプレイヤー全員が同じ画面を見る「全員同一画面共有」のゲームで、全プレイヤーが同じ画面を見るため、前提として画面上で起きたことについて会話がしやすい設計となっていると三宅氏はしています。

プレイヤーはお互いにコリジョンを持っており干渉し合うため、「どいてほしい」や「離してほしい」などの会話が生まれます。これらの干渉による行動制限は『PICO PARK』の仕様でもありますが、会話を生むようになっていると三宅氏は狙いを語りました。

『PICO PARK』では、プレイヤー全体に行動制限が生まれるようなステージが用意されていて、誰かひとりでも動くとゲージが減少してゲームオーバーになるステージや、信号機が配置され赤の時に動くとゲームオーバーになるのステージなどがあり、プレイヤー同士が声を掛け合う構成になっていると三宅氏はいいます。これによって、プレイヤー全体での会話が生まれやすくなるとのことでした。

低リスクな障害物(落ちても死なない穴)を置いたステージがあり、落ちても復活できる仕組みになっています。

ここでは、三宅氏は誰かが穴に落ちたという事実が重要であると語り、誰かが落ちると、軽い「ミスいじり」や「ごめんごめん」といった軽い謝罪という会話が生まれるとしています。そして、この低リスクな障害物を多くのステージに配置し会話を生み出しやすくしているようです

協力ゲームをプレイすると、中には悪ふざけをするプレイヤーもいると三宅氏は考えており、悪ふざけをするプレイヤーのアクションによってツッコミのような会話が生まれるように設計したステージもあるようです。

例として、青いプレイヤーが橋をかけておいて、赤いプレイヤーがわたっている時に、橋を消してしまうなどのちょっとした悪ふざけができるようなステージが用意されています。

三宅氏は、プレイヤーの性格を分析し悪ふざけをするプレイヤーと声を出して盛り上がるゲーム設計をうまく組み合わせているのではないでしょうか。

三宅氏はゴール手前にちょっとした要素を用意したステージも制作しています。一例を挙げるとステージの最初からやり直すボタンや、画面を右から左にボールが飛ぶギミックがあり、悪ふざけをするプレイヤーがボタンを押そうとしたり、ボールを飛び越えて遊んだりできるようにし、他のプレイヤーからツッコミが出るようにしているそうです。

後はゴールするだけという場所に、悪ふざけのできる場所を作り、会話が生まれる余白を作った例でした。

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HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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