【CEDEC 2023】初見殺しは全体責任。350万本を達成した個人開発ゲーム『PICO PARK』で、プレイヤーの”声”を生み出すために実践した19のこと
『PICO PARK』には初見殺しステージも用意されていますが、初見殺しも誰かひとりが引っかかるようにはしなかったと三宅氏は言います。
それは、初見殺しもみんなで引っかかると笑いになるからだとしており、初見殺しという不の感情も共感すれば笑いになるんじゃないかと考えたからだとのことでした。
これは仕様を考える時の考え方だと、三宅氏は前置きしスライドを使って説明しました。スライドには、ゴールより大きなキャラがいるステージが表示されていて、ボタンを押すとキャラが小さくなるというギミックが用意されています。
一見大きなキャラのままではゴールに入れないのでは?と思わせて実は入れるといったステージにした理由として、三宅氏はキャラが大きなままゴールできてもいいのか?と考えた結果、入れるようにして「入れるんかい!」とツッコミが生まれた方がいいと判断したとのことです。
パズル要素も豊かな『PICO PARK』では、一点もののステージをたくさん用意し、プレイヤーに「なんだこれ?」「どうしよう?」と会話が生まれるいうステージを用意し、プレイヤー同士での会話を生み出すように設計したそうです。
アクションパズルゲームの中には、ステージをクリアすると自動的に次のステージに進むようになっているゲームもありますが、『PICO PARK』は意図的にステージ選択画面に戻していると三宅氏は言います。
その理由はステージ選択画面に戻ることで、ステージ選択をしながら達成感の共有や感想の共有をして会話が生まれるように考えたからだといい、また長いステージも作っていないと言います。これも、達成感の共有や感想の共有をしてもらうためだとのことでした。
ビジュアルは声を上げる要素だと考えた三宅氏。キャラクターデザインもカラフルなキャラが一生懸命がんばる姿に共感し、かわいいと言ってもらえるように設計。
結果としては、かわいいとの感想がもらえ、プライズ機の景品にもなって多くの人に愛されるようになったとのことでした。
19の理由を挙げた三宅氏は、声を意識して仕様を考えることが大事だと、これまでの説明を振り返り、マルチプレイのゲームで、どんな会話、どんな悲鳴、どんなツッコミが上がるかを考え、ゲームを通して生まれる会話を考えてほしいと本公演を締めくくりました。
講演のおまけとして、三宅氏は協力型ゲームにおける「奉行問題」についても触れています。「奉行問題」とは、協力型のゲームでゲームを仕切る人が現れて「ああしろこうしろ」と他のプレイヤーに指図をし、指図された人が面白くなくなってしまう問題のことですが、『PICO PARK』は「奉行問題」を回避できているのではないかと感じてるそうです。それはリアルタイム性が高いため、指図をしづらいことや指図をしてもクリアできないようになっているからではないかと感じているとのことでした。
また、Q&Aでは、『PICO PARK』開発のきっかけとなったゲームは?との質問にセガサターンの『ボンバーマン』を挙げ、10人同時プレイだとスタート時に「俺何処にいるんだ?」という声が上がるのが面白かったことや、『ゼルダの伝説 4つのつるぎ+』で協力ゲームの楽しさに気付いたことがきっかけとなったこと、マーケティングについてはあまり考えずみんなでわちゃわちゃ盛り上がるゲームを作ろうと考えたこと、イベントに出展したり、カフェやバーに置いたりしてテストプレイをし、メモを取りながら開発を進めたこと、データはあまり取らず、実況などを見て人の反応を参考にしたことなどを回答していました。
最初はオンライン対応をしていなかった本作ですが、コロナ禍の中で『Among US』の実況が盛り上がっていたのを見て実装したそうです。
また、三宅氏は普段から人の反応を見ることが好きで、自身の経験則も多く取りいれたそうで、実は自身が「ふざけるユーザー」だったことからふざけるユーザーはどういうことをするかも考えたそうです。
非常に示唆に富んだ内容の本公演。多くのゲームクリエイターの参考になるのではないでしょうか。