まさに決定版。UEを余すことなく網羅した「UE5で極めるゲーム開発」ミニレビュー

アンリアルエンジンは今や非常に多くの機能を持ち、ゲームにも、ノンゲーム分野にも広く使われる開発基盤となっています。その反面、機能の多さゆえにすべてを把握することが少々難しく、多くの知識と経験が必要になります。また、バージョンアップのたびに新しい機能が追加されるため、常に知識のアップデートも求められます。

かつて、UE4の多くの要素をカバーし必携と言われた参考書「Unreal Engine 4 で極めるゲーム開発」。
その新版が、「Unreal Engine 5で極めるゲーム開発」として、大幅にパワーアップして帰ってきました。

学習への導線

本書では初心者向けの情報から始まり、ランチャーのインストールから始める手順が書かれています。つまり、この本と十分なスペックを持つPCがあれば誰でもすぐに開発が始められる土壌が整います。
また、冒頭ではゲーム開発の概念を楽しんで学べる施策もあります。分厚い本書ではありますが、その敷居は低く気軽に学習を始められるのが嬉しいところです。

また、3Dゲームの製作には、空間上を計算するために「オイラー」や「ジンバルロック」などの理解が必要になることがあります。これらは数学の範疇ですが、初めて3Dシーンを触る方にはかなりややこしいものです。こういった概念も図や例を交えて紹介してくれています。

私(この記事の筆者)は3Dゲーム開発を数年間行っていますが、恥ずかしながらここで初めて理解したものもあります。

さらに深く理解したい方のために、計算系ブループリントノードのはたらきもひとつひとつ解説されています。これにより、実装に対する理解が深まり、リファクタリングも容易になります。ビジュアルスクリプトであるブループリントの書き方や処理の効率化、デバッグ方法も収録されています。ただ処理を作るだけでなく、効率的に、安全に処理を設計する考え方も身につくので、非常に実用的です。

ゲームを動かす楽しみに始まり、理解の深まったゲーム製作へのレベルアップを促し、負荷軽減、安定性といった仕上げも身につくまでの流れが体験できるよう設計されていると感じました。

分野とレベルの視覚化

本書のトピックの頭には、「どの専門職のどのレベルで求められる機能か」という指標が、アイコンで視覚的に示されています。
これにより、「UE5全体を使うわけじゃないけどカットシーン制御の分野だけ学びたい」「マテリアル機能の序の口だけは知っておきたい」という場合にも、読むべき場所が分かりやすくなっている印象です。

UE5の最新機能に対応

新版になるにあたって、「Nanite」「Lumen」といった「UE5」で追加された新機能に対応。これらがどういったものか、効果的に使用するにはどうしたらいいかといったノウハウを得ることが可能です。

また、本書の前バージョンである「UE4で極めるゲーム開発」はUE4.7を対象として書かれたもので、そこから徐々に追加されていった機能も少なくありません。エフェクトを包括する新システムである「Niagara」、カットシーンやアニメーションを制御する「Sequencer」といった追加機能も専用の章を設けて解説されています。

既存の「レベルデザイン」などの項目でも、グレーボクシングを使用したモックアップの作成が行程に組み込まれるなど、改修が多々入っています。他にも解説や章の細分化などがされており、より盤石になっていると言えるでしょう。

機能追加に伴う拡張アップデートも用意

すでに本書は十分な量の情報を掲載していますが、さらに「ダウンロードコンテンツ」と称した追加情報も配信されています。これらはUE5のアップデートに対応できるようにWebで随時更新されるとのこと。どんどん更新されるUE5に追いつくための嬉しい要素です。

まとめ

アップデートにより、まさに「決定版」となった本書。これからUE5を学ぶ方はもちろん、既に開発を始めて久しいという方にも新たな学びが得られる一冊となりそうです。

しかし、その情報量の多さゆえに一気に詰め込むのは至難の業です。少しずつ、または自分が対象としている範囲から読み進めることをオススメします。読了した暁には、3Dゲーム開発を「極める」ための力が身につくでしょう!

11月10日(金) 20:00–21:00から、本書の出版を記念したオンライン番組『「Unreal Engine 5で極めるゲーム開発」補完計画!』も配信されます。

今夏に出版した『Unreal Engine 5で極めるゲーム開発』は800頁超のブ厚い本ながら、紙面に収まりきらず、泣く泣く削ったトピックも数多くあります。本講演では、リターゲッティングやライティングの詳細、メッシュペイントの実演など、書籍に収録できなかった機能をアーティストに向けにギュッと詰め込んで紹介、解説します。同書を読んだ方も未見の方も、UE5に興味のある方はぜひお越しください。

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Sig

インディーゲームクリエイター。 UE4を使いPC/PS4向けアクションゲーム「Link: RH」を開発中。ほかにもフリーランスでのソフトウェア開発、バーチャルアバター文化の普及活動など、幅広く手掛ける。 https://www.reminiscedev.com/

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