Microsoft インディーゲーム部門担当マット・スミス氏が自身の開発経験を基にインディーゲーム開発を語る[CEDEC2020]

プロジェクトファイナンシングの難しさ

自分たちの作りたいインディーゲームを作ることと、お金をどのように稼ぎ日々を暮らしていくのかという問題は、インディーゲーム開発者ならだれもが直面する問題ではないでしょうか。マット氏もまた、この問題に直面しましたが彼は対策も講じていました。マット氏は当時を次のように振り返ります。

「我々は『Vane』だけを開発していたので、『Vane』の売り上げを使って次回作を開発する計画だったが、それもできなかった。これは、Friend&Foeの財務のグラフだが、赤の点が収入で、1つのプロジェクトだけでゲーム会社を維持するのは難しいことやプロジェクトファイナンシングの難しさがわかってもらえるだろう」

「プロジェクトファイナンシングに頼るのはマイナス面もある。お金が無くなるまでに売り上げが立たないと終わってしまうということだ。これに対する唯一の方法というのは必要なリソースを把握する。つまり”スコープ”をきちんと把握することだ。投資を得るときピッチもしたが、その時は必要な要素を予測して予算を立て、似たようなシステムやプロセスをベースして予算を編成して、その2倍の額を算出した。2倍というの全ての状況に対応するために安全性のクッションを入れた訳だが、本当はもう一度2倍にすれば良かった。『Vane』のプロジェクトにはあまりにもま実証されてないようなリスクがあったし、仮に4倍にした予算でもパートナーが出せる金額だったと思う。もし、彼らが高すぎるというのであればプライオリティを決めて絞り込むこともできた。それは、自分たちが作ろうと考えていたゲームと違うものになってしまったと思うが、”スコープ”の中にゲームを収めることができ、お金がなくなってしまうとということも避けられたと思う」

当時の財務グラフ。金額や時期は伏せられている。

「インディーゲームビジネスを行う上で二つのことやらなくてはいけない。クリエイティブな作品のリスクを取ることだ。インスピレーションが自分でも沸き上がるようなもの、開発している自分が惚れ込むものを作らなくてはいけない。ゲームをただお金のために開発することはインディゲームでやるべきことではないと思っている。インディーゲームはクリエイティブ上での自由さを目指しているからだ。その一方で会社として生存できるような形でビジネスを組み立てないといけない。この二つの役割を同時にこなす必要がある」

なぜ継続して開発する必要があるのか、どうやって会社を継続するのか

インディーゲームを作ることと、ビジネスとしてゲーム会社を存続させることが必要であると説くマット氏。冒頭に述べたゲームを次のゲームも、その次のゲームも開発できるような環境を整えることの大切さを語り、また、Friend&Foe社を存続させるためにできたことをいくつか挙げています。

「ビジネス上の失敗は起こるものだ。この失敗は神からの贈り物ともいえる。失敗から学んで、次のゲームに活かすことができるからだ。スキルセットや知識にどんなものが必要なのかを失敗から学ぶことができる。そして次の成功につなぐことができる。『アングリーバード』はその例といえるだろう。では、開発したゲームが空振りに終わったとしても会社を続けられるようにするにはどうしたらいいのか。これは次のプロジェクトを現在のプロジェクト進行中に行わなくてはいけないということだ。もし次のタイトルが『Vane』リリース前にディールできていたらどうだっただろう。『Vane』以外の収入ができるから次のタイトルがリリースするまでは少なくとも会社が存続することができる。ここで重要なことは、プロジェクトのディールを結ぶのにはかなり大変だということで、最初の『Vane』のデモからディールに結びつくまで六か月かかった。他のタイトル『デンジャラスマン』は開発が進んでいて「ビットサミット」でも公開していた。ポテンシャルはあり、もう1%作業が進んでいればパブリッシャーとディールを結ぶことができただろう」

「プロジェクトファイナンスだけがゲーム会社を運営する方法ではない。Friend&Foe社はゲームの受託開発を行っており、受託開発は今も存続している。ただ、受託開発はシンプルなものではなく、マージンを得る為には開発規模を拡充し、たくさんの人も必要になる」

「私が調べていなかったことはアセットストアだ。UnityやUE4のアセットストアを使えば自分たちがゲーム開発で行なっていることを売上に繋げることも可能だろう。例えばアセットストアで3Dの岩や私達が構築しているツールも売れたかもしれない。ただ、アセットストアでプロダクトを販売することはサポートも必要で、受託開発同様に時間が取られてしまうが、追加の収入や会社の存続を図る意味で検討に値しただろう」

チームとは何か?意思決定とマネジメントはなぜ重要なのか

マット氏は意思決定やマネジメントの必要性についても説いています。この話は友人同士や気の合う人同士でインディーゲーム開発を始めた時に起こり得る非常に示唆に富んだ内容だと思います。マット氏はこのように語っています。

「私にとってサプライズだったのは会社というのはチームだということと、チームとしてゲームを開発しているということだった。チームが一丸となるには実にたくさんの作業を必要で、そのチームはどのように意思決定を行うのか。意見の対立があった時、誰が意思決定をするのか。などだ。Friend&Foe社はみんな友人だったが、全員が常に同じ意見だった訳ではなかった。意見の対立をエネルギーが活性化するような形で解消するということは本当に重要なことだ」

「私たちがやるべきだったことは、共通の理解を成文化するべきだった。そうすれば意見の対立があった場合も何度も同じ議論をしないで済むしゲームの開発にもっと時間を割くことができただろう。我々五人は平等で協同組合のようなものだったが、意思決定をどうするかは決まっていなかった。合意するように努力をすると決めたが、意見が本当に対立した時にどうするべきかはきめていなかったし、そのために意思決定が困難だった。私たちは意見を一致されることについて最初に取り組まなかった。どうにかなるだろうと思っていた。他にも、マネジメントについても決めていなかった。マネジメントは目に見える結果を出すものではないが、とても重要なことで他のメンバーに対して、努力をしてるのわかっていても、早く終わらせてくださいと言うのはスケジュールを遅れさせないために必要だ。やりたくないことだが。インディーの多くは人事も雇ってないしマネジャーも雇ってないだろう。しかし、彼らが不要というわけではない。もう一度やるチャンスがあれば、意思決定やマネジメントは明確にしておきたいと思う」

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HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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