まずは「ゲームを完成させろ」。 インディーゲームクリエイターが“エターナる”ゲーム開発の罠から逃れる方法

完璧を目指すより、まず終わらせろ」。これはFacebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグの、仕事に取り組む人々に向けた名言として知られています。実際に彼自身が発言したかは諸説あるそうですが、これは個人のゲーム開発であっても当てはまる言葉でしょう。

会社で与えられた仕事や個人が受注した案件の場合、納期や予算などの関係もあり、どうあれ「終わらせる」ことに意識を向けやすいです。しかし個人制作では、ほとんどの場合その目的は自分の趣味であったり、好きなものだったりを作りたい思いから始まるでしょう。

納期と予算を度外視し、自分が頭の中に抱えた作りたいゲームを “完璧に”実現しようとる。とても美しい話でしょう。ですがそこに忍び寄るのです。そう「ゲームが完成しない罠」が。俗に言う「エターナる」開発に突入する罠があるのです。

今回はいくつかの記事をもとに、いかに「エターナる」開発を避け、ゲームを完成させるか?についてまとめていきましょう。

ローグライクアクションのトップクリエイターがまとめた「ゲームを完成させるための15のヒント」

まず紹介したい記事は「ゲームを完成させること」です。これは人気ローグライクアクション『Spelunky』、そして『Spelunky 2』を開発中のDerek Yu氏が執筆しています。今回の記事は、日本語の翻訳を『Downwell』を開発したもっぴん氏が行ったものです。

ここでは「才能ある開発者の中には、ゲームの完成までこぎつけるのに苦労している人がたくさんいる」と前置きし、そうした人たちに向けて「ゲームを完成させるための15のヒント」を紹介しています。

ヒントはどれも決して「この方法をとればみるみるうちにゲームが完成しますよ」というものではありません。総じて「いまの自分がスキルから考えて、できることを考えなおす」ことを指摘しています。同時に、多くのクリエイターが「エターナる」ポイントについて指摘したものとも読めるでしょう。

たとえば「1.可能性のあるアイデアを選ぶ」では、そもそもゲームのアイディアを考えた時に、それが今の自分にとって実現できるかどうかを検討するヒントになっています。

アイディアには、開発自体が楽しいだろう「作ってみたいゲーム」、『GTA』と『ファイナルファンタジー』がミックスされたようなとんでもない構想の「作ったことにしたいゲーム」(※おそらく多くの人が「ゲームを作りたい」と考えたとき、もっとも発想しやすいアイディアでしょう)、最後に自分のスキルに合っていたり、一度作った経験がある「作るのが得意なゲーム」の3つに分けられるそうです。

そしてゲーム開発で完成する可能性が高いのは、この3つが重なるアイディアを採用することだといいます。(記事を読んだ筆者の考えですが、クリエイターのゲーム開発スキルをもっとも上昇させるのも3つが重なるアイディアだと思います。)

このように最初のヒントの時点で自分自身の能力を鑑みさせるように、以降も完成させるために不要なアイディアを「切って 切って 捨てよう」とあげたり、開発の途中でアイディアを思いついても「次のゲームに取っておく」ことを勧めるなど、開発中のゲームで必要な要素を絞り、自分の能力以上のものを避けることを一貫して語っています。

そして、何らかの納期を設定する効果についても言及。「アワードやコンテスト、その他のイベントを締め切りとして活用する」ことも、完成させるヒントに挙げています。やはり人間は納期が無いと最後まで動きにくいものなのかもしれません。

もっぴん氏がDerek Yu氏に影響を受け、『Downwell』を開発した実績も考えて本記事を読んでみますと、非常に説得力のある内容となっているでしょう。

ちなみに文中には「ゲーム開発者だと聞いて「ゲーム作ってるって?一日中ゲームで遊べるんだ、いいなあ」などと言ってくる人は首を絞めてやりましょう」という風に、けっこう生息しているゲーム開発に無理解な人に対する怒りも記述。わかっていない人にはしっかり怒りを見せていく大切さも教えてくれています。クリエイティブは新しいものを生み出す美しい光の部分ばかりが注目されますが、「殺意駆動開発」というスラングもあるように闇の部分も合わさってこそ、現実的な開発は進むものなのでしょう。

「エターナる」開発から逃れるための知見

このように「エターナる」開発の罠は膨大にあるため、避けるための知見も数多く存在しています。ゲーム開発コミュニティ「Kawaz」が2014年にまとめたスライド「エターナらないゲーム開発」でも、「エターナった」事例を取り上げながら、ゲームが完成しない罠の避け方についてまとめています。

こちらはまったくの一人で開発するのではなく、チームで開発することで起きる問題をまとめています。

先述のDerek Yu氏の指摘と同じように「個人では大きいものを作るのは難しい。なのに平気でFF作りたいとか言っちゃう」(つまり、先の例でいえば「作ったことにしたいゲーム」)ことや、モチベーションの維持が難しく、「趣味なので辛くなるとやめてしまう」問題について言及。

インディーゲーム開発の特徴として、はっきりと「金がない」、「時間がない」、「責任がない」、「知見が無い」、「やる気はある(はず)」と実はとてつもなく制限された、辛い環境あることを指摘し、まずはそれらを対処した、辛くない環境づくりを挙げています。

環境づくりの方法として、プロジェクトマネージメント(以下、PM)を導入することや、プログラマーへの負担が大きすぎることをどうするか、そして他のメンバーとゲームの完成系を共有するために、いつまでも開発中のゲームが遊べない問題への対処がまとめています。

作りたいゲームへの莫大な夢と、クリエイター自身のスキルの現実

このように「エターナる」背景には、平たく言えば「ゲームを作りたい」という莫大な夢に対して、クリエイター自身のスキルの現実や環境づくりを鑑みていないことから発生していることがわかります。

ゲームを一本完成させることこそ、もっともスキルを上昇させる手段と言われています。その過程の中で、おそらくはクリエイター自身の力と環境を直視することにもなるのでしょう。

葛西 祝

ジャンル複合ライティング業者。ビデオゲームを中核に、アニメーションや映画、アートから文学、時に格闘技に至るまで多様なジャンルを横断して執筆している。 公式サイト:http://site-1400789-9271-5372.strikingly.com/

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