“開発者フレンドリー”な新興ゲームマーケティング企業「Ukiyo Studios」はどのように生まれたのか? 代表者インタビュー
——パブリッシャーとの契約の問題は開発者にとって悩ましいですからね。
高橋:最近、私たちのクライアントさんで中国のパブリッシャーにSteamの販売権利を全部持っていかれちゃった方がいます。英語版から日本語版まで全部持っていかれたんですが、取っていった中国のパブリッシャーはなにもしないんですよ。アップデートもせず、完全に放置です。コロナ中でPCゲーマーやSteamユーザーが爆発的に増えてるというのに、こういう「悪質なパブリッシャーの無活動」は本当にもったいない。
だからこういうケースを見ると、開発者が自分でコントロールできたらすごく可能性を感じるのに、そういうのはどうにかしないとな……と思っていますね。
——開発側が権利をちゃんとハンドリングしないと難しいですね。Ukiyo Studiosは開発者と関わるなかで、その他にどんなことを困っていると感じますか。
デヴィッド:まずひとつ目は、マーケットへどのようにアプローチするのかアイディアが少ないことです。
高橋:せっかくいい作品があるのに、その存在が知られていないことですね。実はいろいろな手段があるのですが……個人で開発していて素晴らしいゲームが作れるのに、ゲームをマーケティングしたりするための知識が得にくいのが問題じゃないですか。
なので、ビジネスサイドがわからないという理由だけで売れないというのは、すごく残念だなと。
——確かに少なくないケースがそうなっているかもしれません。
高橋:たとえば、ゲームは発売時期があるじゃないですか。発売してから1年後に「いまからマーケティング始めよう」っていっても遅いです。重要なのは発売時の波をつかむための発売前の準備です。
私たちは発売の半年前からアナウンスして、発売時期にタイミングを合わせるのがいちばん効果的だと開発者たちに伝えています。なので、開発者が想像するよりも早い段階でマーケティングを考えなきゃいけないんです。そういう相談が多いです。あとは言語の壁があるので、海外のゲームメディア、レビュアーさんやインフルエンサーさんに繋げたりすることなどは、常に私たちがやっていることではあります。
——現在はゲーム実況を行うストリーマーの影響も大きいです。こちらにはどのようなアプローチがありますか。
高橋:ストリーマーは広告塔であり、いろんな作戦があるのですが、けっこう私の印象ですと日本の開発者さんは大物のストリーマーに声をかけて配信してもらうみたいなことが多いと思います。
でも、アメリカのインディーゲームなどでは逆の傾向も見られます。それほど有名ではないストリーマーにかなりの数にアプローチするんですね。小中規模のストリーマーが一気に遊ぶと、Twitchなどのアルゴリズム上、ゲームが上位にランキング入りする効果が狙えるんです。
そうすると大物ストリーマーも[「おっ? なんかみんなやってる。じゃあ自分もやろう」となる。数で宣伝するやり方があるんです。私たちの場合はそうしたやり方を、日本の開発者さんのゲームで採用したいと思っています。
——個人的な質問なのですが、ストリーマーさんの動画再生数とプラットフォームなどを調べようとしたんですが、地域や英語圏などの感覚が正しいのかまったくわからないんです……。このあたりにご意見をいただけるとありがたいです。
高橋:開発者向けストリーマープラットフォームのWoovitとか数字だけポンポンポンっと出てくるんですけど、ストリーマーの配信を実際に見て雰囲気を知っておくのも大きいですね。
たとえば辛口レビュアーとかいるじゃないですか。ゲームのことをディスりながら遊ぶみたいな。そういうとき、「この開発者にとってこのレビュアーはよくないな」とか思いながら選んだりしていますね。
また海外のゲームを日本向けにマーケティングしたとき、私たちはLGBTQ+のテーマの強いゲームに関わることがありました。開発者自身もトランスジェンダーであり当事者です。その時、必ずしもゲーム配信者じゃなくても、LGBTQ+向けにコンテンツを作っているYoutuberさんに声をかけてみたりしています。
——なるほど、決してゲーム配信ひとつに絞って見なくてもいいと。
高橋:必ずしもゲーム配信のストリーマーじゃなくても、ジャンルにかかわりのある人であればアプローチしています。たとえば日本のロボットゲームだど、海外のストリーマーじゃなくても、ガンダム好きのRedditグループやDiscordサーバーとか、趣味が被るところに声をかけています。『有翼のフロイライン』はまさにそんな感じだったんですよ。ゲームはゲームですけど、日本のメカアニメ風なので、主に海外のアニメニュースサイトやロボット好きのフェイスブックグループへ「アニメ愛のあるゲームを遊んでみないか?」とプレスリリースとコードも送っています。