インディーパブリッシャーUNTIESが活動停止。発売予定タイトルは新会社や他パブリッシャーへ移行

 

ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、SME)のインディーゲームパブリッシャー「UNTIES」が新規のタイトル販売を停止した模様です。

パブリッシング予定として発表されていたタイトルの一部は新たに設立された企業Phoenixxに引き継がれ、ほかのタイトルについてもクラウディッドレパードエンターテインメントやヨカゼ、Playismなどの別パブリッシャーに移籍しています。

UNTIESは2017年10月にスタートし、およそ2年の活動期間で新規の展開は停止するとのことです。リリースされているタイトルのサポートは続けていくようです。

UNTIESの中心人物が担当タイトルを引き継ぐかたちに

UNTIESにてパブリッシングの中心人物となっていたのは、坂本和則氏、伊東章成氏、そしてジョン・デイビス氏の3名。現在、それぞれの進路が分かれています。

UNTIESが活動を停止したあと、坂本氏とデイビス氏は新会社としてPhoenixxを設立(参考:ファミ通 Web)。伊東氏は昨年設立された中国のパブリッシャー、クラウディッドレパードエンターテインメント(雲豹娛樂股份有限公司)に合流したことが発表されています。(参考:ファミ通 Web)

坂本氏はPhoenixxを設立した背景をこう語っています。「グループ全体としてのゲームビジネスの兼ね合いもあり、“UNTIESの事業を積極的に拡大しない”という判断」があったと説明。その時点でいくつかのタイトルと契約していたのですが、パブリッシングが未定となったため、「最終的に判断したのが、僕自身が事業を継承して、UNTIESでしていたサポートを新会社でもそのまま継続する」かたちで会社が立ち上げられたそうです。

『幻想討幻経』などはPhoenixxが引き継ぐかたちですが、いくつかのタイトルは違うパブリッシャーへと移行しています。今年1月にリリースされた『ジラフとアンニカ』も、UNTIESと協議した結果、Playismからのパブリッシングへと変更していました。

インディーゲームレーベル「ヨカゼ」設立の遠因にも

またUNTIESがパブリッシングを予定していたタイトルには、今月5月14日にリリースを予定している『アンリアルライフ』も含まれていました。

こちらはroom6がパブリッシングを担当していることを、代表の木村 征史氏がTwitterで発言しています。またクリエイターのhako 生活氏とともに、インディーゲームレーベル「ヨカゼ」を立ち上げ、『アンリアルライフ』はその第一弾作品としてプロモーションされています。UNTIESが活動停止したことも、レーベル設立に関係していると見られるでしょう。

 

UNTIESの残したもの

あらためて、UNTIESの活動とはどんなものがあったのでしょうか?

UNTIESは短い活動期間のなかで、インディーゲームをパブリッシングするスタンスとして興味深い発言が数多く残されています。そのひとつが、母体がSMEならではの「音楽業界のプロデュース手法をインディーゲームにも生かす」というものでした。

いまはさまざまなゲームエンジンを低コストで多くの人が利用できることによって、ゲーム開発は大規模なものではなく、個人の作家性を生かせる時代です。

坂本氏は音楽業界にはA&R(アーティスト&レパートリー)という考え方があると、UNTIES設立時のインタビューで説明しています(参考:ファミ通Web)。これは、アーティストを発掘・契約し、マーケティングはもちろん音楽制作に至るまでがっちりとサポートするという意味で使われる言葉です。

伊東氏は今日のゲームクリエイターの状況を「クリエイターに求められるものが個性であり、アーティスト寄りになってきた」と分析していました。そこでUNTIESではG&R(ゲーム&レパートリー)という言葉に置き換え、同じような方法論でクリエイターを発掘する方向を定めていました。

音楽業界におけるプロデューサーとアーティストの関係性のように、クリエイターの作家性を育てる”方向も意識的に組み込んでいたとも語っています。「出版業界で言えば、作家と編集者みたいな関係性」というように、作り手とパブリッシングする側とで共に成長していくということなども語られていました。

一方でSMEという大企業が母体ゆえの、さまざまな確認といった工程が多いゆえに「インディーならではの小回りやスピード感が失われてしまう」という問題も当初から語られていたのです。

SMEがフォローするゆえにクリエイターの作家性が発揮できる状況が構築できていたことは、後に東方projectのテーマで陰鬱な海外ADVのように作って見せた『3rd Eye』や、同人サークルCAVYHOUSEの『マヨナカ・ガラン』などのタイトルを見るとわかるのですが、長期にわたってこのスタンスを続ける難しさがあったこともうかがえます。

インディーゲームをアーティストのようにプロデュースできるものだと、本来は異業種だった音楽業界が関わったケースとしてその意義は大きいでしょう。もともと音楽業界に関わっていた坂本氏は、Phoenixxの設立によって本格的にインディーゲームのパブリッシングに関わっていく模様。大企業から離れたこちらでは、インディーならではの動きやすさを期待したいです。

igjd

IndieGamesJp.dev Moderator

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