歩いて気持ちの良い街を作るために努力した『黄昏ニ眠ル街』インタビュー。「ここに行きたい」をどう実現したのか。

2021年4月にSteamで発表された『黄昏ニ眠ル街』はオリエンタルな世界観の街を歩くことができるシミュレーションゲーム。リリース後も美しい街が話題を呼び国内外から高い評価を得ました。

開発をされたnocras氏は、本作リリースのずっと前からこの世界観のイラストを描き続けていました。イラスト投稿サイトPixivでは「ここに行きたい」というタグがついており、まさに本作はその「ここに行きたい」を実現するものでした。

それでは、nocras氏はどのように「ここに行きたい」を実現したのでしょうか。さっそく見ていきましょう。


――今日はよろしくおねがいします。自己紹介をお願いします。

nocras氏:nocrasといいます。もともと5年くらいゲーム会社で3Dデザインをしていて、そこから会社をやめてフリーのデザイナーとして方向転換をして、今に至ります。

――ありがとうございます。3Dだと、モデリングがメインだったのでしょうか。

nocras氏:主に3Dモデラーですね。キャラと背景。アニメーションとかもしていて、本当3D全般のデザイナーという感じでした。

――そのスキルがあって、今回の開発につながっていったのだと思いますが、本作を作ろうと考えたきっかけはなんでしょうか。

nocras氏:会社にいた頃に携わっていたタイトルは、大規模なプロジェクトで分業体制になっていました。ゲームの一部分しか携われなかったことが多く、いつか自分1人でゲームを作ってみたいなという欲がありました。そんな中、会社を辞める前後に、ちょうどUE4が無料化し、触ってみたら思ったよりすんなり馴染めました。「これなら色々できるんじゃないか?」っていい感触が得られたので、やってみようと思って開発し始めたのがきっかけです。

――たしかに、年々ゲーム開発は大規模になっていますね。ちなみに参加されていたプロジェクトは、何人ぐらい関わっていたのでしょうか?

nocras氏:前職で3Dデザイナーをやっていたときは、数百人どころじゃなくて多分1,000人以上の規模のプロジェクトだったと思うので、把握できないくらい大勢の方が携わっていました。そんなプロジェクトなので、自分がやったと言ってもホント1,000分の1ぐらいの感覚しか得られなくて、「果たして自分が作ったと言えるのか?」と思っていましたね。もちろん、大きいプロジェクトにいくつも携われていたので、経験としてはすごいいろんなことができたんですけど……。やっぱり1人でつくるっていう夢はなかなか捨てられなかったですね。

――1,000人はすごい規模ですね。たしかに、自分で作っている感覚があまり得られないのかもしれませんね。

nocras氏:大規模プロジェクトをやっていると、自分の仕事もどんどん作業化してきてしまって、「果たしてこれは自分が本当にやりたかったことなのだろうか?」っていう疑問も、たまに浮かんできましたね。

――思い描いていたゲーム制作と、どこか違うような違和感を覚えられたのですね。それは、学校を出てすぐゲーム会社に就職されてのことなんでしょうか

nocras氏:2年制の専門学校に行って、そこで3Dソフトの操作とかを覚えました。卒業して最初はAQインタラクティブ(現マーベラス)に就職して3年間勤めて、その後スクウェア・エニックスに2年間勤務していました。

――5年勤められると、業界での経験も積まれて会社でも1人前として見られて仕事も任せてもらえる一方、自分は何がしたいんだろう?と考えることもあるのかなと思います。その中で、フリーになられて外注でお仕事受けられているわけですね。最近はリモートで仕事をされているのでしょうか。

nocras氏:フリーになってからは、ほとんど全部リモートですね。知人も週1出勤とか、半年以上会社行ってないとかって聞きますね。フリーに転向してからはコンセプトアートの仕事をやっているので、そのかたわら趣味の東洋ファンタジー風のイラストを描いています。

――Pixivにアップロードされていますね。「ここに行きたい」タグがつくようなイラストの数々ですよね。

https://www.pixiv.net/users/8103614

nocras氏:PixivやTwitterに上げたりしていますね。会社員のころは3Dがメインで、あまり絵を描いてなかったんですけど、2Dもやってみたいなって。

――すべて描いておられるのですね。イラストのの奥のほうは3Dモデルかと思っていました。

nocras氏:3Dでアタリをとったりはしてますが、自分で描いてますね。

――結構な枚数をpixivにあげられていて、筆が早いなあと思っていました。

nocras氏:1枚描くのに3日とか5日とかやっぱりそれくらいかかっちゃうんですけど、それが早いか遅いかは…どうなんでしょうね。

――だいぶ細かく描かれますよね。東洋風の街並みがいいですね。

nocras氏:結構、自分が描き込んだごちゃごちゃとした絵が好きなので。自分の世界観って、あんまりはっきりわかってないんですけども、やっぱり描いていくうちに自然とこういう東洋風な絵になっていきますね。

――資料も家にそろっていらっしゃるんでしょうね。台湾の九份にも似てますね。

nocras氏:あ、そうですね。写真集買い集めたりとか、画像検索やPinterestで探したりしてますね。暇さえあれば、ずっと資料集めとかしたり、なんか面白い写真とかがあったら、あ、今度この要素を絵に入れてみようかなとか考えてますね。台湾旅行で九份も行ったんですけど、やっぱり素敵なところだったので、インスピレーションが湧きますね。

HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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