歩いて気持ちの良い街を作るために努力した『黄昏ニ眠ル街』インタビュー。「ここに行きたい」をどう実現したのか。

――次回作についてもお考えがあるのでしょうか

今回ってUE4初めて触ったっていうのもあるし、個人制作だったというのもあって、やりたいことが全部できたかって言われると、実はそうでもなくて。無理なくちゃんと完成させるっていう規模感で作ってたんで、割とあっさりシンプルなものになっていたと思います。次回作を作るなら、もっとゲーム性の高いものにしたいですね。自分の世界観のゲームを作ることに関しては120%達成できてるんで、そこに関しては不満はないんですけど、ゲームとして面白く作りたいっていうゲーム開発者としての欲があるので、次作るならそっちを拘りたいですね。

――出してみて気がつくこともありますよね。特にFPSなどをいつも遊んでいるプレイヤーからするとこれくらいの難易度なら大丈夫だろうと思ったけど、ユーザーさんはそこまでゲーマーじゃない人もおられたんでしょうね。

nocras氏:このゲームの成り立ちが、「コミケで自分のイラスト本を見てくれてる人」とか「pixivやTwitterで見ている人」に向けて作っていたので、普段ゲームやらない方も多いようでした。このゲームをやるためにsteamを初めて入れたとか、そういう方もおられましたね。

――そうなると、3Dのゲームもはじめてプレイする方もおられたかもしれないですね。

nocras氏:マウスとキーボードで遊ぶことのハードルが高いというお話もあり、意見を見た感じだと、思ったよりもゲームをやったことない人が多かった印象です。あとは、このゲームがグラフィックを結構作った3Dゲームということもあって、PCスペックがそれなりにいるんです。でもゲーミングPCを持っている方はなかなか少なくて。

――確かにノートPCでのプレイはつらいでしょうね。

nocras氏:ちゃんとグラフィックボードを積んでないと辛いところはあります。推奨スペックを書いてはいますが、PCゲームを始めて遊ぶ方が「3Dゲームを遊ぶ為にはどの程度のスペックが必要か」という感覚は分かり辛いと思います。最適化に関しては頑張って、描画処理周りに関してはある程度落とせました。ただプログラム側が、自分が初めてブループリントを触ったというのもあって、本職のエンジニアが見たら怒られるだろうなっていう内容で……。それで余分にCPU側に負荷がかかってしまっているかと思います。

――ゲーム業界の人の家にはある程度のスペックのパソコンがあって当たり前なので、これは盲点ですね。

nocras氏:2.3世代前のミドルレンジのグラボで動くので、そんなにハイスペックなPCは要求はしないんですけども、ノートパソコンとかはなかなか厳しいだろうと思いますね。反対に、すごくアクション性の高いゲームだと思った人もいました。発売するまでトレイラームービーは出したんですけど、その中で「どういうゲームか」ということをあまり語ってなかった背景もあり、思っていたのと違うという感想もありました。自分の中では、コミケでもずっと出していたし、Steamゲームフェスティバルにも出したし、体験版も出したんで、どういうゲームかっていうのはもう周知されていると思っていました。でも、実はあまり周知されていなかった。

――なるほど。これは難しいですね。このゲームのファンが、普段ゲームを遊ぶ以外の人にも届いていたからなのかもしれません。

――本作の最適化を進めていくとお聞きしましたが、もしかすると、エンジニアさんにメンバーとして参加してもらうなども必要かもしれないですね。

nocras氏:そこは悩んでいるところです。自分自身が結構1人で何でもやりたい系の人間なので、なかなか人を巻き込んで色々やることができないんです。次回作をやる時も、基本は1人になりそうですね。インディーゲームって基本的に企業案件ではできないことをやるのが醍醐味だと思っているので、自分のやりたいこととか、推し進めたいことをやりたい。そして、それをほかの人に押し付けるってできないと思うんですよ。インディーゲーム開発者でチームで組んでいる方もいますけど、どうやってるのかなって、そのノウハウを一番知りたいですね。

――チームで作るのは個人と違う難しさがあるでしょうね。最後になりますが、このインタビューをご覧いただいた方に一言お願いします。

このゲームには、私が商業作品に関わって来た中で、そこでは見ることのできないこだわりを100%以上詰め込んだ作品です。ぜひ触ってもらって、そのこだわりを感じ取ってもらえればなと思います、本当に開発初期の、コミケで出していた頃からずっと支援していただいたファンの方にも、この場を借りて本当にお礼を申し上げます。3年かかってしまい本当に長くお待たせしましたが、ぜひ遊んでください。

――ありがとうございました!


今回のインタビューで印象に残ったことは、「歩いて気持ちの良い街」レベルデザインへのこだわりでした。何度も歩いて作り直した街の魅力が多くの人に届いたことだと思います。また、このインタビューを読んだ後で再度本作をプレイすると、新たな発見や本作に込められたnocras氏の想いに気付くのではないでしょうか。

また、主となるプレイヤーがPCゲームをあまり遊ばない層だった場合に、プレイヤーのパソコンのスペックがゲームにマッチしないなどの問題が起こることは、開発者にとっては盲点だったのではないでしょうか。PCゲーム開発者にはひとつの教訓になったことと思います。

最後に、nocras氏からのニュースをお届けしてこのインタビューを終えたいと思います。なんと、家庭用ゲーム機への展開が決定しました!

HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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