東京ゲームショウ2022のインディーゲームシーン

東京ゲームショウ2022は実に3年ぶりにフルの開催となり、多数の企業がブースを出展し、活気の溢れるものになっていました。

活気を取り戻したのはインディーゲームも同様です。昨年はほぼオンラインが主軸だったこともあり、扱いが縮小されていたことに対し、今回は過去の通常開催以上に力が入ったものになったのではないかと思います。

幕張メッセのメイン会場にて復帰したインディーゲームブース

そう考える理由としては、今回のインディーゲームの展示は幕張メッセで大企業のブースが連なる1番ホール(上画像の1の赤枠がTGSメイン会場)にて行われていたためです。一般入場においては一番に目に触れる位置であり、さまざまな大作が陳列されるブースとシームレスにインディーゲームが並ぶブースにつながっていました。

新型感染症以前のTGSでは、インディーゲームの区画はメインの会場とは別会場となる9番~11番ホール(上図2の赤枠)に配置されていたものでした。別会場はコスプレコーナーや物販なども並ぶ場所で、「あくまでサブとしての出し物はこちら」という印象があったものです。その記憶を思い出すと、今年メイン会場の中で展開されたことは(理由は定かでないにしろ)興味深いことだと感じました。

インディーゲームの区画では、日本のクリエイターの作品はもちろん、海外から気鋭の作品が数多く出展しておりました。国内からは『狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼』や『バイナリ・シンドローム』といったタイトルに人気があるのが見えたなか、海外からは今年の世界的な話題作でもある『Vampire Survivors』などが出展されたことなど、注目すべきタイトルが揃っていたと思います。

またインディーゲームのパブリッシャーも数多く自社のブースを出展しており、活況となっていたと感じます。個人出展のインディーゲームが集まる区画の隣には「ヨカゼ」レーベルのroom6やPhoenixx、架け橋ゲームズといったパブリッシャーの出展が見られ、インディーゲームに展示に厚みを持たせていました。

その他には、今回は世界各国でまとまったブースも印象深いものでした。、韓国や香港といった国別のパピリオンにてインディーゲームタイトルも出展されている、といったケースも多々見られました。

筆者が興味深かったのはオランダの区画にて、膨大なタイトルをリリースし続けるチーム・Sokpop Collectiveが参加しているのが見受けられたことであり、インディーゲームで独自性を発揮しているチームに直接会えたことは嬉しい出来事でもありました。

日本のインディーゲーム開発者支援プログラムである、iGiもブースを初出展。Bitsummit X-Roadsでの出店と同様、プログラムの第2期生である6作品を展示していました。iGiブース内には商談ブースが設けられ、海外パブリッシャーと見られる関係者が作品のピッチを受けている姿も見受けられ、iGiのプログラムが推進している方向に進んでいた様子です。

TGSには、インディーゲームの中でも特に「実験的で、創造的な、ゲームデザインやアイデアを含んだゲーム」を専門としたアワードである「センス・オブ・ワンダーナイト2022」(以下SOWN2022)があります。iGiからは、同プログラムのプロジェクトマネージャーを勤めるコーラ・マティアス 氏が査委員として参加していました。

出版の大企業がパブリッシングに参入した影響

そんななかでも、やはり興味深いのは講談社や集英社といったパブリッシャーによる出展でしょう。

特に目を引いたのは集英社ゲームズのブースでした。インディーゲームの出展されている1番ホールの区画ではなく、カプコンやスクウェア・エニックスが並ぶ7~8番ホールにて、ゲームの大企業と肩を並べる形で出展されていました。これは「Bitsummit X-Roads」から引き続き、インディー規模のゲームのみならず、『キャプテン・ベルベット・メテオ』などの漫画版権タイトルや、モバイル向け運営タイトルなども手広く展開する、同社の取り組みの本気さがうかがえるものでした。

対称的に「講談社ゲームクリエイターズラボ」ではインディーゲームブースのパブリッシャーの列に並ぶ、落ち着いた出展ではありました。今回の講談社出展で気が付いたこととして、同社の片山裕貴氏がSOWN2022の審査委員に加わっていたことでした。片山氏のこれまでの経歴は「FRIDAY、月刊少年マガジンの編集者」というものでしたが、クリエイターズラボでの活動を通じて開発者たちのサポートを続けており、今回はその経験からの審査員の参戦という形にみられました。出版社のパブリッシング事業がいよいよアワード選出にも加わっているということは、これまでの変化としても特筆すべきことでしょう。

近年のインディーゲーム環境変化が反映されたTGS

まとめとして今年のTGS2022は、昨年の縮小から一転してインディーゲームをかなり大きくフィーチャーした状態にまで戻してきたと言えるでしょう。一方でBitsummit X-Roadsから引き続き、出版の大企業のパブリッシング事業参入や、国内向けのインキュベーションプログラムの登場といった、より具体的な”ビジネスとして”のインディーゲームという取り扱いにもなっているようにも思います。センス・オブ・ワンダーナイトの審査委員に講談社やiGiのスタッフが参加したことから、よりその方向性が強くなったことの証左ではないでしょうか。

筆者個人の感覚としましては、「TGS2022にてインディーゲームの区画がメイン会場に位置できるものになったのも含め、インディーゲームというジャンルがビジネスとしての意味を強めたものになった」という状況のように映りました。どうあれ、なにかこのジャンルが持つ性質に変化があったとも思えたのは確かです。

東京ゲームショウ公式サイトはこちら

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