パブリッシャー「わくわくゲームズ」代表インタビュー。日本で最も敷居が低いパブリッシャーを目指す、同社の狙いとモットーとは
――御社のパブリッシングサービスについて、海外展開についてはどのような戦略を検討されていますか?
今のご時世、売るだけなら誰でも海外市場に参入できるようになっています。パブリッシャーの付加価値をつけるなら海外でのPRやプロモーションの充実度合いが問われると思いますが、やはり体力的・資金面的に弊社は弱いです。
ささやかですが、欧米、台湾メディアにはプレスリリース出したり、インフルエンサーにキーを配ったりはしていますが、残念ながら目に見えた効果はまだ得られていません。しかし、前の項目でも言いましたが、全ては継続にかかっています。続けていくうちに何かのタイミングで、できることが増えていくのは経験として持っていますので、今はやれることをやり続けていくことが重要だと考えています。
――日本のインディーゲーム全体については、御社としてどのようにサポートしていきたいとお考えですか?
前述の通りですが、ゲームはつくっただけではなく、プレイヤーの手元に届けてプレイしてもらうところからがスタート地点だと考えています。たくさんの作品をプレイヤーへ届けるための橋渡し役をつとめられればと考えています。
私は売れたらマーケティングのおかげ、売れなかったらゲームの評価が悪かったから、とされる環境に長くいたせいか「マーケティング」という言葉が大嫌いでして(笑)、ゲームのヒットに起因するものはすべて作品そのものに内包されているという考えを信じています。
ゲームが持つ魅力の一端をどのようにプレイヤーに触れてもらえるか、トリガーみたいなものがあると思うのですが、それを見つけるためにイベントでの試遊機会=いわゆる営業活動的なものを増やしていきたいと考えています。嬉しいことに東京以外でもイベントは増えていますので。
――昨今では日本のインディーゲームパブリッシャーには様々な選択肢があります。大柳さんが考える、「わくわくゲームズ」ならではの魅力とは何でしょうか?
条件面だけでいうと弊社よりも好条件を提示するパブリッシャーはいくらでもあるでしょう。しかしパブリッシャーとしてやれることは実はどの会社も大差はないと思います。私が重視しているのは以下の通りです。
- 契約ごとは極力シンプルであること
- 作家とのコミュニケーションは欠かさないこと
- できる範囲できちんと作家をサポートをすること
詳細はここでは言えませんが弊社の出版契約はかなりシンプルな方だと思います。余計な物は求めません。
作家とのコミュニケーションは一番重視しています。Discordサーバを立ち上げているのですが、雑談から個別の制作進行、諸連絡、支払関連まで一貫してここでやりとりができるようにしています。また必要であれば平日・休日(私が遊びに出かけてなければ)を問わずオンライン・リアル問わず打ち合わせもしています。常にオープンです。作家から魅力に映るかどうかは人によると思いますが、これを実践できている会社はあまりないと思っています。
金銭的なサポートはなかなか難しいのですが、イベントなどに出展する場合は、モニターやポスタースタンドなどの重い機材を貸し出ししたり、クリアファイルなどの配布物をつくるなど、あれば嬉しいであろうサポートはやっています。
今やりはじめているのは、外部に委託している作業を、わくわくゲームズタイトルの作家さんに依頼する形でゲームソフトの売上以外にも収入をつくる試みをはじめました。保証なんてできませんが、ゲームで飯を食っていくための模索を一緒にやっていこう、という態度で常に業務をおこなっているつもりです。
――出展予定の「デジゲー博 2022」ではどのような出展計画でしょうか?
わくわくゲームズブースでは『魔物娘と不思議な冒険2』『TOMOMI』『コスモドリーマー』の3作品を展示いたします。ジャンルはローグライクRPG、メトロイドヴァニアアクション、弾幕シューティングと見事にバラバラですが、どの作品も私が自信をもっておすすめできるゲームです。
また、UDX2階のアキバ・スクエアには、わくわくゲームズ取り扱い作品として『百年王国』『レトロゲームエイリアンズ』『モン娘ぐらでぃえーた』『魔界堕ちのラズリエル』『CodeReactors』各作品がサークルより出展されています。こちらもシミュレーションからノベルゲーム、ローグライトゲーム、アクションRPGと多彩なジャンルで皆さまをお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。
――日本国内のインディーゲーム開発者の方へメッセージをお願いします。
わくわくゲームズでは「ゲームは世に出てからがスタートライン」を標榜し、魅力的な作品を手がけるクリエイターの皆さまを『出版』という視点から支援し、ゲームファンの皆さまへお届けいたします。いつでも弊社までご相談をいただければと存じます。
開発者の皆さまへ弊社がこういうことを言うのも変な話ですが、最後にアドバイスをひとつ。パブリッシャーと話をする際は、決してメールだけで契約を済まさないことです。面倒くさがらず、必ず対面で話をしてから決断しましょう!
――ありがとうございました!