Unityが新料金体系の一部撤回を発表。ランタイムフィーに収益2.5%の上限がつき、自己申告制へ、適用はUnity2023LTS以降から。Pro/Enterpriseは値上げへ
[UPDATE 2023/9/23]
・Unity Personalのロゴなしオプションが2023 LTS以降であることを追記
・サブスク、クラウドゲーム、WebGLゲームもランタイム料金の対象になったことを追記
・端末初回インストールやWebGLゲームの初回起動(?)をUnityが計測することを追記
[UPDATE 2023/9/23]
・Unity Pro / Enterpriseの値上げについて追記
・Github上のToSの回復について追記
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Unityは発表済みの新料金体系について以下の発表を行いました。
https://blog.unity.com/news/open-letter-on-runtime-fee
・ランタイム料金ポリシーは、2024 年以降に出荷されるUnity の次の LTS バージョンからのみ適用(≒2023 LTSと予想されます)。新バージョンのUnityでないかぎり新料金は適用されない。
・ランタイム料金の対象となるゲームについては、 2.5%の収益分配か、毎月ゲームに参加する新規ユーザーの数に基づいて計算された金額のいずれかを選択できる。これらの数値は両方とも、すでに入手可能なデータから自己報告されるもの基づく。常に低い方の金額が請求される。
・12 か月間の収益が 100 万ドル(約1億4,830万円)未満のゲームは料金の対象にならない。
・Unity Personalが使用されたゲームにはランタイム料金が発生しない。
・Unity Personalが利用できる収益の上限を100,000 ドルから 200,000 ドル(約2,966万円)に引き上げ
・起動時ロゴ「Made with Unity」表示の必須条件を削除。(2023 LTSから表示・非表示チェックボックスが追加)
今回の変更にあわせて、「突然削除された」と物議を醸していたGithub上のTeams of Serviceリポジトリについても復活しています。
Unity Pro / Enterpriseは値上げへ、近日情報開示
本アナウンスとは別ページにQ&Aがまとめられていますが、その中には今回の変更にともなう将来的な値上げについても予告されています。
https://unity.com/pricing-updates
> 前回の価格変更に合わせて、Unity Pro と Unity Enterprise の価格も値上げします。近日中にさらに詳しい情報をお知らせいたします。
WebGLゲームやクラウドゲームもランタイム料金のカウント対象に再変更
当初の発表からしばらくして、公式ブログやフォーラムの回答が二転三転し、一時的に「WebGLゲームにはランタイム料金の計算元となるカウントを行わない」「クラウドゲームのランタイム料金はサービス提供者への課金となる」などの回答がありましたが、今回の発表ではいずれも開発者が支払いを行うランタイム料金の計算に含まれることが告知されました。
また、開発者が端末への初回インストール数やWebGLゲームの初回起動(Unity用語では「初期エンゲージメント」と定義)の数値を自己申告しない場合は、引き続きUnityが「Unity Services」のデータと”readily available external data”(すぐに利用できる外部データ?)を使って計算をするとのことです。
たとえばEU圏に施行されているGDPRにおいて、個別の利用者を識別して何かを計測することは同法に抵触する範囲となるため、「初期エンゲージメント」正確にカウントする方法が開発者にはありません。WebGLゲームにおいても、ブラウザで初めてアクセスされたタイミングがどれだったのかを判定は難しいと思われます。プレイヤーが複数のブラウザで遊んだらどうなるのでしょうか。
しかしこれはUnityも同様で、いかようにして正確な「初期エンゲージメント」を入手するのかは不明です。Unityは、開発者側が正確なカウントができないプラットフォーム(販売チャネル)の場合は2.5%の収益分配方式を自己申告するようにガイドしています。
発表後の混乱から大幅な改定へ
Unityの新料金体系は発表後、多数の意見や抗議が全世界のインディーゲーム開発者から表明され、本社では警察沙汰も発生するなど混乱を極めました。料金の詳細についても担当者ごとに言っていることが食い違っており、社内での意思疎通も十分でなかったように感じました。もとより、「初回のインストール時のみカウントする」というダウンロード数計算の具体的な手法が不明で、海賊版の対策も含めて技術的に疑問符がついた状態でした。
改定された料金については、ランタイム料金の基本は変わらないものの、「収益の2.5%」「12 か月間の収益が 100 万ドル(約1億4,830万円)」という条件がついたおかげで、無料配布+少額課金スタイルのモバイルアプリ等も支払いが無しまたは現実的な価格に落ち着いたと感じます。
しかしながら、2023 LTSから値上げになることと、技術的な困難が予想される計算方法での料金体系が突然発表される経営体制については以前と変わりありません。おりしも先日22日までは東京ゲームショウのビジネスデーが開催されており、出展のUnity利用インディー開発者は、パブリッシャーとの交渉などにおいてビジネス機会が大きく損なわれてしまったのではないかと心配しております。ゲーム制作におけるエンジン・制作環境の選択肢が今年大きな変革を迎えたことは間違いないでしょう。