Steamのフォロワー数とウィッシュリスト数から売上を予測する: 113タイトルの調査から[GameDiscoverCo]
[本記事は、GameDiscoverCoニュースレターの日本語翻訳です。GameDiscoverCoの許諾を得て翻訳・掲載しています。]
皆さんはゲームの売上予測をするために、何らかの指標を気にしていますか。Steamの売上予測によく使われている指標の1つはウィッシュリスト数です。今回はGameDiscoverCoがフォロワー数とウィッシュリスト数の関係について詳しく分析しましたので、紹介します。
まず、Steamにおけるフォロワーとウィッシュリストの定義をおさらいしましょう。
フォロワー:
・あるゲームのフォロワーとして登録されているユーザーに対して、そのゲームに関するリリース前とリリース後の通知がすべて届きます。どのようなゲームがフォローされる傾向にあるかというと、継続的なイベントやアップデートが行われるタイプの運営型ゲーム(Game as a Serviceモデル)がその1つと言えます。(もしくは、興味のあるゲーム)
・ゲームの総フォロワー数は公開されています
ウィッシュリスト:
・あるゲームをウィッシュリストに登録したユーザーには、そのゲームが発売した時、及び20%以上の割引がある場合のみ通知が届きます。ニュースフィードに通知が届くのはゲームを購入した後に限ります。(もしくはゲームのページに直接アクセスして読む)
・総ウィッシュリスト登録数は開発者かパブリッシャーのみ確認することができます
つまり、フォローという行為はニュースフィードでの可視性を増やしますが、ウィッシュリスト登録は発売時とセール時のみに可視性を増やします。そのため、ディベロッパーは「フォローとウィッシュリスト登録お願いします」とよく言うわけです。
フォロワー数とウィッシュリスト数の関係とは?
では、フォロワー数とウィッシュリスト数にはどのような関係があるでしょう。今回の調査では、113件の未発売ゲームを対象にアンケートを行いました。その結果、近年のウィッシュリスト数とフォロワー数の比率は9.6倍で、ウィッシュリストのコンバージョン率の中央値は20%と分かりました。(全データセットはこちらからご参照いただけます。)2019年までは、「ウィッシュリスト = フォロワーの5~6倍」と言われていました。しかし、その頃はリリース前にゲームを紹介する機会が少なかった時代です。現在、Steamゲームフェスティバルやパブリッシャとセール特集が導入されたため、ウィッシュリスト数とフォロワー数の比率が上りました。
今回の調査では、Steamで未発売のゲームのウィッシュリスト数の大半はフォロワー数の5~14倍で、平均して9.64倍、中央値を取ると9.6倍です。すべてのデータを以下の表にまとめました。
つまり、5,000フォロワーを持つ未発売ゲームは、この表の中央値にあたるゲームであれば、ウィッシュリスト数は48,000になります。ただし、低めに予測すると25,000登録、高めに予測すると70,000登録の可能性もあります。この結果はGameDiscoverCoの予想である6~10倍、平均して8倍より高いです。
データを細分化して検証
アンケートでは、ゲームのウィッシュリスト数とフォロワー数の比率の他に、Steamフェスティバル、またはリリース前のショーケース(パブリッシャー特集、テーマセール、イベントセールなど)への参加経験も調査しました。結果は以下になります。
両方に参加したことがない場合、ウィッシュリスト数の倍率は7.77倍です(これらの機会が存在する前に近いと言える)。一方Steamフェスティバルに参加した場合、倍率は10倍に上がり、さらに両方に参加した場合、倍率は10.45倍になります。
(リリース前のショーケースのみ参加した場合の倍率が特に高かった理由は分母が少ないからだと考えられます。)
また、ウィッシュリスト数を範囲で分類し、ウィッシュリスト数とフォロワー数の比率がウィッシュリスト数の大きさによって変わるかどうかを検証しました。その結果を以下の表に示します。
ウィッシュリスト数とフォロワー数の比率がこのような曲線を描いている理由は、リリース前ショーケースとSteam フェスティバルの両方に複数回参加することで、ウィッシュリスト数とフォロワー数の比率が上振れ、10,000~49,999のウィッシュリスト数にはなれるからです。しかし、10万以上のウィッシュリスト数に達成するためには、自然発生する関心が必要になってきます。
この表は経験と一致します。「80,000ウィッシュリストなのに、予想通りに売れなかった」とはあまり聞きませんが、20,000か30,000ウィッシュリストで発売したゲームが「予想通りに売れなかった」とはよく聞きます。
この調査結果の役立て方
以上の結果の使い道として、最新のウィッシュリスト数とフォロワー数の比率(9.6倍、5倍~14倍)で未発売Steamゲームのウィッシュリスト数を予測できます。これらの倍率は発売後、ウィッシュリストからの購入で、減ることがあります。また、発売後はレビュー数が見られるようになるため、ウィッシュリストの情報としての価値は一般的に減少します。
リリース時の実績に関しては、フォロワー数はウィッシュリスト数より正確な、発売前の関心指標だと考えられます。理由は2つあります。1つ目は、フォローという行為をしてもらうのは難しく、フォローに関する宣伝があまり行われていないため、フォロワー数は自然な関心を示すのに良い指標になります。2つ目の理由は検証が必要ですが、Steam フェスティバルとショーケースではブックマーク感覚でウィッシュリスト登録をしている人がたくさんいるからです。このようなプレイヤーは登録したゲームを深くチェックせず、そして発売時に購入する確率が低いでしょう。
しかし、ウィッシュリストに登録しているユーザーには、セールの時にそのユーザーに通知を送り続けることができるので、いつか購入につながる可能性があります。また、ウィッシュリスト登録者の多いゲーム、またはウィッシュリスト登録者数の増加速度が速いゲームは「人気の近日中リリース」に入る可能性が高いです。そのため、ウィッシュリスト数の最大化も重要です。
ただし、フェスティバルとリリース前のウィッシュリスト数が多ければ多いほど、コンバージョン率が低くなる可能性があります。こちらの表は購入件数とウィッシュリスト数の比率を示します。中央値はウィッシュリスト1件あたり0.2件の購入ですが、ご覧の通り最大値と最小値のギャップは大きいです。
つまり、企画する段階でウィッシュリスト数とコンバージョンの計算に注意するべきです。例えば、初週に5,000件を売りたい場合、フェスティバルとショーケースにたくさん参加したならば、25,000のウィッシュリスト登録ではなく35,000の登録が必要かもしれません。(理論上の計算でしかないですが、目安にはなります。ただし、ゲームのクオリティや他の要因にもよります。)
以上の結果が皆さんのゲーム企画にお役に立てれば幸いです。フォロワー数に対する初週の売上を検証する必要が残っておりますが、その調査は次回のお楽しみに。
元記事:Deep dive: how Steam followers and wishlists relate
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