『Hundred Days』:Steamウィッシュリストの推移と売上の相関を分析

[本記事は、GameDiscoverCoニュースレターの日本語翻訳です。GameDiscoverCoの許諾を得て翻訳・掲載しています。]

ワイン生産シミュレーションゲーム『Hundred Days』

最近、Broken Arms Gamesというイタリアのインディースタジオが自社のゲームリリース経験をツイッターで共有しました。そのゲームは『Hundred Days』というワイン生産シミュレーションゲームです。『Hundred Days』のリリース経験についてBroken Arms CEOのElisa Farinetti氏に詳細を伺いましたので、この記事ではリリースに関連するデータ及び学んだことを紹介します。

リリース時のウイッシュリスト数とのその推移

まず、『Hundred Days』はリリース時に60,000件のウィッシュリスト登録がありました。そのうち、最後の10,000件は「人気の近日中リリース」枠に入ってから獲得しました。『Hundred Days』のフォロワーデータから見ると、「人気の近日中リリース」枠に入る前のウィッシュリスト数とフォロワー数の比率は7.2でした。この比率はGameDiscoverCoのデータと比較したら、中央値の9.6倍より低いです。ただし、ウィッシュリスト数とフォロワー数の比率が低いと言っても決して悪いわけではなく、そのようなウィッシュリストの登録者傾向はブックマーク感覚よりゲームに対して感心があるから登録したことが多いです。

では、60,000件のウィッシュリスト登録まで『Hundred Days』の推移はどうでしょう。『Hundred Days』が2019年6月にSteamページを公開しましたが、リリースまでのウィッシュリスト数の推移は以下のグラフに示します。

Steamページの公開からリリースまでのウィッシュリスト数の推移

Steamページの公開から着実にウィッシュリスト登録が増えました。2020年3月と2020年6月と2021年2月の山はSteamゲームフェスティバルに参加したことによるものです(参加回数の制限がかかる前)。この3つの山を除き、リリースまでの期間一日あたり25〜50件のウィッシュリスト登録と3〜6人のフォロワー増加がありました。この定期的な自然登録は肝心です。

リリース時の販売数量と閲覧数

その結果、リリース時の5月13日から5月末までの間で『Hundred Days』は12,500件売れました。そのうち89.5%はSteamからの購入で、10.5%は他のストア(EGS, GOG, Stadia, Itch)からです。プレイヤーの出身国のトップ3はアメリカ、中国、ドイツとのこと。

ちなみに、『Hundred Days』は初週約9,700件売れました。つまり、ウィッシュリスト数のコンバージョン率は約16%です。「人気の近日中リリース」を除くと、50,000件のウィッシュリストの約20%になります。ちょうどウィッシュリストコンバージョン率の中央値です。

リリース時から5月末までの購入件数推移のグラフには着目すべき傾向があります。リリース直後に購入件数が下がりましたが、5月16日に少し回復しています。

リリース時から5月末までの販売数量の推移

Broken Armsのチームによると、初週の週末には(5月15日〜16日)、『Hundred Days』の「全てのレビュー」欄に日によって「ほぼ好評」か「賛否両論」が表示され、「ほぼ好評」の日は250万件の閲覧がありましたが、「賛否両論」の日は30万件の閲覧に落ちました。その増減によって購入件数が上がったり下がったりしました。特に「全てのレビュー」が「賛否両論」の場合、Steamでの露出が少なく、Steamのホームページからのアクセスなどが減少しました。

しかし、当時の露出が低かった原因がレビュー関係かSteam外のアクセス関係かは不明です。ただし、5月16日に大人気ユーチューバーNorthernLion氏に実況され、外部アクセスのブーストがありました。そのブーストによってSteamのアルゴリズムに認識され、Steam内で紹介されるようになったと推測されます。

NorthernLion氏の『Hundred Days』実況

『Hundred Days』の経験から学んだこと

このことから、リリース時のレビューを「ほぼ好評」以上に保ったほうがリリースの勢いが続き、閲覧数の減少を防げるでしょう。『Hundred Days』の場合はストーリーモードへの期待が高かったため、会話のスタイルと情報の密度が賛否両論で期待と現実のギャップが生じてしまいました。(翻訳担当者 Cheryl’sメモ:日本語のレビューを見ると翻訳の問題もあったようで、ローカライズも大事ですね。)ちなみに、6月10日時点ではレビューは278件、購入件数は11,200件でした。すなわち、レビュー1件あたり40.2件の購入があり、期待範囲の中央値(38件)に近いです。

現在『Hundred Days』の「全てのレビュー」は72%「ほぼ好評」ですが、ゲームの内容がユニークで奥が深く、追加コンテンツも予定されているため、レーティングがこれから上がると期待されています。

ウイッシュリストはいくつなら足りる?

『Hundred Days』のウィッシュリスト数と初週購入件数を見てきましたが、皆さんはゲーム開発をしているとき、目指している購入件数にウィッシュリスト数が足りているか気になりませんか。そこで、Brave At Nightというインディースタジオがツイッター純利益を計算するスプレッドシートをシェアしました。

ウィッシュリスト数とコンバージョン率によって利益を計算できます。

このスプレッドシートは、パブリッシャーと契約した場合のものです。「資金」はパブリッシャーからの開発資金提供があった場合に入力します。GameDiscoverCoや他者のデータにもとづいて(初週と初年の売上倍率、ウィッシュリスト数と初週のコンバージョン率など)、複数のシナリオを計算してくれます。パブリッシャーが提供した資金を回収する際に割増をする率はありますが、可変なリクープ率は考慮されていません。

また、このスプレッドシートの「Real Price」には、次のコストを含んでいます。

  • 他国によっての為替変動
  • 割引
  • 消費税

これらのコストはよく知られていない、もしくは忘れられることの多いコストなので、ご注意ください。利益は単に
①$20(ゲームの価格) x 5,000件(購入件数) = $100,000
②$100,000 – 30%(パブリッシャーの取り分)
というわけではありません。

気になっている方がいれば、そのスプレッドシートを複製して、数字を変えてみたらいかがでしょうか。皆さんの計算と計画に役立てれば幸いです。

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Cheryl Ng

翻訳者・イラストレーター・謎クリエイター。主にゲームと謎を翻訳、時々イラストと謎を制作

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