Steam Next Festでのウィッシュリスト獲得の分析(2022年6月エディション)

[本記事は、How To Market A Gameブログ(以下、HTMAG)の日本語翻訳です。How To Market A Gameの許諾を得て翻訳・掲載しています。]

年に3回、リリース前のゲームが参加できるSteam Next Festが開催されます。2022年6月のNext Festにおいて、参加したゲームの1056本の中、65本の開発者にNext Festのデータを共有していただきました。(この計算によると、サンプルサイズは6.1%ですが、誤差は12%だそうです。)この記事では、集めたデータを紹介しながら、参加したゲームのウィッシュリスト獲得の分析を行います。

今回のフェスは過去のフェスに比べてどうだった?

まず、調査したゲームの獲得したウィッシュリストを以下のグラフにしました。

2022年6月のSteam Next Festで各ゲームの獲得したウィッシュリスト数

HTMAG著者のZukowski氏が2020年からSteam Next Festのデータを集めており、2020年6月、2021年6月及び2022年6月のデータを以下にまとめました。どうやらSteam Next Festは開発者にとって良いイベントになっているようです。

参加したゲームの総数調査したゲームウィッシュリストの平均獲得したウィッシュリスト
(70パーセンタイル)
獲得したウィッシュリスト(中央値)獲得したウィッシュリスト(30パーセンタイル)インプレッション(中央値)閲覧数(中央値)
2020??614,0461,8705201761,519,6974,748
2021696423,7522,169957550585,7437,970
20221056654,8032,9641159434511,0915,654
Steam Next Festの2020年〜2022年のデータ

ご覧の通り、参加したゲームの総数が過去最多にもかかわらず、獲得したウィッシュリストの中央値が過去のNext Festより増えています。

このデータの前提として、「人気の近日登場」や「ウィッシュリスト上位」など上位に表示されているゲームの開発者に声をかけたので、データの平均は中央値より高くなっています。そのため、参考として30th percentileのデータを追加しました。2021年のほうがウィッシュリストを多く獲得できましたが、約120件の僅差です。

フェスでウィッシュリストを多く獲得する方法

おそらく開発者の皆さんが一番気になることはウィッシュリストを多く獲得する方法でしょう。その方法は以下のフロントページのウィジェットに表示されることです。 

フロントページに表示されるランキングウィジェット

このウィジェットはフェスの一番目立つウィジェットです。そこに3つのタブがあります。
・「人気の近日登場」
・「ウィッシュリストで最も人気の近日登場ゲーム」
・「体験版のデイリーアクティブプレイヤー数」

各タブに「もっと表示する」ボタンをクリックする前に、12本のゲームを表示しています。各ランキングは随時更新されており、実況者やメディアなどSteam外でのマーケティングによりランキングがかなり変わります。ちなみに、ジャンルごとのサブページにもそのジャンルのみのトップゲームを表示するウィジェットもありましたが、調査したゲームの中でどれぐらいサブウィジェットに表示されたかは定かではありません。

メインページの各タブのトップ12に表示されたことのあるゲームに声をかけて、その中7本からデータを集めました。フェス中に獲得したウィッシュリスト数はいくつかというと、15,059 ~ 43,098件でした。

メインページのウィジェットに表示される方法

その貴重なウィジェットの中に入るために、どうすればよいでしょうか?調査したゲームの開発者にフェス参加前のウィッシュリスト数と7日間の推移を聞いて、そのデータに基づいて以下のことを推測しました。

ウィッシュリストで最も人気の近日登場ゲーム

「ウィッシュリストで最も人気の近日登場ゲーム」タブに表示されるためには、すでに150,000件のウィッシュリスト登録がないと難しそうです。『Terra Invicta』は「ウィッシュリストで最も人気の近日登場ゲーム」タブでは4位でNext Fest参加前は252,343件のウィッシュリストを持っていました。『Roots of Pacha』は6位でフェスに参加する前は162,126件のウィッシュリスト登録を持っていました。12位のゲームのウィッシュリスト登録者数は分かりませんが、トップ12位に入るため150,000件くらいは目指さなくてはなりません。もちろんわかっていますが、この数のウィッシュリストは獲得するのが難しいため、Steam Next Festの参加タイミングの設定をできればリリース直前に設定することをおすすめします。

ちなみに、調査したゲームのフェス参加前のウィッシュリスト数(赤い線)とフェス参加で獲得したウィッシュリスト数(青い棒)を以下のグラフにしました。

調査したゲームのフェス参加前のウィッシュリスト数(赤い線)とフェス参加で獲得したウィッシュリスト数(青い棒)

傾向として、ウィッシュリスト登録者数が多ければ多いほど、期間中にウィッシュリストを多く獲得できたようです。しかし、例外があります。グラフの中央あたりに見えますが、ウィッシュリスト登録者数が結構いたものの、フェス中のウィッシュリスト獲得は比較的に低かったタイトルがあります。この現象のZukowski氏の仮説として、元々持っていたウィッシュリスト登録者数が古かったため、他のゲームほど「伸びる速度」が足りなかったと考えています。詳しくは次で説明します。

人気の近日登場「伸びる速度」とも言える

「人気の近日登場」のタブに関しては、フェス前のウィッシュリスト登録反応が考慮されます。どれぐらいの期間が対象なのかは定かではありませんが、フェス前の一週間のウィッシュリスト獲得数を調査して以下のグラフにしました。青い棒は前のグラフと同じく、フェス中で獲得したウィッシュリスト数で、赤い線はフェス前の一週間で獲得したウィッシュリスト数です。

フェス中で獲得したウィッシュリスト数(青い棒)とフェス前の一週間で獲得したウィッシュリスト数(赤い線)

ご覧の通り、フェス前の一週間の「伸びる速度」がフェス中の伸び筋を前のグラフより示唆します。明確な例外はほぼありません。それで、皆さんの気になるランクインするためのウィッシュリスト数は、おそらく3,000くらいでしょう。

フェスでウィッシュリストを一番多く獲得したゲームは『Roots of Pacha』で、フェス前の一週間は18,510件のウィッシュリストを獲得していました。しかし、前の週に2,190件のウィッシュリストを獲得したゲームも「人気の近日登場」に表示されました。ただ、2,000件代のウィッシュリストを獲得したゲームはいくつかランクインできていないため、Steamのランクイン基準は一週間以上かもしれません。そのため、念の為フェス前の一週間は3,000を目指しましょう。

150,000ウィッシュリストに比べたら、3,000件を獲得するほうが現実的です。たとえばゲーム配信者に実況してもらったり、他のイベントに参加したりすることで、何千かのウィッシュリスト獲得を頑張ってみましょう。このため、Steam Next Fest前の一週間か二週間に、たくさんの配信者に声をかけてみると良いかもしれません。同時に、Facebook、RedditやTikTokで宣伝したり広告を打ったりすることもできます。有料広告ウィッシュリスト1件獲得のコストは1ドルくらいと言われています。このためかなり広告費がかかるかもしれませんが、ランクインするメリットは20,000ウィッシュリスト獲得につながるということです。

メインウィジェットにランクインする方法をまとめると:

  • 参加する前に、合計150,000件のウィッシュリストを獲得
  • フェス前の一週間は3,000件のウィッシュリストを獲得

フェス前にマーケティング

調査のアンケートに、「フェス前に何かマーケティングをしたか」という質問があります。それに対して、ウィッシュリストを多く獲得したゲームからの返事はこちら:

デモの延長版をインフルエンサーに送りました。(GmanLives, Icarusliv3s, Civvie11, JaredTheGamingdragon)

Selaco』の開発者 (フェス中に獲得したウィッシュリスト:20,700件)

フェスの一週間前、新しいデモをリリースしました。そして、前回のデモを実況してくれたユーチューバーに声をかけて、一人以外全員は新しいデモを実況して、デモのリリース日に投稿してくれました。

Dome Keeper』の開発者 (フェス中に獲得したウィッシュリスト:20,057件)

5月末に開催された「Dreamhack Beyond」(一週間のオンラインゲームイベント)に2日間参加して、600ウィッシュリストを獲得しました。そして、Twitter、9GAG、Redditでデモ版を発表しましたが、少し効果はありました。最後に、Next Festの直前に、メディアや配信者など800件の連絡先を集めて、全員にデモについてメールしました。

We Who Are About To Die』(フェス中に獲得したウィッシュリスト:12,461件)

その一方、ウィッシュリスト獲得が少ないほうのゲームの回答を見たら、ほとんどの回答は「何もしていない」、「いいえ、でも(マーケティングを)するべきだった」、「Twitterでデモのリリースについて投稿した」でした。

もちろん、マーケティングと実況者への連絡をしても数百ウィッシュリストしか獲得できなかったゲームはいくつかありました。ただ、一般的にトップランクのゲームはNext Festのずっと前からたくさんのマーケティングをしていました。すでに配信者と関係を築き、すでに接点のある実況者に再度声がけをしました。

「良いゲームは勝手に売れる」とは真逆ですね。良いゲームが更に売れるため、マーケティングはいくらでも必要です。

フェス後、デモ版をどうする?

アンケートにあるもう一つの質問は「フェス後、デモ版を公開のままにしますか」です。回答は以下のとおりです。

「フェス後、デモ版を公開のままにしますか」に対する回答
  • Unsure(分からない) = 3.1% (まだ検討中か様子見)
  • No(いいえ) = 7.8%
  • Temporary(一時的に公開)= 10.9% (念の為、実況者がピックアップできるように、しばらくは公開のままにしますが、その後非公開にします。)
  • Yes(はい) = 78.1%

「はい」と答えた人の理由はこちら:

Steam内での成長が大分増えましたので、おそらくSteamウケしているでしょう。デモ版の前は自然成長が全くありませんでした。DreamhackとNext Festの間、ウィッシュリスト登録が1日5〜10件から100件に増えました。

We Who Are About To Die』(フェス中に獲得したウィッシュリスト:12,461件)

はい、まだプレイヤーが遊んでいるし、デモ版が公開される前よりウィッシュリストが増えたし。

Fueled Up』(フェス中に獲得したウィッシュリスト:9,460件)

インフルエンサーが見つかるように、公開にしておきます。すでに1人がピックアップしてくれました!

名無し開発者(フェス中に獲得したウィッシュリスト:5,675件)

何らかのデモ版を公開することが長期的にコミュニティーを築くことに効果的だからです。2021年8月中旬から掲載していますが、自分の主張を証明するデータは1つしかありませんが、我々のDiscordサーバーの参加者が2021年後半から段々増えてきたことです。ほとんどの新しい参加者は2021年11月のデモ版にあるリンクから来ています。

Fech The Ferret』の開発者 (フェス中に獲得したウィッシュリスト:1,738件)

配信者が定期的に実況してくれるし、新しいプレイヤーが見つけて遊んでくれているし(平均デイリーアクティブユーザーが10,000以上)、公開のままです。ウィッシュリストがおかげで増えています。 (フェス後、更に+7,000件)

Brotato』 (フェス中に獲得したウィッシュリスト:15,059件)

一時的に非公開にしましたが、また公開しました。その理由は、デモ版を非公開にしてもストアから消えないこととSteamでデモ版が「期間限定」を発表していないため、クレームが来たからです。(手動で発表するのではなく、自動で「期間限定」と強調するべきです)また、他のイベントにも参加するから、公開のままにしておきます。その語、非公開にするかどうか様子見してから決めます。ただ、何故かは説明するのが難しいですが、自分のゲームにとって、デモ版の公開がかなり効果的です。

dotAGE』 (フェス中に獲得したウィッシュリスト:3,693件)

「いいえ」と答えた人の理由はこちら:

非公開にしたのはまだ初期の段階で最終的なゲームの代表になっていないからです。デモ版を公開した理由はシステムのフィードバックを得るためと宣伝をするためでした。

名無し開発者(フェス中に獲得したウィッシュリスト:427件)

ちなみに、Steamのユーザーは特にストラテジー・シミュレーターが好き

Steamで貴方のゲームがどのタブに表示されるか選べます。

Steam Next Festでのジャンル別メニュー

そして、ジャンル別の獲得したウィッシュリスト数の中央地をグラフにしました。青い棒は獲得したウィッシュリスト数で、赤い線は調査した65件のゲームのジャンル別の割合です。(注:各ゲームは複数ジャンルに所属することができますので、合計数は65を超えています。)

ジャンル別の獲得したウィッシュリスト数の中央地

獲得したウィッシュリスト数の中央地が一番高いゲームは1位:シミュレーション、2位:ストラテジー、3位:RPGです。獲得したウィッシュリスト数が少ないジャンルはパズル、プラットフォームとVRです。もちろん、このサンプルサイズはたった65件で少ないものですが、他のデータと一致しています。

直感的なものとして、Steam Next Fest 2022年6月のページにアクセスしてメインウィジェットを見てみると、プラットフォームゲームはたった2つです。パズルゲームはありません。

もしパズル、プラットフォームやVRゲームを作っていて、ウィッシュリストが少ないことで悩んでいるなら、理由は単純にSteamのユーザーの好みではないからかもしれません…。

まとめ

この記事をまとめると、Steam Next Festに参加する予定があるなら、するべきことは以下の通りです。

  • 常にマーケティングするべきですが、フェスの1ヶ月前に特にマーケティングに注力してください。フェス前の一週間に3,000件のウィッシュリスト獲得を目指しましょう。
  • リリース前にできるだけ遅いNext Festに参加すること。(合計150,000件のウィッシュリストを獲得済みでしたら、メインウエットにランクインできそう)
  • デモ版を公開しても良いなら、継続的に公開するのがウィッシュリスト獲得につながります。

How To Market A Gameについて

How To Market A Gameはゲームマーケティング向けの記事を掲載しています。Discordサーバーも公開しており、インフルエンサー探しやイベント探しのチャンネルなどがあります。興味のある方はぜひご参加ください。

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元の記事:
JUNE 2022 STEAM NEXT FEST: HOW DID THESE GAMES EARN SO MANY WISHLISTS?
https://howtomarketagame.com/2022/07/11/june-2022-steam-next-fest-how-did-these-games-earn-so-many-wishlists/

Cheryl Ng

翻訳者・イラストレーター・謎クリエイター。主にゲームと謎を翻訳、時々イラストと謎を制作

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