Steamにおける人気ジャンルとその分析 2022年版
[本記事は、How To Market A Gameブログ(以下、HTMAG)の日本語翻訳です。How To Market A Gameの許諾を得て翻訳・掲載しています。]
ゲームの「ジャンル」と「絵柄」が決まった瞬間は、ほとんどのマーケティングの決断をしたことと同意義です。ゲームの質も大事ですが、それ以前ゲームのジャンルによってどんなプレイヤーが遊ぶかが決まります。2019年から現在に至るまで、32,202本のインディーゲームがリリースされました。その中、18,563本が10件以上のレビューを獲得しています。レビュー数が少ないということは、遊んでいるユーザーも少ないということです。どうやらプレイヤーには好みの傾向があります。今回の記事ではSteamで人気のジャンルと、そのデータを紹介します。
データ元とその研究方法
本文に入る前、前提として研究方法を共有します。
- VGI proからのデータを利用している
- 対象のゲームは2019年〜2022年にリリースされたゲームのみ
- また、対象はインディーゲームのみ(AAとAAAゲームのデータを除外)
- データに入れたジャンルはインディー開発者がよく作っているジャンルを選んだ
- ほとんどのグラフではレビューが10件以下のゲームを除外した(品質の低い量産型ゲームにデータが偏らないように)
Steamでの人気ジャンル
Steamで昔から人気のジャンルは、深い戦略性のあるゲームとシミュレーションゲームです。 Steamのプレイヤーはやりこみ要素と複雑な戦略を好むようです。例えば、『Civilization』のような”4X”(”eXplore”:探検、”eXpand”:拡張、”eXploit”:開発、”eXterminate”:殲滅)のゲーム、『Timberborn』など街づくりゲーム、『Valheim』などのサバイバルクラフト、『Slay The Spire』などのローグライクデッキ構築ゲームです。
HTMAGの著者であるZukowski氏にとって、多くのSteamのプレイヤーは何十時間も遊べる複雑なゲームを好むようです。彼らは、『Counter Strike GO』や『Call of Duty』などTwitchで人気のFPSではない限り、必ずしも素早いアクションやアーケードゲームを好むわけではありません。後ほど「勝者総取りのジャンル」の部分で説明します。
2019年1月〜2022年4月までのゲームを対象に、ジャンル別の売上の中央値(赤い線)とリリースされた数(青い棒)を下のグラフで示しています。つまり、左のほうにあるゲームはより売れているゲームです。

このグラフから見ると、売れ行きの思わしくないジャンルでは需要より供給が多いようです。そのジャンルを下記にまとめました。
- 2Dプラットフォーム・ゲーム
- 3Dプラットフォーム・ゲーム
- VR
- FPS
- シューター
- タワーディフェンス
その他興味深い点
- 一番多いゲームのタグは「性的表現」で、売上は意外とマシなほう
- ローグライクデッキ構築は一番人気のあるタグで、4Xより売上の中央値が高い!しかも、ローグライクデッキ構築としてリリースされたゲームは過去3年間でたった99本で、需要が供給より遥かに高いようだ。
- ビジュアルノベルが2番目に多いジャンルで、確かに需要はあります。
「でも『〇〇』も大ヒットしたけど」
Steamで人気のジャンルの話になると、よく「でもVRの『Superhot』は売れてるよ」や「でもプラットフォームの『Celeste』は大ヒットしたよ」と指摘されます。もちろん、どのジャンルにも一番売れているゲームがあります。ただし、トップ1%のゲームが例外なのです。例外だけを見ると、「生存者バイアス」がかかってしまいます。
例外で結論を出すより、データを確認しましょう。各ジャンルのトップ1%の売上と中央値の売上を下のグラフにしました。

トップ1%の売上順で見ても、どうやらVRやプラットフォームなどはなかなか売上が伸びていないほうです。
勝者総取りのジャンル
トップ1%だけが売れていて、そのジャンルの他のゲームがあまり人気ではない場合、そのジャンルは「勝者総取り」のジャンルと言えます。「勝者総取り」のジャンルは少ないですが、一番当てはまる例は「バトルロワイヤル」です。
『Fortnite』、『Apex Legends』、『PUBG』など話題の大ヒット以外、 着実なファンベースを持っている「バトルロワイヤル」ゲームが少ないです。なぜ「勝者総取り」が競い合うマルチプレイヤーで定番なのかというと、ファンの時間が限られており、1つのゲームに専念しがちだからです。また、マルチプレイヤーゲームのネットワーク効果で仲間と敵が増えれば増えるほど、そのゲームが楽しくなる仕組みにも関係しています。
各ジャンルの売上を下記のようなローソク足チャートとして示したら、「勝者総取り」のジャンルは基本的に上ヒゲが長いローソクになり、見やすくなります。
※ここでローソク足チャートを使うのが変かもしれませんが、Google Sheetsの制限でローソク足チャートが一番分かりやすかったため使用しました。


例えば、「バトルロワイヤル」のジャンルを見ると、トップ1%は非常に高いですが、中央値と第1四分位数が低くて差異が大きいです。
その他、「勝者総取り」の特徴を持っているジャンルはVR、 FPSと3Dプラットフォームゲーム。FPSはよくマルチプレイヤーなので、「勝者総取り」になりがちです。
「勝者総取り」ジャンルの反対のジャンルは、対象のプレイヤーが欲張りのプレイヤーです。チャートでの特徴として、ローソクが短いです。このジャンルのファンはそのジャンルにあるゲームをすべて遊び尽くしたいと考えられます。このジャンルでゲームをリリースするのは「バトルロワイヤル」のジャンルほど競争が厳しくありません。ゼロサム・ゲームではないジャンルです。その例は「ローグライクデッキ構築」、「ビジュアルノベル」、「パーティーゲーム」、「4X」です。
YouTubeでのジャンルごとの閲覧数
人気ジャンルの他の証拠として、YouTubeでの閲覧数があります。
こちらのグラフは2021年冬のSteam Next Festのデータです。

次のグラフは2021年夏のSteam Next Festのデータです。

両方のグラフから、ストラテジー、RPGとアクションゲームの動画は多く閲覧されましたが、パズルとプラットフォームゲームの動画はそこまで人気ではありませんでした。
デモの人気度
そして、Next Festといば、もう1つのデータがあります。2022年2月Next Festでは、デイリーアクティブプレイヤーの多いデモのランキングが追加されました。すべてのデモは無料なので、価格の影響がありません。

トップ12本が表示されており、その中
- 7本はストラテジー、街づくり、シミュレーションのタグを持っていた
- 4本はホラーゲーム
- 1本はアクション・アドベンチャーゲーム
- プラットフォームゲームはなし
「もしかして、その理由がストラテジーやシミュレーションのゲームが多すぎたからなのではないか」と思っている方もいるかもしれませんが、ゲームの割合をお見せします。次のスクリーンショットを見ると、一番多かったゲームはアドベンチャー(290本)やアクション(290本)で、ストラテジー(153本)とシミュレーション(137本)はランキングの真ん中あたりにありました。

月ごとのトップリリース
毎月、Valveによりトップ20本のゲームについてブログ記事が投稿されます。2022年4月の記事はこちらです。過去6ヶ月のゲームタイトルを集めて、そのゲームのメインになりそうなジャンルを2つに絞り、各ジャンルのゲームの数をグラフにしました。

トップ10のジャンルはよく見かけるジャンル:RPG、街づくり、ローグライク・ローグライト、ストラテジー、シミュレーションです。そして、数の一番少ないジャンルはVR、シューター、マッチ3(パズル)です。
1点注目すべき点は4Xゲームの数も少ないですが、毎年リリースされている数が少ないため、競争が激しくありません。
また、Zukowski氏はプラットフォームゲームはマーケティングしにくいジャンルだとよく主張していますが、いくつかがトップ20にランクインしました。
- 『Rogue Legacy 2』 (ローグ × プラットフォーム)
- 『Have a Nice Death』(ローグ × プラットフォーム)
- 『Infernax』 (メトロイドヴァニア × プラットフォーム)
- 『OlliOlli World』 (スポーツ × プラットフォーム)
- 『Hidden Deep』 (ホラー × プラットフォーム)
- 『Supraland Six Inches Under』 (メトロイドヴァニア × プラットフォーム)
基本的に、メトロイドヴァニアとローグがSteamユーザーの好きな深いやりこみ要素を加えるため、売れているプラットフォームゲームはメトロイドヴァニアとローグと組み合わせたゲームが多いです。過去6ヶ月のトップ20にはパズルプラットフォームは1つもありませんでした。
人気ジャンルはただの流行りなのか?
結論として、競争が激しくない売れているジャンルは、ほとんどストラテジー、シミュレーション、街づくり、クラフトやローグなどのゲームです。その一方、競争が激しいがあまり売れていないジャンルはパズル、プラットフォームとVRです。
「自分のゲームのリリースはあと3年ぐらいかかるから、そのときの人気ジャンルは変わるだろう?」とよく聞かれます。確かに、ゲーム業界のペースが速くて、技術がどんどん進歩していきますが、基本的にプレイヤーの好みはそこまで変化しないようです。PCゲーマーは昔から深いやりこみ要素のあるゲームが好きと考えられます。Zukowski氏自身は16歳のとき、好きのゲームは『Civilization II』と『SimCity』でした。そして、約30年後、人気ジャンルはまだ4X、ストラテジーと街づくり。ローグは大型コンピューターで開発され、普及されましたが、何10年後、人気度をキープしています。その一方、プラットフォームゲームはゲーム機でよく遊ばれていますが、PCだとそこまで人気を集めなかったようです。
また、人気ジャンルの入れ替わりはあまりなく、変化は新しいジャンルが人気ジャンルに加わることです。例えば、デッキ構築とオープンワールドサバイバルクラフトは大変人気ですが、比較的新しいジャンルです。
最後に
ゲームのジャンルにはマーケティングリスクがありますが、自らの表現としてゲームを作るなら、データからのジャンルの選択には意味がありません。ただ、人気ではないジャンルでゲーム作りの真っ最中の場合は、経済的なリスクを理解しながらゲームを作ってください。そのジャンルのプロジェクトの範囲を広げたり、自分の財産を大きく投資したりする場合、リスクを十分に理解してからご判断ください。この記事でジャンルの影響を少しでも把握していただければ幸いです。
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元の記事:
WHAT GENRES ARE POPULAR ON STEAM IN 2022
https://howtomarketagame.com/2022/04/18/what-genres-are-popular-on-steam-in-2022/
MORE EVIDENCE OF WHICH GENRES STEAM SHOPPERS LOVE TO PLAY
https://howtomarketagame.com/2022/05/30/more-evidence-of-which-genres-steam-shoppers-love-to-play/