SNKのDiscord運用術―立ち上げから失敗談までを語る【CEDEC2022レポート】

コミュニティマネージャの重要性

しばらく前から、ゲーム業界ではコミュニティマネージャという職種ができるようになりました。SNSなどオンラインでのコミュニケーションが発達し、またゲームが発売後もアップデートを行ったり、DLCの販売を行ったりする「LiveOps」に移行しました。ゲーム開発会社は、ユーザーとの中長期的なコミュニケーションが必要になっています。そしてインディーゲームにおいても例外ではありません、発売前からのゲームファンの盛り上がりを作ったり、長期化する開発期間の中でプレイヤーの興味を維持するなどの機能があり、コミュニケーションはますます重要になっています。

コミュニティの構築とDiscord

CEDEC2022では、ゲームにおけるコミュニティ運営を「Discord」を使って行った事例として、セッション「Building a Community on Discord / Discordを使用してコミュニティの構築」が実施されました。

登壇者はSNKコミュニティマネージャーのJonathan Campana氏。海外向けコミュニティ構築のメリットと苦労について解説を行っていただきました。本セッションはdiscordに触れたことがない初心者にもわかるような内容になっており、多くのインディゲームディベロッパーの参考になることと思います。

なお、本セッションはCEDECの資料アーカイブである「CEDiL」にて資料が公開されています。あわせてご参照ください。https://cedil.cesa.or.jp/cedil_sessions/view/2634

読者の中にはDiscordは使うけど、運用をしたことが無い方という方もいるのではないでしょうか。本記事では講演内容と筆者のDiscord運用経験を交えてお伝えします。

さっそく見ていきましょう。

Discord公式サイトから。様様なゲームのコミュニティとして活用されている。人数にも注目。

SNKについて

SNKは新日本企画としてスタートし、40年を超える歴史を持っています。1990年代には1つのアーケード筐体に複数のゲームを導入できる「ネオジオ」は革新的で大ヒットしました。90年代後半からは、『メタルスラッグ』や『The King of Fighters』『サムライスピリッツ』などをヒットさせ、アーケードゲームで存在感を示していたものの、2000年代からはSNK自身も、アーケードゲーム市場も低迷し、苦難の道を歩みます。近年は再び活発に動きを見せており、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』にテリー・ボガードが参戦したり、『KOF』新作リリースや『餓狼伝説』の新作発表などで知られます。

SNKがDiscordコミュニティを作るまで

2000年代からの低迷の中、2019年にコミュニティマネージャに就任したカンパナ氏はどのようにDiscordコミュニティを作っていったのでしょう?

SNKは数多くのゲームを世に出しており、海外に多くのファンを抱えています。彼らとのコミュニケーションに最適なツールは何か。カンパナ氏はこの問いにDiscordを選びます。

Discordは海外では非常に利用されている(1億人以上が利用している)ことや、元々カンパナ氏が運営経験を有していたことや、コミュニケーションに優れたツールであること、話題を複数のトピックに分けることも可能であることに着目。採用に至りました。

しかし、調べていくとカンパナ氏は既にDiscord内には、すでにSNKの個々のタイトルファンサーバーが数多く存在していることに気づきます。これらの既存ファンサーバと公式サーバをどのように住み分けるのかという課題に対し、カンパナ氏は一つの決定をします。

それは、既に存在しているサーバーからファンを奪わないということです。彼らは自分たちでこれを築き上げたので、私が横から入って奪う権利はないと考えました。

Building a Community on Discord / Discordを使用してコミュニティの構築から

カンパナ氏は、各ファンサーバーのモデレータにコンタクトを取り、公式のサーバーを構築することを伝えコミュニケーションを取っていくことで、既存のコミュニティと良好な関係を築いてオフィシャルサーバの構築に成功しました。これは賢明な判断だったと振り返ります。既に出来上がったコミュニティに対し、公式のコミュニティが後からやってきてファンを奪ってしまっては、軋轢を生むでしょう。

なお、現在SNKの公式サーバーには1万人以上の参加者がおり、SNKの海外人気がよくわかります。

SNKサーバーの機能とやるべきこと、やってはいけないこと

続いて、カンパナ氏はSNKサーバーを見ながらDiscordについて解説を行います。

実際のSNKサーバーの画像を使い、右側に参加ユーザーが並んでいることや左に話題ごとに分けられたチャンネルが用意されていること、リンクを作成すれば友人を誘うことができることなど、基本的な解説を行いました。なお、「サーバー」と呼ばれていますが、自身のサーバーを立ち上げる時にネットワークなどの知識は必要ありません。このあたりは、Discordの基本的な利用方法と大きく変わりません。

Discordは他のSNSなどと連携ができるため、公式Twitterのツイートを自動投稿することができます。これによって、いち早くサーバー内のメンバーに情報を伝えることができます。また、メンバーも絵文字などで喜びを現すなど盛り上がりを見せます。他にもbotやプラグインも数多く開発されており、カスタマイズも可能です。

SNKサーバで過去に起きたトラブル

盛況なSNKサーバーですが、最初からすべてうまくいっていたわけではありません。カンパナ氏は、運営当初はロールを設定していませんでした。そのため誰でも参加でき、スパマーやbot、悪意のあるユーザーが入ってしまったと初期の失敗が連続しました。あとからロールを設定することで、こういった人を防ぐことができましたが、通知のpingを連発するなど嫌われる行為を把握していなかったので、サーバーからの脱退者が出てしまったと苦い経験を語ります。また、悪意のあるユーザーの中には100万人のフォロワーを有する人物が居たこともあり、対応に苦慮したと述べていました。

これは新しいツールを使う時には、ユーザーがどのような活動が可能であるのかどうか、権限管理を慎重に行っていかなくてはいかないと考えています。筆者の個人的な経験としては、海外のサーバーに入ると時差の問題で夜中に通知が来ます。配信する側になると、いつ投稿するかを考えることが運営の上で大切だと感じます。

モデレータ(共同管理者)の重要性

Discordでは、そのサーバー内で信頼のおけるユーザーに運営の一部を任せる方法が取られています。これを一般に「モデレーター」と呼んでいます。開発者がDiscordの応対に時間を取られ過ぎないようにするためにはとても有効な方法ですが、カンパナ氏は次のように警鐘を鳴らします。

彼らの時間や労力を当たり前のように思わないでください。彼らはすべてのサーバーの縁の下の力持ちですから彼らを満足させることは必須です。

いつ、だれにモデレータを頼むのかも難しいですが、運営を続けるのはさらに難しいことがわかります。モデレータに任せきりにしてしまうのは(たとえ開発が佳境に入ってしまうなどの理由でも)新たな問題を生じさせることになりそうです。

インディゲームディベロッパーがDiscordを運営する方法

ここまではSNKの事例を見てきましたが、インディゲームディベロッパーにとってはSNKのように1万人もの参加者が自由に話をし、モデレータを任命して管理をするような運用は少々大げさかもしれません。

カンパナ氏はDiscordの運営方法にもいくつか種類があることを解説し、そのうちの一つとして、サーバー参加者同士はチャットなどをできず、ディベロッパーからの情報を受け取るのみのサーバー運用もあると述べています。カンパナ氏はこのタイプの運用メリットとして、比較的運用が容易であることを挙げています。

日本のゲームディベロッパーでも、この方法を採用しているところがあります。そのサーバーでは、ディベロッパーが新情報を発表したときには参加者は思い思いの絵文字でリアクションし喜びを現しています。また、投稿は日本語と簡体字で行われており、そのディベロッパーが自分のターゲットを決めて運用していることが伺えます。

Discordに触れてみよう

ここまで読んで、自身もDiscordサーバーを立ててみようと感じた方で、まだDiscordに触れていない方は、まず参加者となって自分の好きなゲームのサーバに参加してみるのが良いと思います。Discordに慣れてからでも遅くはありませんし、先輩たちがどのように運用しているのかを知ることも大切だと思います。Discordは東京ゲームショウ2022にもブースを出展し、製品デモを実施しました。日本でも着実に利用者を増やしているようです。

IndieGamesJp.devでは、「インディーゲーム開発者のための「コミュニティー向けDiscord」の作り方」という記事を公開しています。みなさんのゲームのサーバー構築にぜひ役立ててください。

CEDEC公式サイトはこちら

HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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