インディーゲームの価格設定はどのようにすればよいのか、4つのポイントから最適解を見つける方法
[本記事は、How To Market A Gameブログ(以下、HTMAG)の日本語翻訳です。How To Market A Gameの許諾を得て翻訳・掲載しています。]
以前の記事で、ゲームコンサルタントのZukowski氏がビデオゲームの価格を調査した結果、AAAゲームの価格が高騰する一方で、インディーゲームの価格はほぼ変わっていないことが分かりました。そして、100件以上のレビューを獲得しているインディーゲームは、大体AAAゲームの価格の半分ぐらいであることを発見しました。
では、ゲームをリリースする前の段階では、どのように価格設定をすれば良いでしょうか?
参考として、この記事では価格設定に関する4つのポイントを紹介します。
#1. ほとんどの人はセールでゲームを買う
Steamのアルゴリズムはセールを中心に作られています。ゲームに20%以上の割引がある場合、Steamはウィッシュリストに登録している人へメールを送ります。また、SteamでDaily Deal (日替わりセール)や他のポップアップなどで紹介される条件として、割引が必要です。セールなしには特別に紹介してもらえません。
もちろん、このような価格競争に反対する開発者もいます。割引し続けることに反対して「絶対に割引しない」とツイッターで主張していれば、プレイヤーがいつかゲームに気づいて定価で買ってくれるのではないかと思っているかもしれません。ただし、Steam上には多くのゲームが販売されており、プレイヤーは特定のゲームを覚えているわけではありません。それどころか、「絶対に割引しない」ことなんて覚えないでしょう。残念ながら、割引が定期的に必要です。
そのため、価格設定をするとき、20%〜30%の割増での価格設定がおすすめです。
#2 似ているゲームを調査
過去3年間でリリースされたゲームを調べて、あなたのゲームと似ているジャンルと規模のゲームをリストアップしましょう。AAAゲームやインディーゲームのヒットだけでなく、あまり売れていないゲームや、あまり有名ではないが実は売れているゲームもチェックしましょう。どう調べばよいかというと、3つの方法があります。
①あなたのゲームのSteamページにアクセスし、「類似品」のところにある「全件表示」をクリック
②または、 SteamDBのタグ検索ページで一番当てはまるジャンルの最近のリリースを検索
③もしくは、Steam上のインタラクティブレコメンダーを使い、似ているゲームを絞る
そして、以下の列を持つExcelシートを作ります。
- 対象のゲーム
- Steamページへのリンク
- 価格
- ゲームのクオリティー(自分のゲームと比べて、ざっくり「より高い」、「より低い」、「同じくらい」で良い)
- コミュニティーの評価
「コミュニティーの評価」を調べるためには、各ゲームのレビューを見ます。たくさんのプレイヤーが「オススメできない」や「コスパが悪い」などのコメントを書いていますか。これはメモすべき点ですね。
10件くらいのゲームと比較したら、大体の価格相場が分かるはずです。比較した対象の価格が割安だと思った場合、クオリティーが自分のゲームと「同じくらい」であれば、その20%の割増で価格設定をすれば良いでしょう。(余談ですが、英語圏の開発者やパブリッシャーと話しているとき、「comps」という言葉が出てくるかもしれません。「comps」は「comparisons(比較)」の略称で、「Indie games like mine」よりパブリッシャーへのピッチでよく使われているらしいです。)
#3 似ているゲームの価格推移をチェック
プレイヤーはセールを狙うので、他のゲームがどのように割り引きしているかを確認しましょう。
確認方法はSteamDBで対象のゲームを検索し、そのゲームのページの下のほうにスクロールします。「Price History」の部分に価格推移のグラフが表示されます。
そのゲームの価格が上がっているか、下がっているかどうかを確認し、どれぐらいの頻度で割り引きされたか、割り引きがいくらかを確認します。今までの最安値がいくらかを見て、リリースしてからどれぐらいたってから最安値まで割り引きしたのかを調べます。
そして、もしそのゲームが早期アクセスとしてリリースされたことがあるならば、早期アクセス時期の価格から正式リリースの価格を比べます。価格が上がっていることがあるかもしれません。
#4 アンチを無視しよう
「誰も価格に文句をつけないなら、その価格は低すぎる」という昔からのマーケティングの格言があります。すべての人があなたのゲームを100%好きになるわけではありませんので、問題ありません。価格に不満を持つ人はもちろんいて、それも問題ありません。すべての人が価格に満足したら、おそらくあなたのゲームはそのジャンルで一番安いゲームでしょう。
そのため、「ゲームはまぁまぁだけど、買うならセールを狙うのがオススメ」というレビューが来たら、気にしないでください。どのゲームにでもあることです。
無視すること。ポイント#1を思い出しましょう。 みんなセールを狙ってゲームを買います。「セールを狙うのがオススメ」というレビューはSteamの仕組みの説明そのものです。セールを待ったほうがお得なのは他のゲームも同じです。
まとめ
要約すると、価格の設定は類似のインディーゲームの相場を調べて、20%の割増で設定するのがオススメといえます。参考情報としては、開発者のDylan Gedig氏が『Peglin』の価格を決めるのに苦労したエピソードがあります。結局、予測したものより少し上げて、早期アクセスのリリース価格を「$19.99」にしました。
本人がその決断にいたる経緯を説明しました。
1. 高めの価格設定でリリースのペースを対応できる規模に下げてくれるだろうと考えました。当時、『Peglin』の仕事をフルタイムでしているのはまだ私だけだったので、他のチームメンバーがフルタイムになるまで規模を大きくする時間を稼ぎたいと考え、正式リリースまでの早期アクセス時期を通してセールスを徐々に獲得したかったのです。
2. 早期アクセスのリリースの予想は実際の規模の1/20でした。大体リリース前の2週間のウィッシュリストの10%をセールスにコンバージョンできるだろうと思いました。また、 多くのプレイヤーはデモ版を10時間以上遊んで、デモ版の3倍のコンテンツを「$19.99」でも喜んで買ってくれるようです。
3. 何もかもが値上げで心配でした。リリースの1ヶ月前、ガソリン代が2倍になって、食べ物の値段も高騰し始めました。そこで、初期のセールスでゲームの開発を継続するための資金を獲得したかったです。でないと、また仕事を増やせざるを得ません。ここで、Kickstarterのクラウドファンディングをしていたら、価格についての不評を防げたかもしれませんが、KickstarterでSteamでのリリースへの注目度が減るのが好みではない上、クラウンドファンディングを成功させるための人手が不足していました。
4. 主な競合相手の価格が$25以上だったので、『Peglin』の$19.99はまだ比較的にお得でした。(ただ、多くの競合相手は$15からリリースして、徐々に値上げしました。我々もそうするべきだったのかもしれませんが、ポイント#1の矛盾になります。)ちょうどその時期、AAAゲームの価格が上がりはじめたので、タイミングが良いというサインでした。もちろん、AAAゲームの値上げがもうちょっと早く始まっていたら、我々が価格の限界を試すことにならなくて済みました。
5. 我々にとって、PCゲームというプラットフォームでモバイルゲームのような価格の底辺への競争を防ぐことが重要でした。『Peglin』の開発を始めた頃は『Peglin』が副業で、本来の仕事はF2Pゲームの開発でしたが、魂が抜けるように虚しかったです。PCゲームで同じような底辺への競争は起こらないでほしいです。
Dylan Gedig氏
How To Market A Gameについて
How To Market A Gameはゲームマーケティング向けの記事を掲載しています。Discordサーバーも公開しており、インフルエンサー探しやイベント探しのチャンネルなどがあります。興味のある方はぜひご参加ください。
この記事が気に入ったら、How To Market A Gameのニュースレターに登録して、毎週マーケティングのヒントを入手してください(元記事は英語となります)。
http://howtomarketagame.com/free/
元の記事:
4 TIPS TO HELP YOU PRICE YOUR INDIE GAME
https://howtomarketagame.com/2022/08/23/4-tips-to-help-you-price-your-indie-game/