パブリッシャー「わくわくゲームズ」代表インタビュー。日本で最も敷居が低いパブリッシャーを目指す、同社の狙いとモットーとは

昨今は日本国内で活動するインディーゲーム専門のゲームパブリッシングサービスが充実しています。様々な会社が開発者の活躍を支えており、それぞれ強みやアピールポイント、サービス内容は異なります。本インタビューシリーズでは、パブリッシャーの代表の方にインタビューを行い、これからパブリッシャーと交渉を考えているゲーム開発者への参考情報として実施しております。

第一回目として、国内インディーゲームパブリッシャー「わくわくゲームズ」代表の大柳氏をお迎えし、お話を伺いました。

――はじめに、自己紹介と「わくわくゲームズ」の概要をお教えください。

大柳竜児と申します。わくわくゲームズ合同会社の代表です。

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大柳竜児さん

弊社は2022年8月より法人として活動を開始した、ゲームソフトパブリッシャーです。

わくわくゲームズは私一人の会社で、多分業界内でも珍しい”一人パブリッシャー”だと思います。一人なので気は楽ですが、作品を探し、プレイし、作家さんと交渉し、実際にとして世に送り出し、並行して会社として必要な業務もこなすため、なかなか大変なのですが、自分の裁量で仕事を進められるのは大きな魅力です。

法人としては駆け出しですが、多くの作家さんに支えていただいており、作品ラインアップ構築にも作家さんのご助力をいただいております。すでに私一人のわくわくゲームズではない、とも言えます。

前職は『コーヒートーク』などで最近知名度も高くなってきたのインディーゲームソフトパブリッシャー、コーラス・ワールドワイド合同会社に在籍していました。設立当時から今年7月末までの約8年間、日本法人の代表の一人としてPRを皮切りにパブリッシングに関わる様々な業務をおこなってきました。それ以前は、エレクトロニック・アーツ株式会社やTHQ Japanなど、外資系パブリッシャーで働いてしていました。

「わくわくゲームズ」イメージイラスト

――わくわくゲームズはコーラス・ワールドワイド社のレーベルとして出発し、今回独立されたとのことですが、その経緯をお教えください。

コーラスはもともと、2014年に「海外の素晴らしいインディーゲームを、日本を含むアジア市場へ持ちこもう」というところから始まった会社でした。私含めてメンバーは全員外資系パブリッシャーで働いていたこともあり、取り扱いタイトルは海外ゲーム(いわゆる洋ゲー)がメインでした。ずっと洋ゲー畑で食べてきたこともあり、当時は国内の作家さんやスタジオで制作されたゲームのことは、ほぼ意識していませんでした。

私が日本のインディーや同人ゲームに興味が出てきたのは、ここ3年くらいの話です。毎年初頭に開催される台北ゲームショウに行くと、日本だけでなく、台湾、中国、韓国、インドネシアといったアジア発のゲームをTGSよりも濃厚に触れることができたのですが、アジア発のインディーゲームにふれることで、母国回帰と言っていいのかわかりませんが、だんだんと日本のインディー・同人ゲームを取り扱いたくなりました。

自分の中でじわじわと日本のゲームを取り扱いたい欲が高まり、BitSummitやデジゲー博といった、国内イベントを通して日本のインディー、同人ゲーム作品に注目していたなかで、ある人からの紹介で熊本のアルファ・システムさんが制作した弾幕シューティングゲーム『シスターズロワイヤル』の国内パッケージ版や海外版販売を手がけることになりました。その際、国内スタジオの職人芸的なものに触れる機会があり、国内の作品に深く関わりたいと、より深く思うようになりました。

アルファ・システムさんはとにかく仕事がきめ細やかで、素晴らしかった。「日本のゲーム」の魅力に改めて接する機会を得て、継続して日本発の作品を取り扱いたいと思うと同時に「自分で作品を探してラインアップをつくりたい」と強く思うようになりました。同時に海外ゲームはもう20年関わったし、個人的にプレイすることはあっても、商売にするのはもう当分いいかな、とも考えるようになりました。

ここ数年で自分の中の「洋ゲー」と「和ゲー」の比重が明確に変わったと思います。個人的な趣向としても、AAAゲームのような大艦巨砲主義的な作品よりも、実験的な作品、コンパクトにまとまった作品、アイディアやユニークさで一点突破している作品などに魅力を感じるようになりました。

『モン娘ぐらでぃえーた』

ゲーム本体だけでなく、世界観やキャラクターなどジャンルが多層化しているのも面白いなと思いました。弊社取り扱いタイトルの『モン娘ぐらでぃえーた』に代表されるように、「モンスター娘」というニッチなジャンルでシミュレーションからシューティングまで、様々なゲームをラインアップできるのは、作り手とプレイヤーとの層の厚さを感じます。

2021年に色々ありまして、事業として日本のインディー・同人ゲームを本格的に取り扱いたいという思いが強くなりすぎてしまい、話し合いの結果「レーベル」として「わくわくゲームズ」を立ち上げました。レーベルとしては私が選任として作品ラインアップ構築にあたりました。『百年王国』や『ケチャップandマヨネーズ』『レトロゲームエイリアンズ』『虚無と物質の彼女』はこの時に加わりました。

レーベルの仕事に加えて、それ以外の本来のコーラス発売作品リリースにかかる仕事や日本法人の業務もあり、はじめてはみたものの、わくわくゲームズに割ける時間は限定され、最終決定権は私になかったこともあり、私の中でわくわくゲームズの仕事がどんどん魅力あふれるものになってきた反面、組織内の一部という不自由さも感じるようになりました。

今思うと会社のお金で、わがままやらせてもらえていたので、当時のありがたみが今になって身に沁みるところです。ところが、なにせ基本がわがままな性格なので、次第に全て自分の裁量でやりたいという考えでいっぱいになりました。そうなると、どこかのタイミングで独立して勝負せざるをえないということになり、ついに今年実行に移したということになります。

どんな商売にしろ、はじめてすぐ軌道に乗るケースは少ないと思いますが、年齢的にも独立して自分が本当に好きなことで生計を立てる最後の機会かなと思ったところも大きいです。

創業にあたり、商売敵となりえるような自分の独立を認めてくれた前職の代表には深く感謝している次第です。

igjd

IndieGamesJp.dev Moderator

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