新型コロナ影響下、変化するゲーム展示会とオンライン化の難しさ

新型コロナウイルスの影響により、さまざまなインディーゲーム展示イベントが対応を余儀なくされています。緊急事態宣言が解除となった現在も予断を許さない状況ですが、オンライン化したもの、延期を決断したもの、会場の感染防止策を経て実地開催を行うものなど、さまざまな対応の形が現れてきました。こうしたイベントの変容で、クリエイターにはどんな影響が想定できるのでしょうか。

記:一條貴彰

オンラインイベントは実地イベントの完全代替にはなりえない

いくつかのインディーゲームイベントはオンライン開催に移行し、特設webサイトや動画番組等での実施に踏み切りました。「新作タイトルの発表の場」というイベント機能においてはある程度うまくいっている事例を聞く中で、オンライン出展ではどうしても補間できないものも浮き彫りになりました。

それは、「準備の重さ」「ランダムな作品との出会いが作りにくい」「ビジネス・開発仲間のマッチングがない」「新規作がメディアに取り上げられにくい」という点です。

オンライン開催では、出展作品を気軽に試遊したり、遊んでいる様子を後ろから見るといったザッピング式の作品の出会いができず、どうしても目的のタイトルだけに集中しがちです。プッシュするタイトルを運営が決めてやっているタイプのイベントならまだしも、チームの大小や知名度によらず展示し、ランダムな作品との出会いを重視したイベントでは、オンライン化ではその特徴を生かしたコントロールが難しいでしょう。

また、実会場での運営ノウハウと、webサイトや動画等でのイベント開催は必要となるノウハウが全く異なります。動画番組については、先日放送された「Indie Live Expo」のような、動画制作に長けた会社が先導した事例が成功しています。無理に別の形にシフトすることはコスト的もノウハウ的にも難しいのです。

新型コロナウイルスの影響下が長期にわたると予想できる今、オンラインだけの発信力ではファンを獲得することが難しいです。とりわけ、東京ゲームショウがオンライン化を宣言したなかで、次にファンやビジネスの相手を実地で捕まえる機会が早くても2年後…となってしまった場合、制作の持続に大きな影を落とし、じわりとクリエイターを蝕んでいくと考えています。

ホビイストゲーム開発者の場合は「制作意欲の源」であるファンとの交流や新規ファンの獲得、そして制作仲間の発見。ゲームを広く販売するクリエイターの場合はパブリッシャーやメディアへのアピールなどといったビジネス機会として、実会場開催は不可欠なものです。

既存のイベントは参加者特性に合わせた様々な開催方式へ転換

そんな中、毎年11月に開催されてきた「デジゲー博」は11月29日に実地開催との告知がありました。ブースのサイズを倍に設定し、密状態が発生しない配慮で進行される予定です。

「デジゲー博2020」11月29日(日) に開催、申し込み募集開始

その他、国内のさまざまなクリエイターイベントにおいては、さまざまな対応を行ってきています。インディーゲームイベントではTokyo Sansbox」が4月開催を延期し、10月に実会場開催を告知している(追記:現在、開催を再検討されているそうです)ほか、「メガビットコンベンション」は8月23日にて実地開催予定です。また規模の大きいクリエイターイベントとしては、音楽即売会イベント「M3」が10月開催とされる一方で、冬コミ、すなわち「コミックマーケット99」は中止が発表されました。

実地開催においては、たとえば入場者数の制限や、近寄っての説明などが難しい状態になります。ブースの作り方においても変化するでしょう。ポスターやモニターのサイズを大きくする、チラシを取りやすくする、コントローラーは毎回消毒する、電子決済に対応して接触を減らす、ブース前に透明ビニールのシートを張るなど、接触機会を減らす工夫があるとより良いと考えています。スペースに飛沫感染防止ボードを設置の上、開催するイベントもありました。

しかしながらコロナ影響下では、たまたま会場の近くにいた人が気軽に参加、というスタイルは少なくなると予想されます。ですので、「新規ファン獲得」の総数は減少するかもしれません。これまで以上にSNSを活用したプロモーションビデオの開示など、盛り上げ策をクリエイター自身が考える必要があります。一方、「制作仲間との出会い」「メディアに取り上げてもらう」「ビジネス面でのチャンス」の機能についてはこれまでと変わらないか、むしろ強化されると考えています。

大型イベントが次々中止となる中で、実地開催イベントの機会は貴重です。メディアはこの機会により多くの作品情報を求めるはずです。オンラインイベントでは、どうしてもメディアとしての質問がやりにくい状態にあるからです。

たとえば翻訳の会社や、声優事務所等の担当者、パブリッシャーなどがビジネスパートナーを求めてこうした会場により多く来場するものと予想しています。そういったチャンス獲得のためにも、数は絞りつつ実地のイベントは今後も必要だと考えています。

オンライン化による、オーディエンスの反応が見えない難しさ

個人の経験としても、オンライン化の難しさを感じることはあります。7月9日にオンラインセミナーの登壇がありました。次作「デモリッション ロボッツ K.K.」の技術的な側面について、Unity Technologiesが主催するオンラインカンファレンス、「Unite 2020 Now」で登壇しました。

一條の登壇は8:32~あたり (英語)

https://resources.unity.com/unitenow/onlinesessions/interactive-streaming-for-unity-developers-using-genvid

昨年まで全世界でキャラバン式に開催されてきたUnityの大型カンファレンス「Unite」は、コロナウイルスの影響によりすべてをオンライン実施に変更。私の出展予定も、ビデオ収録に変わった形です。

実地での展示・登壇で従来と大きく異なる点は、「オーディエンスの反応が見えない」ということです。元からのファンや、積極的な方は質問やコメントをもらうこともあります。しかし実地ではブースを遠巻きに見ている人、登壇の後ろの方の席から参加した人、といった「少し興味がある」というタイプの人々の動向が、オンラインでは全く見えません。

「Unite」での登壇は、登壇者同士の交流で濃い話ができることも大きな価値のひとつでした。しかしながらオンライン開催では、そうした横のつながりも発生しにくい状況です。これはどうしてもモチベーションの維持や、自分の作品がどの程度人に伝わりやすいか、といった分析がしにくいものと考えています。

オンライン化によって世界中からアクセスが可能になった一方で、日本語で最新情報や作品について知る機会は減り、また大量のオンライン展示会がパブリッシャーや作者のウェブサイトや動画を見るのと何が違うのか、という点においても訴求力が課題となっています。「この日、この場所に行けばこの新作が遊べて、知らないタイトルと出会える」という期待感は実地イベントならではといえます。

全てのクリエイターが直面する問題に対して冷静な判断を

他のクリエイター系イベントにおいては、残念ながら中止を余儀なくされたものや、話し合いの末に延期したもの、オンライン化をして動画配信を行ったものなど、対応は異なります。

本稿を通してお願いしたいことは、「自分が出ていたイベントが中止になったからといって主催者を叩いてはいけないし、逆に実地開催する他のイベントを攻撃することもあってはならない」ということです。クリエイターの皆様におかれましては、自分の作品を世に出すためにはどの形が一番適するかを考えながら、世の中の変化に順応していければと思っています。

Takaaki Ichijo

株式会社ヘッドハイ代表。サークルThrow the warped code outとして『Back in 1995』『デモリッション ロボッツ K.K.』を開発

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