[特集]新型コロナで損失を受けたゲームクリエイターが知っておくべき支援制度のまとめ

新型コロナウィルス(以下、新型コロナ)の影響により、様々な業種が損失を受けています。その状況から、政府からいくつかの支援策が発表されています。

数多くのゲームイベントが中止や延期され、多くの個人ゲームクリエイターにも影響が出てきています。今回の記事では、もし経済的なダメージを個人ゲームクリエイターが受けた場合、知っておくべき政府の支援策をまとめました。

本記事はフリーランスとして活動する方全般に当てはまります。クリエイターでなくてもチェックしておく価値はあるでしょう。

【重要】支援を受ける前に、確定申告を済ませておくこと

前提として、どの支援策を頼るときも令和元年の確定申告を済ませていることが大きいです

本年度は確定申告の受付を4月16日まで延期していました。ですが緊急事態宣言をはじめ、外出が制限される状況だったため、4月17日以降も申告を受け付けることを国税庁は発表しています

確定申告の作業は少し大変です。しかし、いくつか機関に電話で相談したところ、支援をスムーズに受けられるかが大きく変わってくる、との回答がありました。今からでも申告は可能のため、支援を受ける前に提出したほうがよいでしょう。提出により還付金も戻ってくるため、資金を持っておきたい意味でも大事になります。

これは副業としてゲームクリエイターを行っており、何らかの売り上げが発生している方も同じです。本業がたとえば会社員ならば、会社の年末調整で済ませてしまいそうになりますが、いくつかの支援に関わるため、申告をおすすめします。

支援を受ける前に、クリエイターが損失した根拠となる資料の用意

さて各支援にて、クリエイターが支援を受けるためには、新型コロナの影響で収益が減ってしまったという根拠が必要になります。

各支援によって条件は違いますが、いずれの支援を受けるときにも収入が減ってしまったことを証明できる資料を用意しておきましょう。以下、一例となります。

令和元年(2019年)の確定申告書

昨年の同月と比較して、減収が証明できる資料。昨年と比較して収入が減少したことを証明できる売上台帳など。

様々なイベントの延期によって、見込んでいた収入がなくなってしまった証明。参加予定のイベントが中止された 特に即売会のイベントなどで、ゲーム販売やグッズ販売など収益を得ていたクリエイターの方などは用意を。

▼給付・支援金

こちらでは損失を受けたクリエイターが、公式に支援金を得られる制度について紹介します。

持続型給付金

こちらは法人には200万円、個人事業主には100万円を上限として現金を給付する制度です。非常に大きな金額が支援されるため、まず考えておくべき制度となるでしょう。

主な給付対象は「新型コロナウィルスの影響により、ひと月の売り上げが、去年2019年の同じ月と比べて50%以上も下がってしまった」方です。

給付金の計算方法は、【昨年2019年度の売上総額】-【昨年から50%以上売り上げが下がった月の売り上げ×12】=減少額の給付となります。

注意すべきは昨年から50%以上の売り上げが下がった月がいくつもある場合、自分で計算する月を選べることです。そのため、選択した月の売り上げ計算をよく見ていないと、受け取れる給付金が変わってしまいます。

なので現段階で申請するのは早計かもしれません。昨年と大きく収入に差が出る月まで待ったほうがいいでしょう。たとえばイベントで作品を出展し、大きな売り上げを出すタイプのクリエイターの場合、イベントが行われる月の売り上げを参照にするほうが良いと思われます。

今年は8月のコミケの中止が発表されていますし、大きな売り上げの減少が予想されます。「昨年から50%以上、売り上げが下がった月」を決めるのは、例年大きく売り上げを出していた時期を基準に考えたほうがいいかもしれません。

また、この制度は開業届を出し、本格的に個人ゲームクリエイターとして活動している人のみが対象ではありません。本業を持っており、副業としてゲームクリエイターをやっている方も「確定申告において事業収入がある場合は対象になる」ため、作ったゲームで何らかの収入が発生している方も給付の対象になります。

くわしいQ&Aは、経済産業省が公式に公開しています。こちらもご確認ください。

小学校休業等対応支援金

個人ゲームクリエイターとしてお子様がいる方にはこちらの支援金があります。新型コロナの影響により、子供の世話を行わねばならず、仕事ができなくなった方が対象になります。

支援内容は「2020年2月27日~6月30日までのあいだ、仕事をできなかった日、1日あたり4,100円」の支給が発表されています。こちらの支援は申請期間が決められており、9月30日までとなっています。

住宅確保給付金

こちらは収入減により、家賃を補填してもらえる給付制度です。廃業と同じくらいの状況に置かれ、貯金が尽きかけており、しばらく家賃を払うことさえ難しくなっている、非常に厳しい状況に置かれているクリエイターの方に勧められる制度です。

今回のコロナウィルスの影響により、当初はハローワークへの求職申込などが必要でしたが不要となっています。制度を受けるハードルが下がっているため、厳しい状況にいる方でも申請しやすくなっています。

▼学生クリエイター向けの支援

高等教育の修学支援新制度

2020年4月より始まった制度です。高校や大学、専門学校に通いながらゲーム制作をしている方向けに、文部科学省による支援制度です。この制度では、授業料や入学金の免除、または減額のほか、給付型奨学金の支給といった支援を行っています。

この制度は新型コロナの影響により、アルバイトの収入が減ったために支援が必要な方のほか、奨学金や授業料の減免を受けていなかった方などが対象となっています。いますぐは大丈夫でも、後から生活が苦しくなってきた方でも支援を受けることができるようです。

くわしい情報はこちらのウェブサイトにまとまっています。ご確認ください。

▼貸付による支援

ここではお金を借りて対応していく支援を紹介します。様々な仕事やイベントがなくなってしまい、しばらく生活が難しい状態にある方に勧められています。

今回の問題の大きさのため、保証人なしや無利子で融資を受けられるものが出てきています。

緊急小口資金などの特例貸付

厚生労働省が生活福祉金 貸付制度における特例貸付の拡大のプレスリリースを出しています。ここでは、生活不安に対応する緊急の処置として、特例貸付を拡大したことを発表しています。

新型コロナウィルスの影響により休業しなくてはならないケースでは「緊急小口資金」が利用可能。貸付の上限は10万円以内になりますが、個人事業主としてゲームクリエイターを本業としている方は20万円まで融資を受けれられます。

これは世帯の一員である個人事業主であっても20万円以内の対象となります。これは、世帯員の共働きなどで、個人事業主側の収入の減少による生活費の不足を理由としています。

また特例貸付を受けても、まだ収入の減少が続く場合には返済が免除されるとも発表しています。申し込みや問い合わせ先は、お住まいの地域にある福祉協議会に連絡する形になります

すでに緊急小口資金の貸付を受けた方のnoteもいくつか公開されています。こちらもご参考ください。

新型コロナウイルス感染症 特別貸付

日本政策金融金庫が行っている融資です。新型コロナウィルスの影響を受け、業績が悪化した方を対象にしています。

「最近1ヵ月の売上高が、前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している方」が申請できるとのこと。また、開業して3ヵ月以上、1年1ヵ月未満の場合の方などは、最近1ヵ月の売上高が過去3ヵ月の平均売り上げ高、昨年2019年12月の売り上げ高か、同年10月から12月の平均売上高と比較して、5%以上減少している方も利用できると説明しています。

無担保による貸付となり、返済期間は設備資金20年以内、運転資金は15年以内とのこと。個人ゲームクリエイターは運転資金として申請する形になりそうです。

利率は申請内容によって変わってくる模様ですが、日本政策金融金庫側は特別利子補給制度も使うことで実質、無利子化できることも説明しています

▼ゲーム産業内からの金銭的支援

中止となったGDC 2020においては、宿泊旅費をキャンセルで取り戻せなかったインディークリエイターを対象として、救済基金「GDC Relief Fund」が立ち上がりました。

(indiegamesjp.devの運営会社、株式会社ヘッドハイも基金に参加しました)

日本には、個人・小規模の開発者向けに2017年から通年で助成活動を行っている「日本ゲーム文化振興財団」があります。現在のところ新型コロナウイルスに関する支援等はありませんが、もしかすると何らかの動きがあるかもしれません。

また、既報のように、SIEはインディーゲームクリエイター向けの基金を立ち上げています。どのようなサポートになるかは不明ですが、プラットフォーマーも今後インディーが窮地に陥る可能性を十分認識している、という現れでしょう。

個人ゲーム開発者がこの状況下を生き延びるために

このような状況の中、ゲーム産業はもとよりインドア部分が大きい文化であり、直接の打撃は他産業と比較して大きくありません。しかしながら間接的影響は出ており、たとえばCEROレーティング取得については審査が休止されている状況となり、すべての家庭用ゲーム機タイトルに影響を及ぼしています。発売延期を余儀なくされたクリエイターもいるかもしれません。

そして、展示会が軒並み中止やオンライン化することで、インディークリエイターの展示露出やコンテストによるマーケティングとビジネスの機会が大幅に損なわれ、今後じわじわと影響が深まっていく可能性があります。

また、動画広告によるアド収入を中心としたスマートフォンゲームでは、普段広告を出稿している産業の経済的打撃による在庫切れにより、広告収入が減っている、という話も耳にしています。

IndieGamesJp.devでは、今後も個人・小規模のゲームクリエイターの創作持続性を維持するため、本記事について順次情報をアップデートしていきます。

【参考資料・支援に関しては以下もご覧ください】

新型コロナウィルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ(経済産業省のpdf)

新型コロナウイルスにともなう あなたが使える緊急支援 (自民党ホームページ)

※「個人ゲーム開発者がこの状況下を生き延びるために」「個人ゲーム開発者がこの状況下を生き延びるために」についてはTakaaki Ichijoが執筆しました

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IndieGamesJp.dev Moderator

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