『Olija』ロングインタビュー。ゲーム業界未経験の開発者が、固定給を貰いながらインディーとして2Dドットアクションをリリースし、アワードを獲得した経緯

――ところで、『Olija』は全部トマさん一人で作ってらっしゃるんですか? 

トマさん:だいたいは一人でやっています。  

村上さん:メインのイラストはトマの友人でフランス人の漫画家さんが描いています。あと移植の部分はエンジニアに任せていますが、それ以外はトマ一人ですね。

――ああ、まあ、移植はそうですよね。移植まで一人でできたらすご過ぎますよね。 ところで、1人でプログラムやイラストなどは自分で身に着けていったのでしょうか  

トマさん:わからないところは調べるか、スケルトンクルースタジオのほかのスタッフに聞くかですね。テクニカルのところが一番弱いんで、スケルトンクルースタジオがなかったら発売は出来ていなかったと思います。でも勉強するより、まずできる事をやろうって感じなので、とりあえずゲームが完成したというか、1人だとできることが少ないのでゲームデザインも決めやすくなるんですよね。 制限があるというのは大事なことかもしれません。  

――ああ、これはその通りですよね。自分のできる範囲でやるのって大事ですよね。なんでもできると、なんでもやろうとしてかえって完成しないことがありますね。  

トマさん:何でもできたら、例えばでかいMMORPGみたいなのを作ろうってなっても、それは流石に一人ではできないので(笑)  

 ――おっしゃるとおりです(笑) 

村上さん:『Olija』は最初はオリヤと一緒に旅をするゲームの予定だったのが、トマ一人では完成が難しいという事になり、一緒に旅するのを断念して、ゲームの要所要所で会いストーリーを進める役割の人に変わりました。トマがAIの挙動を作れていたら、全然違うタイプの遊びになってたんだろうなと思います。

これってある意味のゲームデザインだなって思います。表現したいことは決まっていて、それをどう伝えるかという手段をデザインをして、最終的に遊びとして落とし込む。ゲームをデザインしながら作っている感じでしたね。   

――そうですよね。1人で作る時って絶対できないことが出てくるので、それをどうやって避けて作るのかというのはとても大事ですよね。  

トマさん:挑戦を止めた方が良いところは、自分のことだから分かりやすかったです。

――となると、『Olija』ではドット絵を選択されたのも、元々ドット絵が描けるからとか、ドット柄の方がやり易かったからなんですか?  

トマさん:それにはいろいろな理由がありますね。初めてゲームを作ったのはRPG maker(日本ではRPG ツクール)でした。その後もずっと同じ様な作り方をしてきたので、ドット絵で作るのが自然でやりやすかったです。僕は本当のアーティストではないですが、ドット絵であれば表現できるんです。

ドット絵は良い所も多いと感じています。例えばキャラの顔など細かい部分を表現できないため、ミステリー感が出てると思います。あと、アニメーションもドット絵だとすごくやりやすいです。『Olija』を見ると、キャラデザインがいつもすごく簡単なんですよね。シンプルな形なので、アニメーションを作りやすいです。   

村上さん:僕からすると、3Dの方が簡単じゃないかなって思ってしまうんですよね。手描きアニメってスゲーなって逆に思います。  

――確かに3Dは1回作るといろいろなシーンで使えますからね。全部手描きは大変だと思うわけですね。  

村上さん:そうですね。その分、3Dは最初の手間がかかりますけどね。トマにとってドット絵は一人で作りきるための手段なのかなと思います。あと、トマのアートって思いがあるというか、ドット絵にトマのスタイルがあるので、それは面白いなと思いますね。魅力的なドット絵のスタイルは最初からずっと変わっていないですね。  

――ドット絵の企画だからドット絵で作りました。というのとはまた違うわけですね。RPG Makerからスタートして、ドット絵であの『Olija』の世界を表現できているところまで至ったわけですから、そこにトマさんのテイストがあるんでしょうね。  

村上さん:余談ですけど、トマは音楽一家の出身なんですよね。お兄さん達もプロのミュージシャンで楽曲提供を2曲ぐらい受けたり、兄弟でコラボレーションをしてるんです。彼も子供の時から音楽を自然とやっていたそうです。音楽に囲まれて育った彼がゲームを選んだ理由は、ゲームがいろんなアートが組み合わさったメディアアートだと感じたからだそうです。音楽、アート、アニメーションが混ざった、より高度なアートだって言っていて面白いなって思いました。一人でゲーム作る人も音楽ってわりと外注することが多いですが、トマは音楽も自分で作れるので、すごいなーと思います 。

――しますね。音楽は外注や時には素材が使われることもありますね。  

村上さん:トマの場合は、グラフィックより音楽が先にできてたりするんですよ。シーンのイメージを作るときに、まず音楽が完成して、後で絵が作りこまれていくみたいなのを見て、なんか面白いなって思っています。 

――1つのシーンを何から最初に作るかって人によって違うと思いますが、音楽から出来上がっていくのは珍しいし、興味深いですね。  

トマさん:『Olija』では音楽と音がすごく大事で、ゲームの後から音楽をつける訳ではなくて、デザインしながらアイディアを出すために音楽作ったりします。開発が煮詰まってくると、「音楽を作るモード」に入ります。音楽を作ってると元気が出てきて、アイディアが出て来る事が多いです。

村上さん:珍しい作り方ですよね。

――珍しいですね。個人開発で、詰まった時に違う作業をして先に進めるのは、それ自体がスキルみたいなところがあって、素晴らしいですね 

村上さん:自分でそこを解消できるってなかなかすごいですね。  

――たしかにそうですね。

HATA

5歳の頃、実家喫茶店のテーブル筐体に触れたのを皮切りにゲームライフが始まる。2000年代に個人でノベルゲーム開発をスタートし、異業種からゲーム業界に。インディーゲーム開発をしながらゲームメディアで記事執筆なども行う。

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